ママ活詐欺に引っかかった人にインタビュー→からの再潜入してみた<前編>
おたくま経済新聞 / 2024年8月19日 16時26分
Tさんとママ活仲介者とのやりとり
SNSに蔓延るさまざまな種類の詐欺のうちのひとつである「ママ活詐欺」。おたくま経済新聞では2023年8月に一度接触を試みていますが、先日その記事を見た人から「記事のママ活紹介見事に引っかかりました」という連絡が届きました。聞くと、「紹介された相手が登録画像3枚曝すのも全く同じでした」とのこと。
あれから1年……どうやらまだ同じ手口で活動しているようです。昨年の記事「【更新】今流行の「ママ活」アカウントに釣られるとどうなる?実際に釣られてみた」では、手口を全て公開したところ、即座に脅しと取れる意見が問い合わせ窓口より送られてきました。
それほどまでに凶暴性のある相手であり、編集部にとっては因縁ある相手。その後があるならば、誰よりも気になります。
そこで今回は、連絡をくださったSさん(仮名)に詳しくインタビュー。あわせてママ活アカウントとも再度接触して、一年前と比べて手口に何か変化があるのか調査してみたいと思います。
■ Sさんが遭遇したママ活詐欺まずはママ活について簡単に説明をしておくと、一言で言えば「パパ活」の逆バージョンにあたるものです。
パパ活では男性が女性に対して金品を支払う代わりに食事等の時間的拘束を得ますが、ママ活では女性が男性に対して金品を支払うと言う内容。
しかしこの「ママ活募集」は詐欺というケースがほとんどです。男性の下心を利用し、募集を行い、男性側はお金が貰えるどころか、だまし取られる流れになります。
ちなみにママ活という言葉を使わず、「男性募集」「お金持ちの美熟女のお手伝い」といった内容で、街角ポスターで募集が行われているケースもあります。
ネット上での募集は、主にSNSとマッチングアプリを通じて行われています。特に目につくのが「SNS」での募集。勧誘方法は大きく2つあり、「ママ活募集」のポストをハッシュタグなどつけて投稿する「応募制」のものと、DMやリプライ通じてスカウトしていく「スカウト制」があります。
■ Sさんのケース1:SNSのDMにスカウトDMが届く
Sさんの場合は、Xのママ活アカウントからスカウトDMが送られてきたそうです。相手のアカウント名は「sachi」で、Xのプロフィールにも堂々と「ママ活君募集中です」と書かれています。
2:「住む地域が合わない」という理由で別の人を紹介される
相手とやり取りを進めると、すぐに「お互い住む地域が合わない」という齟齬に直面したようで、「Sさんが住む地域で活動しているママを紹介する」という提案と共に、LINEへ誘導するQRコードが送られてきたとのこと。
3:紹介されたLINEの相手は、ママとの「仲介役」
言われるがままに登録を行うと、今度は「○♡」というLINEアカウントとのやり取りが始まります。この「○♡」と会う約束を取り付けるわけではなく、あくまで仲介役で、条件に合うママを紹介してくれるとのこと。
4:年齢、居住地を伝えると3名のママが案内される
Sさんが自身の年齢や地域を伝えると、3名のママが案内され、その中から年齢が近かった「Sa(さえ)」を選択。
5:女性を紹介するかわりに「有料or無料のサイト登録」をするよう促される
ママ活のルールやマナー等について動画で説明された後、○♡から「女性を紹介する代わりに有料or無料のサイト登録をお願いしている」という案内があります。ここでSさんは「無料」の登録を選択しました。
6:ママとのグループトークにやっと招待される
その後「さえ」とやり取りを行うためのグループトークへ招待されます。どうやら初回のみ、仲介役も踏まえた3名でデートの約束を取り付ける流れとなっているようです。
7:そろそろサイト登録を……と仲介役に促される
場をグループトークへ移し、Sさんが自己紹介を行うと「さえ」からも発言が。デートの内容に話が弾み、実際に会う日時まで約束を取り付けたところで、再度仲介役「○♡」が「そろそろお話しいたしました上記のサイト登録の件を進めていきたいと思っております」と、割って入り込んできます。
8:順に登録をすると登録できないサイトが出てくる
無料サイトの登録はいくつか必要になるようで、順に登録を行っていると、その内のあるサイトに登録できないことが発覚します。
どうやらそのサイトに、Sさんが過去に登録した履歴があるようで、そのために登録ができないのだと「○♡」は言います。もちろん、Sさんにそのような覚えはありません。
9:突然「クレジットカード登録」を持ちかけられる
すると「○♡」からは「クレジットカードはお持ちでしょうか?」という質問が。Sさんは所持していたものの、「クレカ情報はできるだけ登録したくないのが本音です」と伝えると、「特例でのお繋ぎはルール上難しいため、このままの活動を継続することは困難」と案内されてしまいます。
10:突然の逆ギレ、一方的に話しを切られる
