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【新作アニメ捜査網】第18回 黒執事Ⅱ

おたくま経済新聞 / 2010年8月2日 19時54分

【新作アニメ捜査網】第18回 黒執事Ⅱ

「新作アニメ捜査網」

皆様こんにちは。今回は、現在放送中のテレビアニメの中から、毎日放送及びTBS系列で放送中の『黒執事II』をご紹介します。
『黒執事II』は2008年第4クール~2009年第1クールに放送された『黒執事』の続篇です。


『黒執事』は、19世紀英国におけるビクトリア女王(在位・1837年~1901年。本作で声を演じたのは川澄綾子)の治世を描いた作品です。第22話「その執事、解消」では1889年のパリ万国博覧会が登場しており、この辺りの時代を主要な舞台にしています。

このパリ万博はフランス革命百周年を記念して開催されたもので、エッフェル塔はこの時に建設されました。フランス革命が勃発したのは「火(1)縄(78)く(9)すぶるフランス革命」という語呂合わせでお馴染みの1789年ですね。

ビクトリア王朝時代は、大英帝国が最も栄華を極めた時代です。ビクトリア王朝時代の英国を舞台にしたテレビアニメといえば、本作の他に『英國戀物語エマ』『伯爵と妖精』もあります。このうち、『黒執事』と『伯爵と妖精』はいずれも2008年第4クールに放送されました。2本ともファンタジー作品でしたが、どちらかというと、『黒執事』が陰、『伯爵と妖精』が陽という趣でした。『伯爵と妖精』は、イケメン男性や可憐な少女妖精、男装の麗人など、登場人物が華麗であり、まさにファンタスティックなお伽噺の世界を表現していたと言えます。一方の『黒執事』は、切り裂きジャック事件(1888年)や植民地インドへの搾取(後述)など、当時の英国の負の側面を描いており、どこかおどろおどろしさを漂わせています。『伯爵と妖精』と『黒執事』は同じ時代・国をテーマにした作品ながら、対照的な作りになっていたと言えます。

『黒執事』はスクウェア・エニックスの『月刊Gファンタジー』に連載されている枢やなの漫画をアニメ化した作品で、その題名の通り執事を主人公にした作品です。主人公・セバスチャン・ミカエリス(声・小野大輔)は英国の貴族・シエル・ファントムハイヴ(声・坂本真綾)に仕える執事で、その正体は実は悪魔。因みに、アニメにはセバスチャンという執事がよく出てくるイメージがあります。昭和49年の『アルプスの少女ハイジ』に出てきた執事もセバスチャンだったし、昭和53年の『ペリーヌ物語』に出てきた執事もセバスチャンでした。『黒執事II』では、セバスチャン&シエルと、新キャラクターである貴族・アロイス(声・水樹奈々)及びアロイスに仕える執事クロード(声・櫻井孝宏)の対決を描いています。アロイスに仕える外地出身のメイド・ハンナ(声・平野綾)も謎に満ちた人物であり、こちらも目が離せません。

さて『黒執事』の物語には、時代背景が色濃く反映されています。本稿では、その点を中心に見ていきたいと思います。19世紀後半は帝国主義全盛の時代であり、産業革命を経た欧州列強は、白人以外の民族が住む地域(アジア、アフリカ等)に次々と植民地を獲得しました。『黒執事』は、こうした時代背景の下で物語が進んでいきます。

第13話「その執事、居候」では、インド帰りの成金が次々と吊るされる事件が発生。「犯人はインド人に違いない」とか、「植民地支配に対する怨恨」だとかいう噂が飛び交います。1877年、ディズレーリ英首相は英領インド帝国を成立させ、インドは英国の属国となりました。当時の英国が植民地から搾取していたという歴史的事情を背景にして、本作が単なるファンタジーに留まらない骨太な社会派ドラマとしての性質も持っていることが窺えます。
更に第20話「その執事、脱走」で清国人が語っていた台詞によれば、大英帝国とフランスは植民地拡張競争を繰り広げているという。そして清国人は、ビクトリア女王はフランスに対抗するため、ドイツ帝国・イタリア王国に書簡を送って軍事同盟を結ぼうとしていると指摘します。遡れば、ビクトリア王朝時代の1840年~1842年、阿片戦争で清国に勝利した英国は、清国に不平等条約を押し付けます。『黒執事』第20話に登場した清国人の語り口には、阿片戦争で清国に屈辱を与えた英国に対する憎しみが込められていました。一応、ストーリー上は英国人が主役になっていますが、その背景に欧州列強の植民地拡張という要素を漂わせることで、物語に深みを与えていたと言えます。
第20話の清国人が指摘したように、当時の代表的な帝国主義国家としては、英国以外にフランスがあります。第22話「その執事、解消」では前述の通りパリ万博が登場。劇中には、仏領インドシナを題材としたパビリオン等が登場しました。1884年~1885年の清仏戦争に勝利したフランスは、インドシナ半島を植民地としていました。この辺りの描写も、帝国主義の時代を背景にしていることをよく物語っていると言えましょう。
帝国主義の時代の中、植民地であるインドでも独立運動家が現れますが、『閃光のナイトレイド』(本連載のhttps://www.otakuma.net/archives/3292863.htmlを参照のこと)に名前だけ登場したマハトマ・ガンジー(1869年生まれ)とチャンドラ・ボース(1897年生まれ)は、そうした中の1人であった訳です。全く関係のない2つの作品を見比べてみるのも、一興と言えましょう。

■ライター紹介
【コートク】
戦前の映画から現在のアニメまで喰いつく、映像雑食性の一般市民です。本連載の目的は、現在放送中の深夜アニメを中心に、当該番組の優れた点を見つけ出して顕彰しようというものです。読者の皆さんと一緒に、アニメ界を盛り上げる一助となっていきたいと考えています。宜しくお願いします。

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By おたくま経済新聞編集部 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/3449435.html

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