年末年始で“暴飲暴食” 胃腸のむかつき、腹痛…実は危険な病気かも? 専門医に聞く“整腸の方法”
オトナンサー / 2025年1月6日 6時10分
年末年始につい食べ物を食べ過ぎたり、お酒を飲み過ぎたりしたことで、休み明けに胃腸の調子が悪い人は多いと思います。胃腸の不調を放置した場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。年末年始に酷使した胃腸をいたわるには、どのような取り組みが求められるのでしょうか。
胃腸の調子が悪いときの対処法のほか、胃腸の調子を整えるポイントなどについて、大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック(大阪市北区)外科部長で、消化器外科専門医の所為然さんに聞きました。
■食中毒の急激な変化で胃腸が不調に
Q.年末年始の休み明けに胃腸の調子が悪くなることがあります。どのような原因が考えられるのでしょうか。
所さん「年末年始の休暇中は、普段の生活リズムが大きく変化することが多いものです。夜更かしをしたり、食事の時間が不規則になったりすることで、体内時計が乱れてしまいます。また、普段より豪華な食事やお酒を楽しむ機会も増えるため、胃腸への負担が重なっていきます。
特に大きな原因となるのが、食生活の急激な変化です。普段より食べる量を増やしたり、普段は控えめな脂っこい料理を多めに食べたり、お酒を多めに飲んだりすることで、胃腸への負担が一気に大きくなります。さらに、夜遅い時間までの飲食も、胃腸の働きを乱す原因となります。
加えて、休暇明けに向けての精神的なストレスも、胃腸の調子に影響を与えることがあります。人間の胃腸は、精神状態と密接に関係していることが知られています。仕事や学校への復帰を控えた緊張感や不安感が、胃腸の不調として現れることも少なくありません」
Q.年末年始の休み明けに胃腸の調子が悪いときは、どのように対処すべきなのでしょうか。
所さん「胃腸の調子が悪くなったときは、まずは胃腸を休ませることが大切です。具体的には、食事の量を一時的に減らし、消化の良いものを中心に摂取することをお勧めします。温かいおかゆや煮込みうどん、スープなど、胃腸への負担が少ないものから食べ始めていきましょう。
水分補給も重要です。胃腸の調子が悪いと、水分が不足しがちです。常温のさゆやお茶を少しずつ飲むようにしましょう。冷たい飲み物は胃腸への刺激となる可能性があるので、避けた方が無難です。
また、無理に動き回るのではなく、十分な休息を取ることも大切です。横になって休むことで、胃腸の血行も良くなり、回復を促すことができます。規則正しい生活リズムを意識し、十分な睡眠時間を確保することも、胃腸の回復に役立ちます」
Q.胃腸の不調が続く場合、何らかの病気の可能性はあるのでしょうか。受診の目安について教えてください。
所さん「胃腸の不調が続く場合、さまざまな病気の可能性を考える必要があります。特に次のような症状がある場合は、できるだけ早めに医療機関を受診することをお勧めします」
■強い腹痛、吐血、下血
まず、強い腹痛が続く場合や、吐血、下血がある場合は、すぐに受診が必要です。これらの症状は、消化性潰瘍や胃炎などの重症化のサインかもしれません。
■38度以上の発熱、重度の脱水症状、食事が取れない
38度以上の発熱が続く場合や、重度の脱水症状、まったく食事が取れない状態が続く場合も、早急な受診が必要です。
特に注意が必要な症状として、急性虫垂炎と急性胆のう炎についてお話しします。急性虫垂炎は、始めに心窩部(しんかぶ)と呼ばれるみぞおちの辺りに痛みを感じ、その後、その痛みが右下腹部に移動していくのが特徴です。この場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
また、急性胆のう炎は、脂っこい食事の後に右わき腹(右季肋部)に痛みが出現し、吐き気を伴うことが特徴です。年末年始は普段より脂っこい食事を取る機会が増えるため、特に注意が必要です。
さらに、1週間以上にわたって胃部の不快感や軽い腹痛が続く場合、食欲不振が続く場合、原因不明の体重減少がある場合なども、医療機関での検査をお勧めします。これらの症状は、慢性胃炎や過敏性腸症候群、その他の消化器系の病気のサインである可能性があります。
Q.胃腸の不調を放置した場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。
所さん「胃腸の不調を我慢することは、絶対にお勧めできません。消化器の病気による痛みには波があることが多く、一時的に症状が落ち着いたからといって、安心して様子を見るのは危険です。いったん症状が改善したように感じても、その後急激に悪化する可能性があります。
特に年末年始に『実家に帰省していてかかりつけ医に行けない』『診療している医療機関が少ない』といった理由で受診をためらう人が多くいらっしゃいます。実際、救急外来では1月3日や4日になって、本来ならもっと早く受診すべきだった重症の患者さんが救急車で運ばれてくることが少なくありません。
短期的には症状の悪化や脱水、栄養不足などのリスクがあります。これらは日常生活に支障を来すだけでなく、体力の低下や免疫力の低下にもつながる可能性があります。
長期的には、より深刻な問題につながる可能性があります。例えば、慢性胃炎が進行して消化性潰瘍を引き起こしたり、逆流性食道炎が悪化したりする可能性があります。また、腸の機能が低下することで、過敏性腸症候群などの機能性消化管障害を引き起こすリスクも高まります。
特に強調したいのは、『様子を見よう』という判断が、時として取り返しのつかない事態を招く可能性があるということです。体調の変化を感じたら、むしろ早めに受診することをお勧めします。仕事が始まって忙しくなり、受診をためらわれるかもしれませんが、症状を我慢して重症化してしまうことの方が、ご自身にとってもご家族にとっても大きな負担となります」
■胃腸をいたわるには?
Q.年末年始に食べ過ぎた場合、胃腸をいたわるためにはどのように対処すればよいのでしょうか。
所さん「食べ過ぎてしまった場合は、まず翌日からの食事内容を工夫することが大切です。先述のように消化の良い食事を心掛け、胃腸に優しい食材を選びましょう。例えば、おかゆや煮込みうどん、温野菜、バナナ、ヨーグルトなどがお勧めです。これらの食品は消化が良く、胃腸への負担が少ないのが特徴です。
また、発酵食品や食物繊維が豊富な野菜、ショウガ、はちみつ、緑茶なども胃腸の調子を整えるのに役立ちます。一方で、からい物や酸っぱい物、カフェイン、アルコール、脂っこい食べ物、揚げ物、生もの、加工食品などは、しばらく控えめにした方が無難です。
食事の取り方も重要です。1回の食事量を控えめにし、よくかんでゆっくり食べることを心掛けましょう。また、食事と食事の間隔を適切に取り、特に夜遅い時間の食事は避けることをお勧めします。
さらに、規則正しい生活リズムを保ち、適度な運動を心掛け、十分な睡眠を取ることも、胃腸の回復を助けます。ストレス管理も大切で、リラックスできる時間を確保することで、胃腸の働きも安定してきます。
このように、年末年始の食生活の乱れは避けられないものですが、意識的に胃腸をいたわる工夫をすることで、不調を最小限に抑えることができます。体調の変化に気付いたら早めの対応を心掛け、必要に応じて医療機関を受診することをお勧めします」
オトナンサー編集部
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