「切り身1切れ」でOKの魚も! スーパーで手軽に買える「栄養価の高い魚」管理栄養士のおすすめ5選
オトナンサー / 2024年9月19日 9時10分
栄養価の高い食材の一つである「魚」。スーパーで手軽に買える上、体に必要な栄養素が豊富に含まれているため、毎日の食事にうまく取り入れたいものです。管理栄養士の岸百合恵さんによると、「切り身1切れで一日に必要な摂取量を取れる」魚もあるとのこと。そこで、スーパーで買える魚の中でも特におすすめできる、栄養がたっぷり含まれている魚を教えていただきました。
■サケ、カツオは「高タンパク&低脂質」
スーパーではさまざまな種類の魚を買うことができますが、その中でも「特に栄養価が高い」といえる、おすすめの魚は次の5つです。
【サケ】
サケは可食部の4分の1がタンパク質で、低脂質なので、脂肪を抑えながらタンパク質を摂取したい人におすすめできる魚です。ビタミンD、ビタミンB群、ナイアシン、パントテン酸、マグネシウムやカリウムなどが豊富に含まれている、とても栄養バランスがいい魚で、現代人に不足している栄養素を多く補給できます。
特にビタミンDの含有量が多いことが特徴的ですが、ビタミンDは「骨のビタミン」ともいわれ、カルシウムの吸収を助ける働きがあります。補給源としては魚介類やキノコ類などですが、サケは切り身1切れで一日に必要な摂取量を取ることができるほど、ビタミンDが豊富な魚です。
また、サケは「アスタキサンチン」という成分も豊富に含んでいます。アスタキサンチンはサケの身に含まれる赤い色素で、非常に強い抗酸化力で血中脂質の活性酸素を抑えて免疫力を高めます。美肌、動脈硬化、がんの予防に効果があるとされています。
【サバ】
サバはDHAやEPAといった「オメガ3系脂肪酸(オメガ3系多価不飽和脂肪酸)」を、他の魚に比べて豊富に含んでいます。そのため、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らし、動脈硬化や血栓が作られるのを防ぐ働きが期待されます。
オメガ3系脂肪酸の一日の食事摂取基準は、18~49歳の男性で2.0グラム、女性で1.6グラムですが、マサバにはDHAが0.5グラム、EPAが0.7グラム、塩サバに加工されるノルウェーサバにはDHAが2.3グラム、EPAが1.6グラム含まれています(いずれも100グラムあたり)。
ただしDHAは、魚油(EPAを含むもの)や血液凝固を抑える働きのあるサプリメントと併用すると出血が止まりにくくなることがあります。その他、血圧を低下させる可能性もあり、降圧剤との併用で血圧が大きく低下する恐れもあるため、摂取時には十分な注意が必要です。
【カツオ】
「初ガツオ」とも呼ばれる春に獲れるカツオは、脂質や炭水化物の割合が少ない一方で、「戻りガツオ」とも呼ばれる秋ガツオは、春に獲れる春ガツオより脂の乗りがいいのが特徴です。
高タンパクで低脂質なカツオは、鉄分やビタミンB群が豊富で、貧血予防や疲労回復の効果があります。カツオに含まれるビタミンB6は筋肉や血液を作るのを助け、皮膚や粘膜を健康に維持してくれます。
また、カツオには、睡眠効果のある「セロトニン」を作る原料である「トリプトファン」が310ミリグラム(100グラムあたり)含まれており、一日の必要量を1食で摂取できます。トリプトファンからセロトニンを作る過程で、ビタミンB6も重要な役割を担っているため、カツオは効率的な摂取源といえるでしょう。
しかし、トリプトファンは過剰摂取すると、副作用として肝臓で脂肪の変化を起こし、肝硬変を招く恐れがあります。短期間に1日3000~6000ミリグラム摂取した場合、吐き気や頭痛などの症状が報告されているため、サプリメントを使っている人は上限を守って摂取する必要があります。
【アジ】
ナイアシンやビタミンB6、セレンなどの栄養を豊富に含む魚です。中でも小アジは、骨ごと食べるため、カルシウムが特に豊富です。小アジと普通のアジ、牛乳のカルシウム含有量(いずれも100グラムあたり)を比較すると、小アジのカルシウムは780ミリグラムで、一般的なアジ(マアジ)の約12倍、牛乳の約7倍です。
骨が気になりにくい小アジは、唐揚げや南蛮漬けにすれば丸ごと食べることができます。安価で手に入りやすいのもよい点ですね。
【イワシ】
“泳ぐカルシウム”といわれるほどカルシウムが豊富な魚です。さらに、そのカルシウムの吸収を助けるビタミンDも豊富なので、イワシは丈夫な骨や体を作ってくれる非常に優秀な食材といえます。カルシウムは食品によって吸収率が異なりますが、牛乳の40%に次いで、イワシは33%と高くなっています。
また、サバと同じようにDHAやEPAなどの必須脂肪酸も多く含みますが、イワシにはさらに、アミノ酸の一種である「タウリン」が含まれます。タウリンにもコレステロール値を下げる効果、動脈硬化や高血圧を予防する効果があるので、生活習慣病予防に役立ちます。
■最も「栄養の損失が少ない」食べ方は?
これらの魚の栄養を効率よく摂取するためには、いくつかのポイントや注意点が存在します。
魚の栄養素に特徴的なDHAやEPAは非常に酸化しやすい上、調理時に油や煮汁などに流れ出しやすく、加熱分解もしやすいです。数値にすると、焼き魚で約2割、揚げ物にすると約5割程度損失してしまいます。そのため、栄養素を重視するなら、魚を新鮮なうちに生のまま刺し身、すしで食べるのが、最も損失の少ない食べ方といえるでしょう。
揚げ物やグリルよりは、フライパン調理の方が損失率は少なくなります。そのため、フライパンでできるムニエルやホイル焼きなどの調理法もおすすめです。みそ汁のように汁ごと食べる料理は、流れ出た栄養素も摂取しやすいですね。
また、より手軽に魚を摂取したいときには、缶詰を常備しておくとよいです。塩分は高くなりますが、汁や骨ごと摂取できるため、カルシウムをはじめとする溶けだした栄養をたっぷり取ることができます。
サバ缶のカルシウム量を例にすると、100グラムあたり260ミリグラムあり、牛乳の含有量(110ミリグラム)よりも豊富です。小アジやイワシなどを骨ごと食べることでカルシウムを摂取したい場合は、揚げたり、骨がやわらかくなるまで煮たりする調理も必要です。
先述したように、魚にはDHAやEPAのオメガ3系脂肪酸が豊富に含まれますが、これが含まれる自然の食材は「魚介類」か「野菜」です。魚を食べない食生活では、高確率でオメガ3系脂肪酸の不足に陥ります。さらに、卵や乳製品が不足している人やアレルギーがある人などは、魚全体に多く含まれるビタミンDやAが不足しやすいです。
栄養素の摂取効率や味の好み、食べやすい食材か、どの栄養素を重視したいか……なども含めて、上手に魚を利用してくださいね。
オトナンサー編集部
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