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「ボールペン組み立て」が詐欺の入り口に? SNS広告で広がる巧妙な手口

おたくま経済新聞 / 2024年9月24日 15時47分

「ボールペン組み立て」が詐欺の入り口に? SNS広告で広がる巧妙な手口

「ボールペン組み立て」が詐欺の入り口に? SNS広告で広がる巧妙な手口

 SNSでよく見かける「おいしいバイト」の広告。実際に応募するとどうなってしまうのか?

 Instagramでみかけたボールペンの組み立てバイト募集に応じた田中さん(仮名)から、今回その顛末を聞くことができた。

■ 「ボールペンの組み立て作業」は嘘だった

 ある日、田中さんがInstagramを見ていると、「在宅でできる副業」というふれこみの広告が出てきた。作業内容は、ボールペンの組み立て作業。昔からある内職の代表的作業だ。

「ボールペンの組み立て作業」をうたう広告

 しかしボールペンを組み立てる仕事の相場は一本0.1円から1円程度にも関わらず、今回の募集内容では一個20円。相場よりもかなりの高額報酬である。

 ボールペンの組み立てが1個20円。大量注文のため人手が必要ということで、詳細をクリックするとLINE交換のリンクへと飛ばされた。

 リンク先に現れたのは「絵美子」というアカウント。「副業に興味があって連絡しました」と伝えると、すぐさま返事が返ってきた。

絵美子との最初のやりとり

 絵美子の説明によると、作業内容は「TikTokのブロガーを助け、動画再生量を増やす」こと。

 ここで田中さんは不審に思った。「おや?ボールペンを組み立てる仕事ではなさそうだ」。とはいえ、1日の収入は5000円から5万円と魅力的。

 それに広告と話が違ったとしても、「危なくなったら途中でやめればいい」という思いもあり、言われるがままに作業を引き受けた。

 依頼された作業は、絵美子から指定されたTikTokアカウントの動画を視聴するだけ。それを繰り返すこと数回すると、報酬を受け取れる額になったそうだ。

テスト作業の説明

 そこで誘導されたのが、報酬を受け取るためのWEBサイト※。副業とは全く関係なさそうな業種のサイトが指定された。(※絵美子は「APP」だと言っていますが実際はただのWEBサイトです)

会員登録するよう促されたサイト

 田中さんにそのサイトをみせてもらうと、どこからどうみても投資系の会員制サイト。恐らく仮想通貨を取り引きするものだろう。ログイン画面には仮想通貨をイメージしたイラストが掲載されている。

恐らく仮想通貨の取引をするサイト

■ 全く知らない人から振り込まれた2000円

 本来であればここで立ち止まればまだ被害は0ですんだはず。しかし田中さんは、銀行情報を登録してしまったそうだ。その結果、自分の口座には2000円が振り込まれた。

引き出し手順の説明

 絵美子の指示に流され口座まで登録してしまったものの、口座の振り込み情報をみて一気に不安がおしよせた。振り込んできた相手は個人名義。

振り込み履歴

 「カワイ ○○○」という全く知らない人物からのもので、「絵美子」という名前や、どこかの企業の名前でもなかった。

 「もしかすると、これは詐欺なのかもしれない」

 ここでようやく冷静になり、ネットで検索すると、「タスク詐欺」と言われるものと、ほぼ流れが一致していた。

 「これは大丈夫なお金なのだろうか」

 田中さんはまず、振込先に使用した楽天銀行に電話をかけたそうだ。

 「動画を見るだけで収入が入る副業をやったところお金が振り込まれてしまいました。調べたところどうやら副業を続けていくと『金銭を引き出すには手数料が必要』といって数万円を振り込ませて、お金が返ってこない『タスク詐欺』と呼ばれるもののようでした。いまは連絡などは無視しているのですが、お金が振り込まれてしまったことについては問題はないのでしょうか?」

 「勝手にお金を振り込んできて、後々利子を追加した額を返せと言ってくる押し貸し詐欺の可能性がありますので、一旦口座を凍結させましょうか?」

 楽天の窓口では、親身になって相談にのってくれたという。結果、口座についての対応も定めることができ、その後警察にも念のために相談。

 連絡したのは、警察相談専用電話の#9110。犯罪かどうかわからない、ストーカーやDV・悪徳商法について相談したいなど、110より緊急性が低い内容を警察に相談できる窓口である。

 田中さんは、電話をかけ事情を説明すると、「よく、詐欺と見抜きましたね」となんだか褒められたそうだ。

 その後の警察の話によると、振り込まれたお金についてはその後連絡がなければ、ひとまず大丈夫。ただし、「もし新たな詐欺や自分が犯罪に巻き込まれそうな状況になったら直ちに110番してください」という念押しがあった。

 また、仕事を依頼してきた絵美子と、口座名義が違う点について、「口座売買など犯罪組織が絡んでいる場合も大丈夫ですか?」と質問。すると、「現段階ではまだ捜査まで踏み込める状況ではない」という話。

 最後は田中さんの名前、連絡先などを聞かれ、ひとまずの対応終了となったそうだ。

■ タスク詐欺とは

 今回、田中さんがひっかかってしまった手口は、田中さんが自身で調べて気づいたとおり「タスク詐欺」と呼ばれるものである。以前、編集部でも潜入取材をして紹介している。

▼YouTubeを見るだけで稼げる? オイシイ仕事を調査したらやっぱり詐欺だった
https://otakuma.net/archives/2024042305.html

 主な入り口はInstagramをはじめとするSNSの募集広告。以前は堂々と、「動画を見るだけ」とうたっていたが、近ごろニュースで度々報じられたこともあり、ごまかすために見た目を今回のように「ボールペンの内職」などに変えているのだろう。

 その後の流れについては、田中さんが今回聞かせてくれた流れと、前に編集部で潜入取材をしたときと全く同じ。報酬の引き出し用に、怪しい投資サイトに誘導される流れも全く一緒だ。

 ちなみに田中さんは今回2000円の報酬を得ることができた。今後もしこの話をすすめていたらどうなるか?

 数回は、同じように動画を視聴する作業をさせられ、その都度金額が貯まれば数千円の報酬を受け取ることができるだろう。しかし最終的には「引き出すためのお金が必要」などといいだし、お金を取られることになる。

 と、ここまで読んだ人の中には、毎回2000円もらって一回で辞めれば収入になるのでは?と思った人もいるかもしれないが、絶対にやめてほしい。

 振り込みに指定した口座番号、名前、電話番号など、詐欺師に伝えてしまった個人情報はこのあと、「詐欺師のカモリスト」に登録され、詐欺師界隈で共有される可能性がある。気づくと犯罪に巻き込まれているかもしれない。 

(山崎尚哉)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山崎尚哉 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024092405.html

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