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わが子は“天才児”かも…と舞い上がる母の“夢と現実” 真の「障害受容」を隠しているもの

オトナンサー / 2024年9月15日 9時10分

「きっと才能がある」の思いに隠れた本心は…(画像はイメージ)

 子育て本著者・講演家である私は、24歳の自閉症の息子を育てていますが、「うちの子は自閉症なの」と周りに伝えると、「何か秘めた才能があるはずよ」「ギフテッドチャイルドよ」と励まされたことが何回もあります。その励ましの言葉をよりどころにして、つらい子育てを乗り切ろうと必死でした。

「ギフテッドチャイルド」とは、日本語でいうと“英才児、優秀児、天才児”という意味です。「ギフテッド(gifted)」は、贈り物を意味する英語の「ギフト(gift)」 から来ており、神、または天から与えられた“資質”といわれます。

 ギフテッドチャイルドは、後天的に、努力に努力を重ねて「勉強ができる賢い子になった」という意味ではなく、「生まれつきの“天才”」を指す言葉だそうです。そのため、早期教育を一生懸命したからといって、ギフテッドチャイルドになるわけではないようです。

 知的障害や発達障害がある人の中で、特定の分野に限って優れた能力を発揮する人は「サヴァン症候群」と呼ばれます。例えば、映画「レインマン」のモデルになったといわれたキム・ピーク氏。彼は生まれつき脳に障害がありました。そのため、大人になっても親の介護がなければ、日常生活を送ることができませんでした。ところが、その一方で、類まれな記憶能力を持ち、9000冊以上の本の内容を一言一句、暗記していたそうです。

 桁数の多い暗算ができたり、円周率を延々と言えたり……そんなずば抜けた才能を持ちながらも、身の回りの着替えや歯磨き、排せつなどの身辺自立ができていない人も、実際にいます。

■息子もギフテッドだったのかもしれないが


息子が書いていた「カラス」の絵(立石美津子さん提供)

 私の息子には聴覚過敏がありましたが、それは同時に、聴覚が優れていることを表していました。実際、カラスやハトの鳴き声を聞いて「はしぶとがらす」「どばと」「かわらばと」と種類を言い当てていました。

 そこで、私は「息子をピアニストにしよう」と考え、日本でも有名なピアノ教室に通わせました。

 レッスンの中に、14種類の和音を聞き分ける「絶対音感」習得のための訓練がありました。通常は習得までに「1年はかかる」と言われ、長い子だと数年かかるものでしたが、息子はたった2カ月で全ての和音をピタリと当てるようになりました。先生から「今まで指導したお子さんの中で、一番早くマスターしました」と言われ、私は舞い上がりました。

 けれども、耳がよすぎて、教室で耳にする音を息子が嫌がったため、レッスンを続けられなくなりました。聴覚過敏のため、ピアノの音が嫌だったみたいです。私にも、それ以上やらせる気力も根気もありませんでした。

■自閉症児が生まれると「おめでとうございます」?

 発達障害のある人たちの中には、並外れた才能を持つ人がいます。企業が、その才能を求めていることもあります。

「バグ取り(デバッグ)」というプログラムの間違いを見つける仕事は、こうした人たちが優れた才能を発揮することもあるので、大手IT企業では「“デバッグの専門家”として発達障害の人を積極的に採用している」「自閉症児が生まれると『ラッキー、おめでとうございます!』と言われる」といった話を聞いたことがあります。

 そうなると、本人がしたいことよりも、親が「こうなってほしい」ことを無理強いしてしまうこともあると思います。

 でも、親の心の奥には、「あなたが障害さえ克服してくれたら、ママは幸せになれるのに…」という気持ちがあるのかもしれません。「きっと伸びる、才能がある」の言葉を隠れみのにして障害受容ができない親自身の姿が、そこにあるのかもしれません。

 障害の受容とは、「子どもの障害を受け容(い)れる」というよりは、親が「子どもの障害を受け容れたくない自分」を受け容れることなのかもしれません。

 そして、定型発達児であろうと、発達障害児であろうと、ギフテッドであろうと、親子やその周りが安らげる“安全基地”を作ってやることが、わが子が幸せな人生を歩む上で大切なことだと思っています。

子育て本著者・講演家 立石美津子

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