単なる業界内輪ネタに終わらない! 原作者がプライドを捨てているからこそ面白い『エロゲの太陽』

おたぽる / 2014年12月18日 23時0分

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「週刊スピリッツ」が、こんなマンガを掲載するようになったか......と、連載開始以来、話題沸騰中の作品『エロゲの太陽』(原作:はまむらとしきり 作画:村正みかど/共に小学館)だ。11月の単行本第1集発売と共に、注目度はさらに加速している。

 物語は、会社の上層部に不正の罪をすべて被せられそうになって逃亡した主人公・神田太陽が、女だらけのエロゲー開発会社「エリコム」を舞台に繰り広げられる。

 作中でも、かつてエロゲー会社を潰した経験を告白する原作・はまむら氏。それゆえにギャグシーンを挿入しつつも、物語は冷酷かつ容赦ない。

 序章では、いきなり発注元の企画者(プロデューサー)が逃亡。企画者の苦し紛れのCG指定書が原因で「ボンデージの人妻」「つるぺた少女」「巨乳女子校生」と世界観がまったく統一できておらず、発売=爆死必至なトラブルが描かれる。

 そもそもエロゲーを知らないと「?」が点灯しそうだが、ここでの解説が秀逸だ。かつて、原作者はまむらとしきりは、女子高生、メイド、妹キャラ、女教師、宇宙人など、多種多様なキャラがひしめき合うようなエロゲを制作し、売り上げが大爆死したことがある。

 もはや、開き直りである。一時はどん底だったであろうことが容易に想像ができる原作者だが、本作では自分の黒歴史をわかりやすいエンターテイメントに昇華している。このぶっ飛んだ開き直りが作品世界を濃厚にしているのである。

 おおよその人が振り返りたくはないであろう黒歴史をネタへと転嫁する。このプライドを捨て去る行為は容易にできるものではない。過去、エロゲー業界でも会社を倒産させたり、売り上げが芳しくなくて事業の縮小に追い込まれる者は数多く存在した。自嘲しながら、こぢんまりと事業を続ける人は、まだマシなほう。中には、債権を踏み倒したにもかかわらず、Twitterで自分の才能を自画自賛したり、ボランティア活動なんかを始めて賞讃を得ようと目論むヤツなんかも......。

 つまり、黒歴史をエンターテイメントに昇華するには、自らの安いプライドをたたき壊して、人生を振り返るという半端でない「自省」が必要なのだ。それを成し遂げているからこそ、この作品は単なる業界内輪ネタに終わらない魅力を放っているのである。

 まだ第1集が発売されたばかりだが、本作が真に語ろうとしているのは、それでも止められない物づくりに生きることの魅力なのだと信じたい。
(文/ピーラー・ホラ)

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