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「女のクセに」「女なのに」鍛刀場に寄せられる心ない声に女性村下が提言

おたくま経済新聞 / 2023年12月13日 12時0分

「女のクセに」「女なのに」鍛刀場に寄せられる心ない声に女性村下が提言

「女のクセに」「女なのに」鍛刀場に寄せられる心ない声に女性村下が提言

 近年、議論されることが多くなったジェンダー問題。本来平等に与えられるべき権利や資格が、「女性だから」「男性だから」と、性別だけで差別を受けることは減りつつあるものの、歴史ある専門職等においては、いまだ根強く残る場合もしばしば。

 「平田鍛刀場」の女性村下(むらげ)、平田のどかさんの元には、出演した動画にコメントで「女のクセに鍛冶場に入りやがって」「女なのに日本刀作りに携わるな」と心無い声が寄せられているのだそう。SNSに投稿されたこの内容が反響を呼んでいます。

 東京にある「平田鍛刀場」は、夫婦で運営している刀鍛冶。村下としてたたら製鉄を行うのどかさんと、夫であり刀匠の平田祐平さんが分業で働いています。

製鋼を担当する平田のどかさん

 鍛冶屋には女神「金屋子神(かなやごかみ)」(男神の説もある)と呼ばれる鍛冶の神様を信仰する風習があり、その影響から「鍛冶関係の作業場には女性を入れない掟」があったとされています。直接的に触れられてはいないものの、今回のコメントはこうした文化を重んじる方からのものでしょう。

 もちろん伝承については平田さん自身も興味を持ち、さまざまな説を研究しているとのこと。「製鋼を担当している身としては、金屋子様を信仰されている方々のご意見、伝統も大事だと思っております」と、理解を示しています。

 その上で、「生まれ持った性別の部分以外では伝統や慣習を破るような行為をした事がありません」と述べる平田さん。たしかに掟通りであれば、うまく鉄が作れず困り果てているはずですが、現実にそのようなことは起きていません。

 また、刀匠である祐平さんも「たたら製鉄は僅かな変化に気付き、すぐに対応しなければいけないため、まるで赤子を育てるようなとても難しい仕事」と述べています。男女どちらか、ではなく、どちらの視点も取り入れることで、より良い気付きを得られることも多いとのこと。

刀匠として刃物製作を担当する平田祐平さん

 投稿には2万件近くの「いいね」が付き、「これからも自信を持ってお仕事に取り組んでください」「日本刀と女性の親和性はむしろ高いと思う」といった応援の声や「我が鍛刀場には現在二名の女性が、刀鍛冶を目指して修行中です」「江戸時代には女性刀工もいらっしゃいました」といった同業者、識者からのコメントも。多くの方がのどかさんの提言に賛同しています。

 この反響に、のどかさんは「お言葉を沢山頂いた事に心より感謝しております。皆様の温かいお言葉を心の宝箱に入れ、私の中で大事にします」と、感謝の気持ちをコメントしています。

平田さん夫婦

 刀鍛冶に関わらず、伝統工芸職人は減少傾向にあり後継者問題がよく取り上げられます。こうした心無い声によって後継ぎがいなくなり、歴史ある文化が途絶えてしまうことが最もあってはならないこと。

 そもそも、たとえ信仰があったとしても、相手を傷つける発言をしていいか、は別の問題。たとえネット上であっても、向けた矛先は本人の目に留まるもの、という考えを念頭に置き、責任を持って意見するべきでしょう。

少々物申したい。

よく私が出演した動画にコメントで

「女のクセに鍛冶場に入りやがって」
「女なのに日本刀作りに携わるな」

というコメントを頂きます。
私は女性であるという生まれ持った性別以外の部分で日本刀の伝統や慣習を破るような行為をした事はありません。

— 平田鍛刀場-HirataSwordsmith- (@hirata_sukehira) December 7, 2023

<記事化協力>
平田鍛刀場-HirataSwordsmith-さん(@hirata_sukehira)

(山口弘剛)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山口 弘剛‌ | 配信元URL:https://otakei.otakuma.net/archives/2023121302.html

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