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“隠れ糖尿病”の異名も 「血糖値スパイク」放置でどんなリスク? 原因&症状を専門医に聞く

オトナンサー / 2024年6月1日 8時10分

「血糖値スパイク」とは?

 糖尿病に一度かかると完治しないほか、放置するとさまざまな合併症を引き起こすといわれています。過食や運動不足などが原因で発症するとされており、日頃から食生活に気を付けている人は多いと思います。

 ところで、人によっては、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」と呼ばれる状態に陥ることがあります。血糖値スパイクは健康診断でも判明しないことがあるため、隠れ糖尿病と言われていますが、体にどのような影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。

 血糖値スパイクを放置するリスクのほか、血糖値スパイクの予防法について、「三鷹駅前たなか糖尿病・内科クリニック」(東京都三鷹市)院長で、糖尿病専門医の田中祐希さんに聞きました。

■血管に負担がかかり「脳梗塞」「心筋梗塞」の原因に

Q.そもそも、「血糖値スパイク」とはどのような状態を指すのでしょうか。

田中さん「血糖値スパイクのスパイクとは、『先が鋭くとがったもの』のことで、血糖値が短時間で急上昇、急下降することで、血糖値の推移を表す波形が、とげのように鋭く上がり下がりするようなことを言います。

血糖値スパイクに関する明確な定義はありませんが、血糖値にまったく異常がない人の場合、血糖値は70~140mg/dlの範囲で上下するとされており、空腹時には概ね100未満の血糖値、食後でも140以内で推移すると考えられています。食事をしてから1~2時間以内に血糖値が140以上に上昇し、その後、急速に食前の血糖値まで戻っていく場合は血糖値スパイクと考えられます」

Q.なぜ「血糖値スパイク」が起きるのでしょうか。例えば、朝食や昼食を抜いた場合、血糖値スパイクが起きやすくなるのでしょうか。

田中さん「先述の通り、血糖値スパイクは血糖値にまったく異常がない人には起きないと考えられています。

そもそも、血糖値は膵臓(すいぞう)で作られる『インスリン』というホルモンにより、高くなり過ぎないように常に調節されています。つまり、食事により糖質が体内に入った後、血糖値が上がりそうになると、速やかにインスリンの分泌量が増えますが、その後、血糖値が下がってきてインスリンが不要になると、分泌量も減っていきます。

しかし、この膵臓のインスリンを分泌する能力は、加齢や糖尿病の進行により徐々に低下してしまいます。そうすると、体に糖質が入ってきたときにインスリンの分泌が間に合わなくなり、結果的に血糖値の上昇を抑えることができず、高血糖になります。そしてワンテンポ遅れてインスリンの分泌量が増えてくるため、その後、血糖値が急激に低下することになります。これが血糖値スパイクです。

逆に、インスリンの分泌量が大きく低下している場合、高血糖が続いてしまい、血糖値がなかなか下がってこないことから、スパイクが見られにくいこともあります。血糖値スパイクは糖尿病の初期段階の人のほか、『境界型糖尿病』といわれる糖尿病の手前の状態の人に多く見られる傾向にあります。

また欠食時間が多い場合も、血糖値スパイクが起きやすくなることが知られています。欠食時間が長いと体が飢餓状態となり、食べていない間は血糖値が大きく上昇することはありません。ただ、欠食明けに食事を取る場合、体が飢餓状態で糖質を欲している状態で糖を取ってしまうことになるため、血糖値スパイクが起きやすくなります。

最近では、『16時間ダイエット』という、16時間絶食時間を設けるダイエット方法が登場していますが、絶食明けに食事をすると血糖値スパイクが起きやすくなると考えられます。

基本的には、1日3食の食事で適切な量の糖質を取っていくことが望ましいですが、もし前の食事から時間が長く空いてしまった場合は、糖質を取る前にたんぱく質や野菜、脂質を摂取して体を慣らしてから、少量の糖質を取るのが良いでしょう。ただし、イモ類やカボチャは糖質が多いので、食事の最初に食べるのは避けましょう」

Q.では、血糖値スパイクが起きると、どのような症状が出るのでしょうか。放置すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。

田中さん「血糖値スパイクが起きたときに自覚症状として現れるのは、強い眠気と倦怠(けんたい)感です。職場や自治体の健康診断では、通常は『空腹時血糖値』を調べるため、『食後高血糖』は健康診断では見つからないことが多いです。

そのため、食後の眠気が気になり、医療機関を受診し、食後の血糖値を調べてみて、初めて食後高血糖が見つかることがあります。

また、血糖値スパイクで血糖値の急上昇の後の急降下により、食事前よりも血糖値が下がってしまうことがあり、場合によっては血糖値が70mg/dl未満の『低血糖』に至ることもあります。これを『反応性低血糖』と呼びます。

低血糖になると吐き気や動悸(どうき)、冷や汗、震えといった症状が出ますが、これらは食後3~4時間程度で出ることが多く、例えば、昼食後の反応性低血糖だと午後4時から午後5時ごろにかけて低血糖症状が出る人が多いようです。

眠気については、就寝前に甘い飲み物を飲むと良く眠れるという人がいらっしゃいますが、これは血糖値スパイクによる眠気の可能性が考えられます。

自覚症状としては感じられませんが、長期的に害があるのは血管障害です。血糖値の激しいアップダウンは血管障害を促進することが知られており、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなります。また認知症のリスクも上がるといわれており、血糖値スパイクは起こさない方が良いと考えられます」

■血糖値スパイクを防ぐには?

Q.血糖値スパイクをできるだけ予防するには、どうすればよいのでしょうか。

田中さん「血糖値スパイクを起こさないようにするために心掛けたいのは、正しい食事方法と適度な運動です。

食事については『単・速・多』を避けるようにしましょう。糖質を『単品で』『速く』『多量に』食べてしまうと、血糖値スパイクが起きやすくなります。そこで、糖質を取る前におかずでたんぱく質や脂質、食物繊維を取っておくと、その分、膵臓からインスリンが早めに分泌されるようになり、食事の際にインスリンの分泌が間に合いやすくなります。

また食事をゆっくり取ると、さらに良いです。糖質の量も多くなり過ぎないことで血糖値の上昇を抑えることが可能です。

逆に、この『単・速・多』が生じやすい食べ物としては、そうめんなどの麺類のほか、ジュースのような液体の糖質、アイスクリームが挙げられます。これらは単品で取ってしまうことが多く、のど越しが良いので摂取の速度が速くなりがちで、その分、摂取量も多くなる傾向にあります。

運動は、血糖値スパイクの予防に有効です。食事の直後で血糖値が上がり始める前に運動を始めると、血糖値の上昇幅を抑えることができます。食事の直後に運動ができれば最善ですが、時間の都合で難しい場合は、食前の運動でも血糖値スパイクを抑える効果が期待できます。

また膵臓のインスリンの生産能力を強化することはできませんが、インスリンの効きやすさを改善させるために筋量を増やすことや体脂肪を減らすことも有効です。

筋肉量不足と過剰な体脂肪は、インスリンが効きにくい、いわゆる『インスリン抵抗性』を招き、高血糖になりやすくなるため、その結果、血糖値スパイクが起きやすくなります。血糖値スパイクを予防するためにも、日頃から体作りを実践していきましょう」

オトナンサー編集部

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