“ラノベ=ハーレム“に対するアンチテーゼ!? ライトノベルの新たなジャンルを提示した『モブ恋』

おたぽる / 2014年10月29日 1時0分

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 余りもの同士でも熱い恋模様はある!

 志村一矢著『モブ恋』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス[電撃文庫])は、オタクコンテンツが当たり前のものとしてきた常識に一矢を報いる作品。10月には続編の『モブ恋-2nd-』が発売されたばかりだ。

 作品冒頭、物語の主人公・南代春馬は語る。

"ギャルゲ時空の存在を、俺は確信している"

 次々と女の子に出会い、恋愛模様が繰り広げられるギャルゲー、あるいはエロゲーの世界。そこでオイシい思いが出来るのは主人公ただ一人。

 でも、この物語の主人公はそうじゃない。このギャルゲ時空の中心にいるのは、主人公の親友・渡会秋兎だ。だから秋兎は幽霊少女や宇宙人少女、異世界のお姫様とも出会い、同居経験まである。そして、忍者の末裔とか生徒会長とか、登場する学園ヒロインたち全員が秋兎ラブ勢だ。対して、本作の主人公・春馬はギャルゲーにおける主人公の友達ポジション。"主人公にして主人公にあらず"という、ややこしい主人公だ。

 そんな悲惨な主人公は、地味すぎる眼鏡っ娘・森崎由布子が秋兎に"エア告白"するのを偶然目撃する。名前も地味な文字通りのモブキャラに、春馬はなぜか熱くなってしまう。エア告白で自身の想いを諦めようとする由布子に対して、春馬のセリフが秀逸だ。

「立ち絵があるかどうかすらあやしい。モブキャラだ。モブ子さんだ」

 いくらなんでも失礼すぎるセリフだけれども、そこは勢い。春馬は、改めて由布子に自分の立ち位置を認識させて、こう告げる。

「攻略対象外だったサブヒロイン以下のキャラが、妙な人気が出て、異色版やらファンディスクやらで攻略対象に昇格する例は、少なくないんだ。おまえは、それを目指せ。モブ子を脱却するんだ」

「俺が!モブ子のおまえを、ヒロインに昇格させてやる!」

 もうおわかりでしょうけど、本作『モブ恋』は、モブ子をイメチェンさせて色々とアタック方法を練っているうちに、春馬とモブ子の二人がお互いを意識し始めるも......というラブコメです。

 正直に言ってしまえば、テレビドラマとかでは1クールごとに必ずひとつはあるような物語。でも、それをラノベでやると新しく見えちゃうのだから不思議。

 こうした作品が"ライトノベル界の巨人"電撃文庫というレーベルから出版されるのはどういうことか。もう読者のほうも「いくらなんでもハーレム展開ばかりだよ」と、飽きが来ていることを示しているのかもしれません。ライトノベルの中心的な読み手は10代~20代前半といわれていますが、30代、40代になっても読み続ける人は増えています。青春まっただ中ならいざしらず、青春を終えた読者は青春の痛い部分すらも作品の中に求めているのでは? いや、やっぱりある程度の歳を重ねたら自分の青春を思い出して悶絶しながらラノベを読むくらいが心地よくなってくるのです。

 表面上はギャルゲー設定の変化球を装いながら、実は新たなジャンルの想像の端緒がこの作品なのかと思います。

 それと、残りもの同士でいいから筆者も彼女が欲しいものです。
(文/大居 候)

おたぽる

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