【漫画】小4息子が不登校に 母も疲弊…どん底の家族を救ったカウンセラーの“金言”<作者インタビュー>
オトナンサー / 2024年11月2日 6時10分
息子の不登校への向き合い方について描いた漫画「子どもが不登校になったので、いろんな人に頼ってみた。」(全3話)が、Instagramで合計1800以上のいいねを集めて話題となっています。
小学4年生のとき、不登校になってしまった息子。「学校へ行ってほしい」という気持ちと葛藤しながら、学校やスクールカウンセラーに相談する母でしたが、自身も心身ともに疲れて寝込んでしまいます。ある日、専門家のカウンセリングを親子で受けることになり…。読者からは、「私も親として勇気をもらいました」「お子さんも含め、ご家族で頑張りましたね」「うちも不安でいっぱいですが、まずは家でゆっくりさせてあげようと思いました」などの声が上がっています。
■まずは子どもと向き合い、本音を聞いてあげて
この漫画を描いたのは、Instagramやnoteなどで漫画を発表している、漫画家兼イラストレーターの川口真目さんです。2021年11月には、書籍『子育てしながらフリーランス』(左右社)を出版しました。川口真目さんに、作品についてのお話を聞きました。
Q.今回、漫画「子どもが不登校になったので、いろんな人に頼ってみた。」を描いたきっかけを教えてください。
川口真目さん「SNSで不登校についての発信をする中で、子どもの不登校に悩む親子がたくさんいることを知りました。また、その苦しみから自死を選択してしまった子もいると知り、大きなショックを受けました。
子どもは、信頼できる大人が周囲にいないと悟ったとき、絶望し、自傷する方向に向かいがちです。私自身も幼少期に生きる希望を持てない時期があったので、気持ちは分かります。しかし、子ども自身も、子どもを大切に思う親も、そんなことは望んでいないはずです。
だから、学校に行くことがつらいと思っている子どもに無理を押し付けるのではなく、まずは子どもと向き合い、本音を聞いてあげてほしいです。自分の気持ちを話す気力がなさそうなら、気持ちの整理ができるまで子どもを休ませてあげてほしいです。最悪の事態を避けるためにも…。そんな気持ちを、今悩んでいる皆さんにも伝えたいと思い、今作を描きました」
Q.息子さんが不登校になったとき、親としてどのようなことが特に大変だと感じましたか。
川口真目さん「一番は、相談できる人がいなかったことです。『どうにかしてあげたいのに、どうしたらいいか分からない』、息子が傷ついて弱っているのに、何もできない日々がただただ苦しかったです。スクールカウンセラーとは、月1回しか相談できませんでしたし、不登校に詳しい先生とも出会えませんでしたし、専門家の探し方も分からない状況でした。
作中では、初めから相性のいいカウンセラーに出会えたように見えますが、実際はカウンセリングルームを何カ所も回っており、やっと巡り会えた人なんです」
Q.カウンセリングを受けた後、息子さんには、具体的にどのようなサポートをしましたか。
川口真目さん「3つあります。1つ目は『学校や習い事を休ませること』、2つ目は『何とか学校に行かせなければという考え方をやめること』、3つ目は『親子で楽しむこと』です。
当時、息子は『学校に行きたくない』と言葉で伝えてくることはありませんでしたが、学校や習い事に行こうとすると、よく体調を崩していました。これは明らかに体がSOSのサインを出していると思いました。
学校や習い事をすべて休ませることは、親として大きな覚悟が必要でしたが、本当に大切なことは子どもが健康でいることだと何度も自分に言い聞かせ、休ませる選択をしました。また、休ませている期間は、『学校』という概念を息子に忘れてもらうために、学校を思い出してしまうようなランドセルや制服、教科書などを見えないところへしまいました。
しかし、仮に学校を休ませてあげても、『いつまで学校を休むのだろう…』『今日も学校に行かないのかな…』などと親が不安に感じていると、子どもは敏感にそれを察知し、余計に動けなくなってしまいます。『何とかして、学校に行かせなきゃ』という考え方をやめることは、簡単なことではありません。なぜなら、親や先生、社会の中で『それが当たり前だ』と、私たちが小さい頃から教わってきたからです。
