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【TikTok】無音騒動、米国「禁止法」で日本ユーザーはどうなる? 著作権に詳しい弁理士が解説

オトナンサー / 2024年9月5日 7時10分

「TiKTok」に何が起きたのか…

 2024年2月、ショートムービーを探索して楽しむことができるSNS「TiKTok」で、ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)の楽曲が一時的に消え、“無音になっている動画が発生”し、話題となりました。なぜ、このような事態が起きたのか、知的財産権に関する業務を行う弁理士の筆者が解説します。

■無音の原因は報酬、アーティストの保護、ユーザーの“安全性”

 無音になった原因は、両社の楽曲使用に関する契約更新の交渉が決裂したことでした。交渉の主な論点は3つ。「報酬の問題」の他に、「AIによって無断で生成されてしまったアーティストの未承認楽曲からアーティストを保護する(アーティストの声が勝手に使われている問題、いわゆる『AIカバー』を含む)」「TikTokユーザーのオンライン上での安全性についての疑問」があります。

 UMGは「TikTokがアーティストとその楽曲を無法地帯にさらすことを懸念し、こういった問題に対処するための厳しい措置を求める」としました。

 TikTokユーザーは、アーティストの楽曲をBGMとして使用します。自分の気分に合った動画を見つけると、同じ音楽を使って動画を作成・投稿して、皆が同じ楽曲を使用したりもします。このサイクルでTikTok発のバイラルヒットが次々と生まれているとも言われています。一方で、不正に利用されたり改変された楽曲を使った動画が拡散される例も見られます。TikTokと音楽業界の間で度々、問題になることです。

 アーティストの声が無断で使用されるケースも増えています。AI技術の発展によって、アーティストの声を模倣した新しい楽曲や音声メッセージを生成することが可能になっており、これが新たな問題を引き起こしているのです。

 昨今、世界中で同問題に対応するための議論が繰り返されており、アメリカテネシー州では今年、「声の肖像権」を認める法案、通称「エルヴィス法(Ensuring Likeness, Voice, and Image Security Act)」が可決されました。同法では、氏名・肖像に加え、声についても無断で使用することが禁じられます。技術の進化に伴って個人の権利が脅かされている現状にストップをかけるために制定されました。

 7月から施行された同法律は、「AIによる声の無許諾使用やディープフェイクなどからミュージシャンを守る最初の法律」として注目されています。

 現在は、TikTokとUMGは和解に至っており、UMGが管理する楽曲が再びTikTokで利用できるようになっています。報酬の改善に加え、AIによって生成された未承認楽曲の削除にもTikTok側が協力することに合意したためです。

■アメリカの「TikTok禁止法」の行方

 しかしながら、TikTokの今後には依然として不確実性が潜んでいます。今年4月、アメリカのバイデン大統領が署名した「2024年国家安全保障法」、通称「TikTok禁止法」は、TikTokのアメリカ国内での利用を禁止する可能性のある法律です。この法律では、TikTokが中国企業によって運営されていることから、中国政府への情報漏洩を懸念し、TikTokをアメリカの安全保障上の脅威と見なしています。もし指定期間内に事業売却が行われなければ、TikTokはアメリカから撤退しなければならないという、非常に厳しい内容が盛り込まれています。

 現在、アメリカ国内には約1億7千万人のTikTokユーザーがいるといわれていて、この法律が施行されれば、彼らのTikTok利用がどうなるかが非常に注目されています。著名人でいうとTikTokのフォロワー数で常に上位にランクインしているウィル・スミスさんなどもアメリカのユーザーですが、彼らのアカウントが今後どうなるのか、突然閉鎖されてしまうのかどうかは、他国のファンにとっても関心の的となっています。

 TikTokがアメリカから撤退することになれば、クリエイターたちも大きな影響を受けるでしょう。彼らの活動は事実上制限されますから、人によっては新しいプラットフォームを探す必要があるかもしれません。

 他の国でも同様ですが、TikTokというプラットフォームは、今や自己表現やフォロワーとの交流、人によっては大きな収入源として重要なものになっています。

 アメリカでのTikTok禁止が現実のものとなれば、日本にも影響が及ぶ可能性があります。他国のTikTokユーザーやクリエイターたち、また、TikTok以外でもこうした規制に直面する可能性は常にあります。AI技術による無断使用や声の肖像権の問題についても、日本でも法整備が急務とされているところです。

 TikTok禁止法では、成立から270日以内に事業を売却しなければ、アメリカでのTikTok利用が禁止されます。 大統領の権限でさらに90日まで延長可能とされているため、今年4月から約1年以内に決着が着くと考えられています。

 TikTok側はもちろん同法律に抗議していて、「表現や言論の自由を保障する憲法修正第1条に違反する」可能性があるとして、早速、異議申し立てを行っています。

 アメリカの動向を注視しつつ、日本のユーザーにはどのような影響があるかを見ていく必要があります。実際、米共和党の大統領候補であるトランプ前大統領は、TikTokをアメリカで利用禁止とすることに対し、「競争が必要だ」として反対する考えを示し始めているなど、状況はどう転ぶか分からず混沌としています。

 TikTokとUMGの問題は一時的に解決しましたが、AIによる無断使用や声の肖像権の保護など、音楽業界には新たな課題が山積み。TikTok禁止法によって、アメリカ国内でのTikTokの運命も不確かなものになっています。こういった問題に対処しながら、アーティストやクリエイターたちがどのようにして自分の権利を守りつつ、フォロワーとのつながりを維持していくのかが注目されます。

永沼よう子

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