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TwitterのDMでよく見る「アマゾンのバイト募集」の実態とは 詐欺グループとの一部始終を公開

おたくま経済新聞 / 2023年5月26日 13時25分

TwitterのDMでよく見る「アマゾンのバイト募集」の実態とは 詐欺グループとの一部始終を公開

TwitterのDMでよく見る「アマゾンのバイト募集」の実態とは 個人情報や口座情報の抜き取りに注意

 TwitterでDM欄を開放している方であれば、間違いなく一度は見たことがあるであろう「怪しいDM」。これまでに「出会えない系悪質サイトへの誘導」や「ネットショップ登録詐欺」など、その実態を探ってきましたが、今回は大手通販サイト「Amazon」の名を騙るアルバイトを調査してみました。

 結果から言うと、今回ももちろん怪しさ満点。高確率で詐欺グループの一員であろう相手とのやり取りの、一部始終を公開します。

■ 内容はおいしい……が、早くも不穏な空気が

 今回、弊「おたくま経済新聞」サブアカウントにDMを送ってきたのは、「ひらがなのみで書かれた女性の名前」のアカウント。アイコン画像はかなりの美女というお決まりのパターンですが、これも十中八九他人の物でしょう。

 内容を見てみると、そこには「アマゾンのアルバイト、定員は10名のみ。PayPay+携帯電話=報酬です」「15分20000円~50000円の報酬を得ること日本からの参加者のみ募集」という文面が。これだけ高額報酬な割に、日本語の使い方が非常にお粗末ですよね。

 早くも不穏な空気を感じつつ、末尾に記載されているLINEのIDを登録してみると、今回は「T」と名乗る人物とつながりました。そして画像のアイコンは「PayPay」のロゴ。

Tのアカウント

 Amazon業者のなりすましかと思いきや、PayPayのなりすましなのかな?この手の詐欺アカウントあるある「設定ガバガバ」というのはここでも健在です。それにしても無断でブランド名使用、さらにはロゴ使用とは……。

 なお、本稿ではリアルに全てを伝えるため、出てきた社名はそのまま掲載しますが、AmazonやPayPayはこのアカウントと無関係なことを念をおして先にお伝えします。勝手に騙られているだけの被害者側です。また、記事中掲載する画像では無断使用されたと思われるPayPayやAmazonのロゴ部分をはじめ、編集部が必要と判断した箇所にはぼかし加工をほどこします。その点、あらかじめご了承ください。

 とりあえずまずは、油断も狙って方言で挨拶をしてみると……。

「こんにちは」「以前にオンラインでアルバイトをしたことがありますか?」

 と、気にする様子もなくスルー。淡々と仕事内容の説明をされました。日本人を名乗るなら、もう少しこう……反応がほしいところです。

Tからの最初の返事

■ 必要なものはPayPayのスクリーンショット どう考えてもおかしい

 ざっくりまとめると「PayPay」の画面スクリーンショットを2枚送信するだけで報酬がもらえるとのこと。相手から提示された「マニュアル」と思われる画像には、アカウント名やIDが表示された画面と、ウォレット(残高や取引履歴)の画面が載っていますが……これはなんだか危険な香り。

スクリーンショットで報酬が発生するのはどう考えてもおかしい

相手から提示された画像

あやしすぎる

 さすがに「はい、そうですか」とは従えないので、少し抵抗をしてみることに。「スクリーンショットは何に利用されるのか」「送信による報酬はいくらなのか」聞いてみると……。

「報酬はアカウントのステータスに基づいて計算されます。そして自分の仕事を割り当てます」

 と、良く分からない回答が。要求に応じなければ、質問に答える気もない、といったところでしょうが、スクリーンショットの内容に応じて、報酬が決まるとは……一体どういう仕組みなのでしょう。

質問開始

■ 「犯罪ではないか?」問い詰めると態度が一変

 こちらだって仕事の詳細が分からないのに、個人情報を提供するつもりはさらさらありません。これ以上は押し問答になりそうなので、「これは犯罪ではないですか?」とストレートに伝えると……。

「これは合法アルバイトです」「多くの人がやっている」「心配ならこのバイト辞めろよ」

 と、やや口調を強めて反論してきました。

回答が回答になっていない

ついに切れた

 いやいや、どうみてもおかしい。色んな犯罪行為が想像できますし、相手にも明らかに焦りが見えるので、足を洗うようにさとしてみると……。

「クソ病気ですか?」「あなたの母親を****してください」「愚か者」

 と、暴言を浴びせるだけ浴びせ、最後は既読無視。(以降掲載のTとのやりとりは、T退会後に撮影したものです)

