「無礼講」は危ない! 上司の言葉を真に受け、異動させられた40歳・UCLA卒のエリート部長

オトナンサー / 2018年7月22日 6時10分

 今年は観測史上最速の梅雨明けとなりました。東京では6月中に梅雨が明け、いきなり夏が到来し、連日記録的な猛暑が続いています。こんな暑い日には、よく冷えたビールがたまりません。夏季休暇前に「納涼会」を控えている会社も多いと思われますが、品格のあるビジネスパーソンを自認するならば、納涼会のルールを正しく理解しておきたいものです。

 納涼会に限らず、社内のイベントで上司が必ず口にする言葉に「無礼講」というものがあります。役職や年齢など、堅苦しい礼儀を抜きにして行う酒盛りのことを指しますが、部下は常識の範囲で気遣いをしなければなりません。もしも、無礼講の“本当の意味”を知らなければ、それは大きなリスクになることを覚悟する必要があります。

 たとえば、納涼会の目的は何か。納涼会を、社員を慰労する場と考えてはいけません。納涼会は、上司が自らの威厳や存在を示し、再確認する場です。上司は納涼会の様子を見ながら、「こいつは忠誠心がないから異動」「こいつは降格。給料も下げてやる」「こいつは見どころがあるから昇進させよう」など、さまざまな思惑を巡らせています。

■シンクタンクの「ブランデーグラス事件」

 シンクタンクに勤務している頃、以下のような出来事がありました。若い人には役立つケースかと思いますので、紹介します。

 このシンクタンクは、S総研という国内大手のバンク系シンクタンクです。ある日、クライアントのN酒造から工場見学のオファーがありました。役職者を中心に派遣メンバーが決められ、幹部クラスは自家用車での合流が許されました。

 藤井常務の年齢は50歳半ば。中堅大学を卒業し、新卒で入社、これまで営業畑を歩んできました。トヨタのクラウンが愛車で、スマホの待ち受け画像はもちろん愛車のクラウンでした。

 そして、待ち合わせ場所に最後に登場したのが、井上部長でした。年齢は40歳、UCLAを卒業し、米国の政府系金融機関に就職しました。2年前に、ヘッドハンティングでS総研に入社、社内でも次期取締役候補として将来を嘱望(しょくぼう)されていました。

 しかし、井上部長の登場を境に藤井常務の表情が険しくなったのです。

藤井常務「今、何時だと思っているんだ! 君は既に取締役になったつもりかね?」

井上部長「10時集合に間に合っています。何がご不満でしょうか?」

藤井常務「当たり前だ! 部長の分際で最後に合流するとは何事だ! けしからん奴だ!」

井上部長「そう言われても…困ります」

 井上部長は、藤井常務がなぜ怒っているのか分かりません。実は、藤井常務のクラウンが廉価モデルだったのに対し、井上部長のクラウンは「スーパーセレクト」という最上級モデルだったのです。部下の方がグレードの高い車を乗っていたので、面白くなかったというわけです。

 その場はどうにか収まったものの、宴会で修羅場が待っていました。既に、藤井常務の「無礼講」のあいさつがあり、宴もたけなわで、カラオケ大会も終盤に差しかかっていました。

 藤井常務の十八番は石原裕次郎の「ブランデーグラス」でした。井上部長は、藤井常務に気を遣い「藤井常務! 最後にビシッと決めてください」と一言。藤井常務は「今日は飲みすぎて声が出ない。君が歌ったらどうかね。今日は無礼講だ!」と返しました。

「それでは」と井上部長、おもむろにマイクをつかみ「ブランデーグラス」を歌い始めたのです。石原裕次郎ばりに低音ボイスでビブラートが効いた、まさに熱唱でした。周囲は“マイナス10度”に凍り付いていましたが、酔った井上部長は満足そうな表情でした。

 その翌月、井上部長は九州データセンターに異動になりました。データセンターは過去の資料や出版物を扱う資料室のようなもので、花形とは言えません。その後、井上部長にスポットライトが当たることはありませんでした。社内では「ブランデーグラス事件」として語り継がれることになりました。

■「無礼講」の理想的なかわし方

 経験上、本当に優秀な社員は型を崩しません。つまり、部下としての一線を越すことはないのです。「今日は無礼講だ!」と言われて、「ありがとうございます。それでは~」と型を崩してはいけません。無礼講と言われたら、普段より慎重な対応が求められます。社交辞令をまともに受けると大変なことになると覚えておくべきでしょう。

 その日の役割を遂行したければ、お酒を飲まないことです。筆者はこのような席でお酒を勧められても「今日は風邪気味で、風邪薬を飲んでいるので飲めません」と一滴も飲みませんでした。また、飲んでいないと完全シラフなので、場面を的確に掌握できました。「上司の悪口」「会社の批判」で話を振られても、一切同調せずに淡々と対応することができたのです。

 万が一、しつこい人がいたら、その場を強制リセットすればよいのです。何も入っていないコップを倒したフリをすれば、その場で強制リセットが完了します。また、仕事の電話が掛かってきたフリをしながら席を立ったり、トイレに中座したりすることも有効です。戻ってきて何事もなかったかのように振る舞えば、一件落着ということになります。

 お酒は上手に付き合えば「百薬の長」と言われます。適度な飲酒は、血液の循環を良くし、体の疲れを癒すことは間違いありません。しかし、上司と飲みに行き、お酒が原因で評価を下げる人は少なくありません。筆者は、社内でお酒を飲むことは基本的にお勧めしません。飲むのは会社以外にした方が無難だと申し上げておきます。

コラムニスト 尾藤克之

大人んさー [otona × answer]

トピックスRSS

ランキング