産後のママの体は「全治1〜2カ月の交通事故」に遭った状態? どのくらいのダメージなのか聞いた結果【専門医解説】
オトナンサー / 2024年10月29日 9時10分
医療が発達した現代においても、妊娠・出産は「命がけ」です。産後の体に残るダメージの例えとして「全治1〜2カ月の交通事故に遭った状態と同じ」ともよくいわれます。実際、出産を経験した女性からは「産後は疲労と抜け毛とめまいで大変だった…」「私は貧血もひどかった」「はっきりと“ボロボロ”って言っていいレベルでした」といった声も聞かれますが、産後のママの体では何が起こっているのでしょうか。神谷町WGレディースクリニック(東京都港区)院長で産婦人科医の尾西芳子さんに教えていただきました。
■大量の出血、骨折、皮膚がズタズタ…
Q.産後の体が追っているダメージは「全治1〜2カ月の交通事故に遭った状態と同じ」とよく例えられますが、これは事実といえるでしょうか。
尾西さん「はい、事実といえます。なぜ、産後の体を『全治1〜2カ月の交通事故に遭った状態と同じ』と例えられるのか、その理由として次の5つが考えられます」
【大量の出血がある】
多いときには800ミリリットルの出血をすることもあります。月経時の経血量が多い人を指す「過多月経」は、1周期の月経量が150ミリリットル以上という基準がありますが、その4カ月分以上の出血量という状況です。そのため、貧血となるリスクが高くなります。
【骨盤の結合が緩む】
妊娠後期に向けて、骨盤それぞれの骨の間の結合がホルモンによって緩んでいきます。これによって骨盤が開きやすくなり、赤ちゃんの頭が通りやすくなるのです。ただ、これは産後もすぐに閉まるわけではないので、骨盤がぐらぐらした状態がしばらく続くことになります。
【骨折する】
出産時、尾骨が骨折することもしばしばあります。
【膣の皮膚や筋肉がズタズタになる】
赤ちゃんが産道を通る際に、膣の皮膚や筋肉が裂けることがあるほか、出口である「会陰(えいん)」が狭い場合は、裂けるのを防ぐために切開することもあります。
【ホルモンの急激な減少による影響】
産後は急激に女性ホルモンが低下するため、脱毛や気分の落ち込みなど、さまざまな問題が起こります。
Q.仮に、産後のダメージが続いている時期に「安静」にしていないと、どうなることが考えられますか。
尾西さん「産後ダメージが回復しないうちに無理をすると、次のようなリスクが高まる恐れがあります」
・出血が長引く
・尾骨が曲がってくっついてしまう
・骨盤がゆがんだまま再結合する
・膣が緩んだままになる
・子宮が正常な位置から下降し、一部または全部が膣から出てくる「子宮脱」のリスクが上昇する
・回復が遅れ、うつ発症の原因となる
Q.「出産後はボロボロでした」という女性の声も多く聞かれますが、「交通事故に遭った状態」と同じような状態となっている産後のママは、どのように過ごすことが求められますか。
尾西さん「まず、特に産後1カ月間は、無理は禁物です。赤ちゃんのケアはもちろんですが、ママ自身のケアもとても大切です。
夜中の2時間ごとの授乳なども、ママの回復には負担になります。その分、昼間の休めるうちに休むなど工夫をしましょう。また、赤ちゃんの抱っこや重い物の買い出し、体を動かす家事などは、家族でサポートしていきましょう。
韓国などでは産後1カ月間、産後ケアセンターに入れたり、フランスでは産後の『ぺリネケア』(産道のケア)が無料で受けられたりと、海外では産後のママのケア体制がしっかりしています。近年は、日本でも少しずつ産後ケアセンターが広まってきているように思います。産後に利用できるように、妊娠中からそういった施設を調べておくのもおすすめです」
オトナンサー編集部
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