暴言開始

 初めから調査のためではありましたが……やはりまともな相手ではなかったようです。こんな人物や会社が高額報酬のバイトを斡旋しているとは、到底考えられません。

ひどい暴言も

■ 同一グループと思われる「R」とも接触

 ここまで触れてきませんでしたが、実は「T」とは別に「R」というアカウントとも同時にコンタクトをとっていました。

 「R」はTよりもビジネスアカウントらしく、やり取りもシンプル。アイコンは女性のものが使用されています。

Rとのやりとり

 そして恐らくこの「T」と「R」は仲間だと思われます。理由は途中で提示してきた「マニュアル」が共通であること。

比較

 Tは部分的な切り抜きを提示してきましたが、Rは全画面をだしてきました。これから両者が同じグループであることが分かります。

 Rが出したマニュアルに書かれていた内容は、「Amazonにてマーチャント(出店者)の売り上げを伸ばすことを手伝う」お仕事でした。全文日本語が微妙すぎたので編集部で以下に整理してみました。ただし、意味がわからなかった部分もあるのでその箇所には「」の後補足をいれています。

○仕事内容:
・Amazonで指定商品を購入すると、相殺分のクーポンが得られる。
・タスク完了ごとに8000~15000の手数料がPayPayウォレット経由で送金される。
・タスクには10~20分かかる。完了後5~7日以内に、受領確認と良い評価をする必要がある。

○ミッション要件(多分、参加できる条件):
・PayPayアカウントの口座残高に5000の「証拠金」があること。
・Amazonアカウントを持っていること、アカウントは2つ以上の履歴があること。
・マーチャントと注文の安全を確保するため、タスク開始まえに「カットオフ国」(ここは意味不明)を指定する必要がある。PayPay履歴のスクショを送ること、「PayPayアカウントが銀行カードと結び付けられ検証が完了」(ここも意味不明)。

 まとめると、Amazonで指定の商品を購入すると、相殺分のクーポンが貰えるわ、手数料が貰えるわの楽なお仕事のようです。もちろんこれは嘘。

 調べたところこの詐欺の結末にはいくつかあるようです。

■ PayPay公式からは注意喚起も SNS経由のおいしい話は絶対にない

 PayPayの公式HPからも注意喚起が出ていますが、「アカウント情報をだまし取る」「残高を送らせたり、ログインに必要な情報を騙し取ろうとする」といった行為が実際に確認されているそうです。

 スクリーンショットを送ることはあくまで入り口にしかなりませんが、送ることで「いいなりになりやすい人」という判断が下されます。その後は、次々と要求が来るはずです。

 「これくらいなら大丈夫」と思っていても、相手はあらゆる手段を用いて金銭をだまし取ろうとしてきます。少しでも変だなと感じたら、最初の段階で辞めるようにしましょう。

 さらに調べると、「Amazonの商品をPayPayで購入し、品物は届かないけど報酬がもらえる」という内容で、高額商品の支払いをさせるというケースもあるようです。「Amazon」の名を語ったり、「PayPay」を使わせるアルバイトに、まともなものはないと思った方が良いでしょう。

■ 最後に……既読無視された程度でへこたれてはいられない

 既読無視で終わったTとのやり取りについても最後紹介しておきます。既読無視されたからといって「そこで終わり」、というわけにもいかないのが筆者の職業。RとTを同じグループに招待し質問することにしました。

 するとすぐにグループ退会。しかもRは完全無反応になってしまったので、Tを徹底的に招待しまくったところ……すぐにアカウントが消失。「メンバーがいません」とでたので、アカウント削除を行ったようです。色々聞きたいことがあったのに。

グループに招待しまくった

 と思った次の日、なんと同じIDで別の名前で復活していました。一時消したとしてもIDはどうしても捨てきれないようです。Twitterでかなりの数DMを送りまくっているので、恐らく窓口としてはなかなか閉じきれないのでしょう。

復活したT

 なお、新アカウントでは「D」を名乗っています。もちろん速攻フレンド申請!挨拶もしてみたのですが……無反応。どうも最初からブロックされたようです。これ以上は無理だと判断し今回の調査は終了。

 そもそもですが、実体のない相手とのやり取りは、常に個人情報や金銭が狙われている、と自衛の心を持ちましょう。収入を目的に副業を行う場合も、小さいことからコツコツ、100%クリーンな方法で行うよう慎重に。うまい儲け話などはこの世にない、という気持ちが一番大事です。

 最後に、今回は調査のために接触を試みましたが、安易な気持ちで真似をしないでください。詐欺の手口はどんどん巧妙化、複雑化しています。また、詐欺師は人を取り込むことを得意としています。編集部でも複数人でチェックをしながら互いのメンタル面など危うくならないよう、十分な準備を行い取り組んでいます。重ねてとなりますが「絶対に真似をしないよう」。

<参考・引用>
PayPay公式HP「SNSでのトラブルにご注意ください」

(山口弘剛)

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