「口内炎ができる」だけじゃなかった…実は恐ろしい「ビタミンB6」の不足、管理栄養士が“弊害”を解説
オトナンサー / 2025年1月24日 8時10分
健康維持のために必要不可欠である、さまざまな「栄養素」。どの栄養素にも適切な摂取量が定められており、不足時はもちろんのこと、過剰に摂取しても体に悪影響を及ぼすことが知られています。そんな身近な栄養素の摂取量について注意すべきことを、管理栄養士の岸百合恵さんに教えていただきました。今回は「ビタミンB6の不足」です。
■比較的摂取しやすいビタミンだが…
ビタミンB群にはビタミンB1、B2、B6、B12、ビオチン、パントテン酸、ナイアシン、葉酸の8種類があり、このうちビタミンB6はタンパク質や脂質、炭水化物などの栄養素の代謝に大きく関わる水溶性ビタミンです。
ビタミンB6は複数の化合物の総称で、ビタミンB6として働く成分はリドキサール、ピリドキシン、ピリドキサミンの3種類で全て同じ働きです。
ビタミンB6は、約100種類の酵素に対する「補酵素」としての役割を担っており、主に「タンパク質や脂質、炭水化物の代謝をサポートする」「脳の神経機能の維持を助ける」「赤血球に含まれる『ヘモグロビン』を形成する」「免疫機能の働きを正常に保つ」などといった働きをします。
ビタミンB6は、主に肉や魚介などの動物性食品に多く含まれますが、野菜やナッツ類などにも含まれているので、比較的摂取しやすいビタミンです。肉類ではレバーのほかに、鶏むね肉やヒレ肉など脂質の少ない赤身の肉、魚介ではカツオやマグロの赤身、サツマイモなどのイモ類、ブロッコリーやモロヘイヤなどの野菜類、バナナやかんきつ類の果物などに含まれます。
ただし、1食当たりの摂取量を考えると、摂取源としてはそこまで効率的でないものもあるため、1つの摂取源に頼らずバランスよく取ることが大切な栄養素です。
「日本人の食事摂取基準」(2020年版、厚生労働省)によると、ビタミンB6の1日摂取量は成人男性で1日あたり1.4ミリグラム、成人女性で1.1ミリグラムが推奨されています。妊娠中や授乳中では必要量が増すため、妊娠中では1日あたり+0.2ミリグラム、授乳中は+0.3ミリグラムを推奨しています。ビンチョウマグロの刺し身100グラムとバナナ1本(100グラム)で1.32ミリグラムとなり、ほぼクリアできる量です。
また、ビタミンB6の必要量はタンパク質1グラムあたり0.019ミリグラムとされ、タンパク質の摂取量によって変わるのが特徴です。これは、ビタミンB6の働きが主にタンパク質の代謝であるためです。肉や魚には、タンパク質に加えてビタミンB6も含まれるため、動物性の食品をしっかり摂取できる人はそこまで意識する必要はありませんが、タンパク質の必要量が多い人は、ビタミンB6の摂取量も増えることを覚えておきましょう。
■聴覚障害、免疫機能低下も…
では、ビタミンB6の摂取が不足した場合に考えられる弊害、悪影響とはどのようなものかご存知でしょうか。
厚生労働省が行った2019年の「国民健康・栄養調査」において、ビタミンB6の摂取量は1日あたり、男性で平均1.26ミリグラム、女性で平均1.09ミリグラムとなっており、成人の推奨量で考えると、男女ともに少し足りません。ビタミンB6が単独で不足することはほとんどなく、一般的には、他のビタミンB群の不足と同時に起こるとされています。
ビタミンB6が不足すると、皮膚炎、舌炎、口内炎、口角症など皮膚や粘膜のトラブルが起こりやすくなります。また、ビタミンB6はヘモグロビンの合成に関わる栄養素でもあるため、貧血の原因となる可能性もあります。また、聴覚障害や情緒不安定、免疫機能低下につながる場合もあります。
ビタミンB6が不足する理由としては、ビタミンB6を含む食べ物を取らない食生活である場合の他に、アルコール摂取量が多い場合もあります。アルコールはビタミンの代謝を妨げ、ビタミンB6と酵素との結合も妨害するためです。また、抗生物質の長期投与、降圧剤や抗リウマチ済を服用している人などでも欠乏症になる恐れが指摘されており、注意が必要です。
ビタミンB6は加熱や光に弱く、水に溶ける性質です。そのため、加熱済み・調理済みの加工品や冷凍食品よりも、生で新鮮な食材を選択しましょう。調理での損失を防ぐためには、ゆでる調理法でなく、レンジを活用したり、蒸し料理で摂取したりするのがおすすめです。
また、植物性よりも動物性の食品の方が、利用効率は高いといわれているので、献立でのメインのおかずは肉や魚を選ぶとよいでしょう。野菜や果物は植物性ですが、生で食べることで栄養価の損失はないため、足りない分を補う食材としてぴったりです。
ビタミンB6は幅広い食材に含まれるため、偏りなく摂取すれば必要量を充足させることはそこまで難しくないはずですが、現代では少し不足している状況です。先述したように、ビタミンB6が不足するときは、他のビタミンB群と同時に不足するといわれているので、ビタミンB6だけでなく普段から、食事全体のバランスを整えていくことが大切ですね。
オトナンサー編集部
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