【成人式】新成人による進行妨害・暴力はどんな罪? 18歳のケースも 弁護士が解説
オトナンサー / 2025年1月13日 6時10分
1月13日は「成人の日」です。13日と前日の12日を中心に、各地の自治体で「成人式」(はたちの集い)が開かれます。民法改正により、2022年4月1日に成人年齢が20歳から18歳に引き下げられ、自治体によっては18歳での成人式を執り行う地域もあるようです。そんな成人式ですが、例年、一部の新成人が大騒ぎして式典の進行を妨げたり、関係者に暴力を振るったりするなどし、中には逮捕されるケースもあります。そこで、成人式を巡る法的問題について、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
■式典の妨害は威力業務妨害で「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」 公務執行妨害も
Q.市区町村が主催する成人式で、新成人が式典の進行を妨げた場合、どのような罪に問われる可能性がありますか。
佐藤さん「大人数で押しかけたり、怒号を発したりして、式典の進行を妨げた場合、威力業務妨害罪に問われる可能性があります。威力業務妨害罪の法定刑は『3年以下の懲役または50万円以下の罰金』です(刑法234条、233条)」
Q.では、ステージに上がるなどの行為で、警備員や市町村職員、警察官の制止を振り切ろうとした場合、罪に問われる可能性はありますか。
佐藤さん「民間の警備員の制止を振り切り、その業務を妨害した場合、前述の威力業務妨害罪に問われる可能性があります。
一方、市町村職員や警察官など、公務員が相手の場合、公務執行妨害罪に問われる可能性があります。公務執行妨害罪の法定刑は『3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金』です(刑法95条1項)」
Q.多くの成人式は「その年度に20歳になる人」を対象にしています。1、2、3月と早生まれの人の多くは、19歳で式典に参加することになります。また、18歳で式に参加する人もいます。18歳・19歳の新成人が前述の罪を犯した場合、20歳の新成人との違いはあるのでしょうか。
佐藤さん「違いがあります。20歳の場合は通常の刑事事件として扱われますが、18・19歳の場合は少年法の適用があります。少年法は20歳に満たない者に適用されるからです(少年法2条)。
少年法の適用があるため、18・19歳の事件は家庭裁判所に送られ、家庭裁判所が処分を決定します。家庭裁判所が保護処分(少年院送致、保護観察など)の決定をすれば、その処分を受けながら更生を目指すことになります。一方、家庭裁判所が刑罰を科すべきと判断した場合は、検察官送致(逆送)の決定がなされ、逆送後は20歳以上の者と原則同様に取り扱われます。18・19歳は『特定少年』とされ、検察官により起訴されれば、実名報道が解禁され、実名や写真等の報道がなされる可能性もあります。
なお、18・19歳の場合、法定刑の下限が1年以上の懲役・禁錮にあたる罪の事件などについて、家庭裁判所は原則逆送することになっています。前述の威力業務妨害罪や公務執行妨害罪の法定刑の下限は1月であるため(刑法12条、13条)、原則逆送事件にはあたりません」
Q.新成人が暴れたことで式典が中止、もしくは開けなくなった場合、自治体は暴れた新成人に対し、賠償請求や慰謝料の請求はできますか。
佐藤さん「新成人が暴れたことで、式典が一時中断されることはありますが、中止、もしくは開けなくなる事案はほとんどないように思います。式典の継続・開催が危険だと判断されるほどの重大な問題を起こし、それにより自治体側に損害を生じさせたのであれば、賠償請求が認められることもあり得るでしょう。ただし、自治体に精神的損害が生じることは考えにくく、慰謝料の請求は困難かと思います」
Q.新成人が暴れて式典が中止、もしくは開けなくなった場合、ほかの参加者(新成人)は、暴れた新成人に対し、賠償請求や慰謝料の請求はできますか。
佐藤さん「式典が中止または開けなくなったことにより、新成人の参加者達も精神的ショックを受けると思いますが、精神的損害の発生を証明し、裁判所に慰謝料請求を認めてもらうのは難しいように思います。暴れた新成人に殴られ、けがを負ったような場合であれば、治療費や慰謝料などの請求が認められるでしょう」
Q.成人式における代表的な刑事事件を教えてください。
佐藤さん「成人式での逮捕事件は少なくありませんが、例えば、2016年に茨城県水戸市の成人式で、新成人の代表の男性が『誓いの言葉』を述べている最中にステージに乱入し、拡声器で『けんか上等だ』などと叫び、式典の進行を一時中断させたとして、威力業務妨害の容疑で19歳の少年を含む複数人が逮捕された事件があります。
その他、成人式の日に会場周辺を車やバイクで集団暴走する事件も複数起こっており、2022年にも、千葉県山武市の会場周辺を集団暴走したとして、男女22人を道路交通法違反(共同危険行為等の禁止)の疑いなどで摘発(11人逮捕、11人書類送検)した事件がありました。こうした事件ではよくあることですが、容疑者らは『この日だけは大目に見てくれると思った』と供述していました。
人生の節目の成人式、トラブルを起こすことなく、感謝と希望を胸に落ち着いて臨んでほしいと思います」
オトナンサー編集部
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