大正製薬の総合研究所に行ってきた 頭髪研究の最先端に潜入
おたくま経済新聞 / 2023年10月20日 10時30分
![大正製薬の総合研究所に行ってきた 頭髪研究の最先端に潜入](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/otakuma/otakuma_20231020_01_0-small.jpg)
大正製薬の大宮工場に潜入!発毛剤「リアップ」の開発裏話も
10月20日は「頭髪の日」。髪は長い友などと言われるわりに、記者の友は疎遠になりがち……。この友との関係をつなげてくれるのが発毛剤です。
今回は10月20日に先駆け、発毛剤「リアップX5チャージ」を発売する大正製薬より総合研究所のメディア見学会に誘われたので行ってきました。こんな機会滅多にない!
大正製薬の総合研究所は、埼玉新都市交通ニューシャトル「今羽駅」から徒歩6~7分のところにあります。普段なかなか見ることができない研究施設を見学できるということで、まさしく大人の社会科見学。駅から工場へ向かう道のりは、少しワクワクしていました。
入口で受付を済ませると、大きな工場の脇を通って研究室がある建物の中へ。会議室へ案内されて、まずは「リアップX5チャージ」の紹介や研究の歴史などが説明されました。
ところでみなさんは「発毛剤」と「育毛剤」の違いをご存知でしょうか?読んで字のごとくですが、「発毛剤」は医薬品で新しく髪を発毛させて生えた髪を育てて抜けにくくするもの。「育毛剤」は医薬部外品で今ある髪を育てて抜けにくくするものです。
この発毛剤の主成分が「ミノキシジル」。元々は、1960年代に現在のジョンソン・エンド・ジョンソンが高血圧治療の内服薬の成分として開発。服用した人に「体毛が濃くなる」副作用が見られたことから頭皮に塗る外用剤として開発がすすめられ、1999年に大正製薬が日本初の一般用医薬品発毛剤「リアップ」として発売します。
日本の一般用医薬品として配合できるミノキシジルの最大濃度は5%。発売当初「リアップ」に配合されていたミノキシジルは1%でしたが、2009年から5%配合されるようになります。
今回、発売される「リアップX5チャージ」にはミノキシジル5%に加えて、抜け毛予防や育毛のサポート成分が7種類も入っています。これは市場にある発毛剤の中でもっとも有効成分数が多いそうです。
■ 1つの成分を加えるのに15年!さらに7種類のサポート成分の1つである「パンテノール」。これは育毛のサポート成分で、この1種類を加えるのにかかった年月は、なんと15年。
つまり2009年にミノキシジル5%配合のリアップを発売した頃には、すでに「パンテノール」を加えようと考えていて、試行錯誤の結果ついに「リアップX5チャージ」で加えられたということです。
15年の間には「2度の大きな挫折(パンテノールを含まない新商品の発売など)」や「ベースとなる基剤の変更(ゼロからのスタート)」、「約200通り以上の処方」など、様々な苦労があったといいます。
■ 研究室へ移動!頭部のマネキンがズラリ会議室での説明が終わると、ついに研究室へ移動。ここでは「発毛・育毛」や「白髪改善」、「髪質改善」などヘアケアの研究がおこなわれています。今回はその中でも「成分探索研究(溶解成分)」や「毛包ターゲッティング研究」、「頭皮環境研究」などを見学。
まずは頭部のマネキンがズラリと並ぶ「頭皮環境研究」のエリアへ。マネキンの頭に生えている毛は人毛で、髪型を変えたり、あえて髪が薄い部分を作ったりしてリアップを塗ったりしているのだとか。
その隣にはマイクロスコープを使用した頭皮を観察できる装置も。マイクロスコープにより、「皮脂の蓄積」や「肌の炎症」、「軟毛化(薄くなりかけている毛)」などを細かく観察することにより、頭皮で何が起こっているのか一目瞭然。ここからヒントを得て発毛や育毛のサポート成分の選定や研究をおこなっているそうです。
続いては「成分探索研究(溶解成分)」エリア。発毛剤の主成分である「ミノキシジル」は非常に水に溶けにくい性質を持っています。そこで「ミノキシジル」が溶剤や水とよく混ざり合う処方を開発。それが右の容器で、左の混ざっていない容器と比べると雲泥の差です。
この研究が「リアップX5チャージ」の誕生につながり、さらに改良を重ねて次の製品にも活用しようと考えているとのだとか。
■ 皮膚に近い状態を作って試行錯誤最後は「毛包ターゲッティング研究」。皮膚は「表皮」と「真皮」と「皮下組織」の大きく分けて3つの層になっていて、毛根の部分は「皮下組織」のところにあります。毛根には毛を作るための毛乳頭細胞や毛母細胞があり、この部分に発毛剤を効率良く届けることが重要。
逆にこの部分を通り過ぎて毛細血管の方に行ってしまうと、「ミノキシジル」は元々は高血圧の薬だったので副作用が出やすくなってしまうそう。
そのため皮膚に見立てた人口膜(シリコン)や皮膚の温度とだいたい同じ32度の水を使用した実験装置を活用。できるだけ皮膚に近い状態を作り、「発毛効果の促進」と「副作用のリスク軽減」について試行錯誤を重ねて、日々研究していると語ります。
取材協力:大正製薬株式会社
(取材・撮影:佐藤圭亮)
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