わが子の意思に反した「ごめんね」「いいよ」の強要…子どもの気持ちを無視する親が助長する“リスク”とは
オトナンサー / 2024年6月9日 8時10分
子育てをしている母親にとって、「ママ友」との人間関係は大事にしたいもの。そんなとき、わが子の気持ちを無視して「ごめんね」の謝罪の言葉や、「いいよ」と許す言葉を、まだ生まれて3~4年しかたっていない子どもに強要していることはありませんか? その強要にはリスクがあると、子育て本著者・講演家として活動する筆者は思います。
■「謝れば済む」と誤学習も
ある日の公園の風景です。
砂場にあったバケツを見つけたAくんは、それを使って遊び始めました。するとBくんがやってきて、Aくんが遊んでいるバケツを奪いました。そこへ子どもたちのママがやってきて、次のように言いました。
Bくんママ「お友達のおもちゃ、奪ってはダメでしょ! 『ごめんね』は?」
Aくんのママ「意地悪しないで貸してあげなさい。『いいよ』は?」
Bくん「ごめんね」
Aくん「いいよ」
このやりとりで、親にとっては「めでたし、めでたし」です。
でも、子どもたちにとって、「ごめんね」「いいよ」は単なる条件反射で出た言葉です。謝罪と許容を強要された2人の子どもは、納得はしていませんでした。さらに、Bくんはこの経験から「謝れば済む」と誤学習して、翌日も同じことを繰り返しました。
この対応でひとまず、大人であるママ友との人間関係は悪化しないとは思いますが、果たして、肝心な子どもの方はどうでしょうか。子ども側の気持ちを想像してみましょう。
Aくん「僕が先に見つけたバケツだ。まだまだ遊んでいたい」
Bくん「僕も、どうしてもそのバケツで遊びたい。一体いつまで使っているんだ!」
…といったところでしょうか。でも、親からの叱責(しっせき)により、双方とも自分の意思とは違う行動や言動をせざるを得なくなるわけです。
こんなとき、親は次のような対応をしましょう。
Bくんママ「Aくんは楽しそうにバケツで遊んでいたね。だから遊んでみたかったんだね。でもね、いきなり奪い取るのはよくないよ。『貸して』とお願いしてみようよ」
Aくんママ「まだまだバケツで遊んでいたいよね。でも、Bくんがバケツ貸してほしいんだって。どうする?」
このように伝えて、あとは子どもたちに任せるのです。Aくんが遊び足りなくて、すぐにバケツを貸さなかったとしても、それはそれでよいのです。仮に、2人がケンカに発展しても、相手に砂をかけたり、おもちゃで相手を殴ったりするといった行動を取っていなければ、少し様子を見ましょう。
これらは、親密な間柄であるママ友との間でしか、なかなかできないことかもしれませんが、「子どもの社会性を育てるために、私たちがすぐに仲裁するのはやめておこうね」と、ぜひママ友と事前に打ち合わせしておきましょう。お互いの子どもたちのために、です。
■「親が自分の気持ちを大切にしてくれた」実体験から学ぶ
人生のスタート地点である幼少期に、「自分の気持ちを押し殺して、相手の気持ちを優先させる」ことばかりを強いられると、自分の気持ちはいつも後回しにし、自己主張ができない人に育ってしまうかもしれません。
公園の砂場は、社会を学ぶよい機会、よい場所です。時には、思い通りにならないことも起こるからです。
子どもは自己中心的でわがままな生き物です。相手の気持ちよりも、自分の気持ちが優先です。それが子どもらしさであり、子どものよいところなのです。そして、「親が自分の気持ちを大切にしてくれた」という実体験を通して、相手の立場や気持ちが分かる人に育っていきます。
「ごめんね」「いいよ」「めでたし、めでたし」で、片付けてしまわないように気を付けたいものですね。
子育て本著者・講演家 立石美津子
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