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「燕は戻ってこない」「東京貧困女子。」…東京での“生きづらさ”描くドラマが話題 それでも上京する背景とは

オトナンサー / 2024年7月2日 7時10分

7月2日に最終回を迎える「燕は戻ってこない」で主演を務める石橋静河さん(2023年4月撮影、時事通信フォト)

 東京を舞台として、女性の貧困や現代の孤独と社会の不条理を描いたWOWOWの連続ドラマ「連続ドラマW 東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-」(2023年)、そして同じく、東京を舞台に女性の貧困と生殖医療ビジネスの倫理の物語が展開するNHKの連続ドラマ「燕は戻ってこない」(毎週火曜午後10時~、7月2日最終回)。

 東京で生き抜こうとする女性たちの苦悩をリアルに描いたドラマが次々と放送され、自身に照らし合わせながら、視聴している人もいるのではないでしょうか。本記事では「連続ドラマW 東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-」と「燕は戻ってこない」における女性の描かれ方を見た上で、なぜ東京に多くの人たちが集まるのか考えていきます。

■「東京貧困女子。」「燕は戻ってこない」…東京で暮らすための“プラスアルファ”

 東京を舞台にしたドラマでは、登場人物の女性が、キラキラしたオフィスでバリバリ働き、恋もおしゃれも一生懸命……という作風を思い浮かべるのではないでしょうか。このような作品を地方で見ていると、東京には夢があり、上京すれば仕事も恋もおしゃれも…と期待がふくらむのではないでしょうか。しかし、当然のことながら、東京にはキャリアを順調に築き上げている女性ばかりが存在するわけではありません。

 近年、東京の片隅でつつましく暮らす女性の生き方に焦点を当てたドラマが話題を集めています。俳優の趣里さん扮(ふん)する「東京貧困女子。」の主人公・雁矢摩子は出版社の契約編集者として働くシングルマザーで、経済的に余裕がありそうな友人をうらやましく思いながら、自身が貧困のボーダーラインにいる女性でした。本作では、風俗で働く女子大生、DVやパワハラなどを経験した女性たちも登場し、苦悩する心情が描かれました。

 「燕は戻ってこない」は、代理母の問題を扱った作品ですが、作品の根底には貧困問題があります。俳優の石橋静河さん演じる主人公の大石理紀(リキ)は、北海道で介護施設や古着屋で一生懸命働きながらお金をためて、上京することで自身の変化を期待していたものの、現実は甘いものではありませんでした。同作でリキが「東京に来ても駄目でした。こっちだとプラスアルファの何かがないと駄目だったんです」と口にしながら、東京で生まれ育った人と、地方出身者の格差を訴えるシーンがありました。

 リキは、自宅付近の病院で受付事務としてフルタイムで働いても手取り14万円前後。古びたアパートで暮らし、コンビニでサラダを買うのも厳しい懐事情です。経済苦から逃れるため、迷った末に代理母に応募しました。

 リキが話すように東京で成功するには“プラスアルファ”の何かが必要なのかもしれません。他の人よりも優れた学歴や美しい容姿があれば文化やトレンドの中心地でもある東京を謳歌(おうか)できる可能性が高いと考えられますが、プラスアルファのものを持つ人はほんの一握りではないでしょうか。また、リキが話すように、首都圏に実家がある人であれば、14万円前後の手取りでも貧困を実感しにくいかもしれません。リキのように地方出身の普通の女性が現状を変えることの難しさについても考えさせられます。

 さらに本作では、プラスアルファの何かを手に入れようとする努力を問うセリフやラグジュアリーなレストランでの食事シーンなど、経済苦に陥っている人とプラスアルファの何かを持っている人が、相いれがたい様も描かれました。

■東京で暮らす単身者は“満足度”が低い

 2022年、ジブラルタ生命保険株式会社が20~69歳の未婚男女4700人(男性2350人、女性2350人)を対象に、「おひとりさまに関する調査2022」の結果を紹介しました。同調査の「現在の生活に満足している人の割合」では、おひとりさまの満足度について都道府県別にランキング形式で記載されており、東京で暮らす未婚の人の満足度は男性が6位、女性が20位(ジブラルタ生命調べ)で、東京で暮らす単身男性の満足度は高めであるものの、単身女性の満足度は意外にも低いという結果でした。

 このことは、手取り額の少なさや家賃の高さによる経済苦も関係しているのでしょう。大手就活サイトで東京の事務職の求人を検索してみたところ、時給1200円前後スタートの求人が目立ちました。時給1200円で1日8時間、1カ月に20日勤務したと仮定すると、月収は19万2000円になります。単身の場合、手取りは15万円前後でしょう。前述のリキは病院の受付事務として働き、毎月の手取りが14万円前後でしたが、彼女の状況は珍しいものではないと思われます。

 非正規雇用を選んだのは本人ですが、自己責任で片付けることはできないと考えられます。仕事には向き不向きがありますし、それぞれが事情を抱えています。また、非正規雇用の求人が中心の職業もあります。例えば、スクールカウンセラーや学芸員、図書館司書などは非正規雇用が多いのが現状です。

 東京で正社員として就職したとしても一概に、安心できるものでもありません。総務省が1959年から5年ごとに実施している「全国家計構造調査」の2019年の調査結果では、関東の平均年収が603万8000円と日本の平均年収(例年450万円前後)よりも少々高いものの、関東圏には年収が高い大手企業や外資系企業が多く所在するため、一部の企業に在籍する正社員が平均年収を引き上げているという見方もできます。大手就職サイトで正社員の求人を検索してみると、デスクワーカーについては400万円に満たない年収で求人を出している企業も目立ちますし、企業の規模を問わず経験が少ない若手の年収はそう高くないことが多いです。大学生の半数以上が奨学金制度を使っている昨今、高い家賃を払いながら東京で一人で暮らすのは大変なことだと思います。

 東京には、ショッピングスポットや美術館、コンサートホール、インスタ映えする飲食店なども多く点在します。しかし、それらはある程度、経済的に余裕がないと触れることのできないものでもあったりします。

■東京が多くの女性たちの心をとらえ続ける理由とは?

 地方創生が国内における課題となっている昨今、地方移住者を対象にした助成金のほか、地方での就労支援、結婚支援などの施策が増えてきました。しかし、コロナ禍で“東京離れ”が一時的に話題になったものの、最近は”地方を離れる若者たち”が再び話題に挙がっています。特に、女性が地方を離れる傾向が強いようで、東京をはじめとする大都市圏での就職を希望する人が多い状況です。

 この背景には、地方における職業の選択肢の少なさが挙げられます。地方によっては、介護職員や警備員、調理補助といったエッセンシャルワーカーの求人が目立つエリアや、正社員でも月収20万円以下の求人が多いエリアもありました。

 東京においても従業員に多くの給与を支払える企業は限られていますし、正社員の求人ばかりではありません。それでも、地方よりは選べる職種が多い点は魅力と感じるように思います。経済的に厳しくても、自分のやりたい職種を選択する人や適正により合った仕事に就きたいと考える人が多いのでしょう。

 その他にも、地方における男女間の役割分担の根強さを理由に、地元を離れる若い女性も多くいるのではないでしょうか。地元で就職してもサポート的な役割しか任せてもらえないことを懸念する人や、女性が料理し、男性にお酒をついでまわる地域の慣習に否定的な若年層も少なくありません。進学を機に地方を離れ、東京で就職したものの生活苦に陥っても、こうした事情を抱える女性たちは都内にとどまるしかないのが現状のように思います。

オトナンサー編集部

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