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埼玉・八潮 トラック運転手が行方不明も… 「道路陥没」事故におけるケガ 法的責任の所在は? 過去には“賠償請求却下”の判例も

オトナンサー / 2025年2月7日 6時10分

救助活動などが行われている、埼玉県八潮市の道路陥没現場(2月1日、時事通信フォト)

 埼玉県八潮市の県道交差点で1月28日、道路が陥没し、走行中のトラック1台が地中に転落する事故が発生しました。この事故は下水道管の破損が原因とみられています。転落したトラックには70代の男性運転手が取り残されましたが、穴が崩落したり、穴の中に水が流入したりするなどして、救助が難航しています。

 そんな中、埼玉県の大野元裕知事が2月5日、現場から100~200メートルほど離れた下水道管の中から、トラックの運転席部分とみられるものが見つかったことを明らかにしました。ただ、男性運転手の姿は確認できず、現在も安否は不明です。

 もし車や自転車、徒歩などで移動中に道路が陥没し、地中に転落した人がけがを負ったり、亡くなったりした場合、法的責任はどうなるのでしょうか。けがをした本人やその家族は賠償を請求できるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の弁護士・佐藤みのりさんが解説します。

■道路の管理者に賠償請求できる可能性

 もし車や自転車、徒歩などで移動中に道路が陥没し、地中に転落した人がけがを負ったり、亡くなったりしたとします。このような道路の陥没事故に巻き込まれた場合、陥没の原因にもよりますが、基本的には道路の管理者に対して、法的責任を問うことができます。従って、道路が公道の場合は、管理している国や自治体に対して、私道の場合は、その所有者に対して法的責任を追及することになります。

 公道の場合の責任について、国家賠償法2条1項は「道路…の設置または管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国または公共団体は、これを賠償する責に任ずる」と定めています。「瑕疵(かし)があった」とは、道路が通常有すべき安全性を欠いている状態をいい、道路の構造、用法、場所的環境、利用状況など、諸般の事情を総合考慮して個別具体的に判断されます。

 道路が陥没した場合、一般的には、道路が通常有すべき安全性を欠いており、人に危害が及ぶ危険性のある状態と考えられ、「瑕疵」が認められる可能性が高いでしょう。

 私道の場合の責任について、民法717条1項は「土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」と定めています。

 私道の所有者は、第三者に損害を与えないよう、私道を維持、管理する責任があります。一般の交通の用に供されている私道が陥没し、通行人が死傷したのだとすると、私道の所有者が法的責任を負う可能性が高いと考えられます。

 以上の内容を踏まえると、道路の陥没事故に巻き込まれたことが原因で死傷した場合、被害者側は道路の管理者に対して、治療費や慰謝料などの損害賠償請求をすることが可能です。

 ただし、道路の陥没事故に巻き込まれてけがを負っても賠償請求が認められなかった事案もあります。例えば、バイクで道路を走行していた人が、陥没した穴に落下して重傷を負い、道路の管理者である町に対し、賠償請求した事案があります。

 この陥没は、道路下に埋設されている農業用水路(管理者はA)に亀裂が入り、農業用水路の水が地中に流れ出たことによって発生したものでした。また、町は、事故当日の朝、住民からの通報により陥没の事実を知り、出勤してきた職員が直ちに現場に赴き、通行止めフェンスを設置しようとしていましたが、設置する少し前に、事故が発生してしまったという事情があります(津地方裁判所2013年年3月29日判決)

 裁判所は、道路の陥没は、バイクが落下するほどの大きさであって、 陥没後は死傷などの事故の発生する危険性が客観的に存在していたものと認めましたが、結果的に、町の賠償責任を否定しました。

 なぜなら、本件の農業用水路はAが管理しているものであるから、農業用水路に何らかの損壊が生じた場合を想定し、町に何らかの義務があったとは認められないこと、町は陥没が生じた場合に対応できる体制を取っていたことなどが考慮されたからです。

 このように、道路の陥没事故に巻き込まれてけがを負っても、必ずしも賠償請求が認められるわけではありませんが、被害に遭った場合、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

オトナンサー編集部

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