確かに、子どもの未来を心配することはとても大切です。しかし、心身が疲弊しているときに考えても、ネガティブなことしか浮かばず、余計に気持ちが病んでしまいます。幸せな未来に近づくためには、『親子で一緒に今を楽しむこと』が大切だと思うんです。そのことが不登校の子どもを回復させる近道だと思っています。
私と息子の場合は、平日の朝にカフェでモーニングをしたり、一緒にゲームを楽しんだり、息子が小さい頃から好きな科学館に通ったりしていましたね」
Q.そのようなさまざまなサポートを続けることで、息子さんはどのように変化していきましたか。
川口真目さん「少しずつ、心身ともに強くなる様子が感じられました。不登校になる前よりもずっと。不登校で傷ついていた時期は、それまでできていたはずの留守番や習い事ができなくなっていました。それが、先ほどの3つのサポートを心掛けたことで、徐々に回復し始めたんです。
それからは一緒に買い物をしたり、近所に散歩に出かけたりと、できることが増え始めました。今では学校とフリースクールに行く日を、息子自身が決めています。また、『何のために学校やスクールに行くか』について自ら考え、行動できるようにもなってきましたね」
Q.最近の息子さんの様子はいかがですか。
川口真目さん「学校では、信頼できる先生と出会い、ほぼ毎日登校しています。また、フリースクールでは、経営を学ぶ授業に参加したり、農業を体験する合宿に参加したりするようにもなりました。不登校の経験は大変でしたが、『みんなと違っても、親や周囲の人が受け止めてくれる』と息子が理解してからは、自発的に動いてくれることが増えましたね」
Q.読者の中にも、今まさにお子さんの不登校に悩んでいる人がいると思います。皆さんに向けて、アドバイスやエールをお願いします。
川口真目さん「日本の小中学校における不登校児童生徒は、約30万人といわれていますが、不登校に対する世間の目は思っている以上に冷たいですし、理解も広くありません。
子どもが不登校になってしまうことは、親としてとてもつらいものです。自分のことならともかく、子どものこととなるとさらにうまくいきません。もどかしい思いでいっぱいな方もいるかと思いますが、不登校の改善に『これをしたらうまくいく!』というものはなく、傷付きながらも試行錯誤を繰り返して、親子で一緒に見つけていくしかないと思うんです…。ですが、そのくらい大変なことだからこそ、不登校と向き合った先にある『本当に大切なこと』が見えてきます。
私たちは知らず知らずのうちに、親や学校から『学校に行かなくては、いい成績でなければ、いい会社で働かなければ幸せになれない』という考え方を教えられてきました。しかし、本当にそうでしょうか。幸せの形は人それぞれ違い、自分で見つけるものだと思うんです。
だから、『子どもが不登校だから、親は幸せになってはいけない』『不登校だから、子どもは楽しんではいけない』なんて思う必要はありません。大切なのは、『子どもが不登校でも、楽しんでいいし、幸せになっていい』ということ。その考え方を自分に許してあげつつ、親は子どものこれからを見守ってあげられるといいのかなと思います」
Q.漫画「子どもが不登校になったので、いろんな人に頼ってみた。」について、どのような意見が寄せられていますか。
川口真目さん「子どもの不登校で悩んでいらっしゃる人から『共感しました』という声や、学校関係者の方から『参考になります』という声を頂きました。少しでも、悩める皆さんのお役に立てていましたら幸いです。
また、私のnoteには、Instagramに投稿していないカットを含めた『完全版』を公開しています。Instagramでは伝えきれなかった私の葛藤や不登校に対する思いなどを表現していますので、そちらもぜひご覧ください」
オトナンサー編集部
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