引き続き「条件を設けずにご紹介できる方がいないかを一度探してみます」と、別の人を紹介する気のある態度を見せるも、Sさんが「(サイトへの)登録可能なことを確認してから登録させてください」と伝えると、「登録できないのはこちらに非があるとおっしゃるのですね」とまさかの逆ギレ。
「文句を言われる覚えはございませんので、代案でのご提案も破棄します」と一方的に話を切られ、以降、「○♡」「さえ」の両方とも連絡が取れなくなってしまいました。
■ 去年潜入したときの流れとほぼ同じSさんとママ活アカウントとのやり取りは、たしかに「【更新】今流行の「ママ活」アカウントに釣られるとどうなる?実際に釣られてみた」で紹介した内容と、ほぼ同じやり取りが繰り広げられていました。
Sさんもクレジットカード情報を渡さないところでやり取りを終えましたが、これが狙いであることは一目瞭然で、「○♡」「さえ」共に「運営側」の人間とみて間違いないでしょう。一年経っても手口にあまり変化は見られないようです。
万が一にでもクレジットカード情報を相手に渡してしまうと、不正使用の被害に遭うなど、悪用されてしまう可能性が非常に高くなることが予想されます。速やかにカード会社に連絡し、利用停止手続きを行うようにしましょう。
■ いったいなぜママ活をしようと思ったのか Sさんにインタビューしてみたおたくま経済新聞ではもちろん、初めからある程度「怪しい」ということを前提に「潜入」という形で接触を試みていますが、Sさんはいったいどのような思いでママ活アカウントと接点を持ったのか、どの段階で怪しいと感じ始めたのか、せっかくなので「ママ活に応募してしまう人の考え」を色々聞いてみることにしました。
* * * * *
―― この度はお忙しい中、インタビューにご協力いただき誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。
よろしくお願いいたします。
―― まず、プロフィールをお聞かせください。名前は仮名でかまいません。
名前:S(仮名)、年齢:29歳、職業:会社員(休職中)、インターネット使用歴:小学生からです。
―― 今回の「ママ活詐欺」にははじめどこで遭遇したのでしょうか?編集部で前に接触した際は、Xの「ママ活募集」をみてこちらから声をかけました。
DMに相手からいきなり連絡が届きました。性欲強いのと彼女にフラレて割と自棄になってるのと、別の詐欺に遭ってお金盛大に持ってかれたので賭金無しで金が手に入るならなぁと。
―― まんまと下心を利用されましたね……。ちなみに前にひっかかった詐欺とは?
前のは乱交パーティーしますって言われて行ったら2時間お爺さんの話飲まず食わずで聞かされて(物件や仕事も紹介するよ)みたいに言われて後で返すねで6万もってかれました。
―― 下心……。
今考えればどう考えても怪しいんですけどね。
―― 今回のママ活の相手とは、やりとりだけでも数日かかったかとおもうのですが、相手に対する印象は?そして詐欺だと気づくきっかけはやはり有料サイトの登録でしたか?
紹介されたサイトに登録できなくて別のにしてくれと連絡したら、クレカありますか?と聞かれて「ん?」となりました。
特に外国人の方に多いのですが、連投すると(クレカあるのを他の返答と連投して送った)文章を読み逃しがちで同じことを聞くことがあるので、さらに「ん?」となりまして。
―― 会話がスムーズに成立しなかったわけですね。詐欺だと気づいて撤退したわけですが、その後何か異変はおきていますか?迷惑メールが増えた、いたずら電話が増えた、など。
特に現状なにもないですね。メールは捨てアドを使いましたし、電話の方も特にないです。登録したのも1サイトでしたから。
―― それはよかった。他に流されたら大変ですものね。最初からある程度、警戒はされていたんですね。安心しました。
* * * * *
インタビューからもわかるように、やはり女性と遊べて、なおかつ金銭も援助してもらえる、というのは男性にとっては魅力的すぎる話。こうした誘いが100%ない、と断言はできませんが、99.9%あり得ないことと思って差支えないでしょう。
それにしても、「sachi」とのやり取りの間にも、他のママ活アカウントから連絡があるとは。もしかすると、ママ活アカウント同士でのマニュアル共有のほか、ある程度内々で繋がっているのかもしれません。これは再調査してみるしかない……。
ということで、別のママ活アカウントと接触を試みてみました。調査の結果は「ママ活詐欺に引っかかった人にインタビュー→からの再潜入してみた<後編>」へと続きます。
<記事化協力>
Sさん(仮名)
(山口弘剛)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山口 弘剛 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024081903.html外部リンク
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