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「30歳過ぎても親の世話に…」 罪悪感でうつ病悪化したひきこもり男性 窮地を救った、社労士の“逆転の一手”

オトナンサー / 2025年2月10日 9時10分

障害年金を受給している人が、症状が悪化したときにすべきことは?

 筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気や障害で就労が困難なひきこもりの人などを対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。

 浜田さんによると、障害年金を受給している人の中には、その後、障害状態が悪化してしまうことがあるといいます。その際、障害状態が悪化したことを証明することで障害年金の等級が上がり、年金額が増額するケースもあるということです。では、障害状態が悪化してしまった場合、どのような請求をすればよいのでしょうか。浜田さんが、うつ病の息子がいる母親をモデルに解説します。

■20代の頃にうつ病で退職した息子

「ひきこもりの息子のうつ病が悪化してしまい、再就職の見通しが立ちません。一体どうすればよいのでしょうか」

 ある日、そのような相談を持ちかけてきた母親から、私は事情を伺いました。

 母親によると、現在、ひきこもっているのは31歳の戸田耕平さん(仮名)です。耕平さんは、会社員だった20代の頃にストレスが原因でうつ病を発症。休職後、自宅で様子を見ていましたが、結局、職場に復帰することができず、そのまま退職しました。退職後は実家に戻り、両親と一緒に生活をするようになったということです。

 実家に戻った後も抑うつ状態は改善せず、外出することもめっきり減り、ひきこもりのような生活を送るようになってしまったそうです。

 その後、主治医の勧めで障害年金を請求し、現在は障害厚生年金の3級を受給しています。障害厚生年金の3級は、月額に換算すると5万1000円(2024年度の金額)。仕事をしていない耕平さんにとって障害年金の収入はありがたいのですが、この金額では不安が募ります。そのため、一時期、耕平さんは再就職をすることも考えたようですが、なかなかうまくいかなかったそうです。

「30歳を過ぎても仕事もできずに親の世話になっている」

「貯蓄もほとんどできず将来が見通せない」

 あまりのふがいなさに焦りや不安の気持ちがどんどん膨らんでしまい、耕平さんのうつ病は悪化してしまいました。

 その後、「気力が湧かず、何をするのもしんどい」「おっくうで入浴や着替えをするのも一苦労」「テレビを見たり、本を読んだりしても楽しいと思えない」といった状態に陥ったほか、最近では記憶力や集中力が低下し、母親に何度も同じ質問を繰り返してしまうそうです。

 一通り話し終えた母親は、大きなため息をつきました。

「息子が再就職をすることは当分難しそうです。他に何か良い方法はあるのでしょうか」

 母親は不安そうな表情でそう言いました。

■障害状態が重くなった場合は「額改定請求」の検討を

 耕平さんはうつ病が悪化してしまったとのことなので、私は額改定請求の説明をしました。

「障害年金を受給している人の障害状態が重くなったとき、請求をすることにより障害年金の等級が変更され、年金額が増額になることがあります。この請求を『額改定請求』といいます。ただし、額改定請求はいつでもできるわけではありません。原則として、次の(1)または(2)の日から1年を経過している必要があります」

(1)障害年金を受ける権利が発生した日(初回の請求で障害年金が認められた日)

(2)障害の程度の診査を受けた日(障害年金の更新が認められた日)

 母親によると、耕平さんは(1)と(2)、両方の日から1年以上経過しているとのことだったので、すぐにでも額改定請求ができることが分かりました。

 すると、母親が質問しました。

「もし額改定請求が認められたら、息子の障害年金はいくらになるのでしょうか」

「障害厚生年金は、当時の給与や賞与を基に計算されるので、今ここで正確な金額を出すことは難しいです。ですが、大まかな金額であれば試算することは可能です」

 私はそう言い、母親から耕平さんの当時の平均年収を聞いてみました。平均年収は、おおよそ300万円とのことだったので、その金額を基に試算しました。

■仮に耕平さんが額改定請求で障害厚生年金の2級に該当した場合
障害厚生年金 約3万4000円
障害基礎年金 6万8000円
障害年金生活者支援給付金 5310円
合計 10万7310円
※いずれも月額換算で2024年度の金額。
※障害厚生年金の2級に該当すると、障害基礎年金および障害年金生活者支援給付金も新たに受給できるようになる。

 金額を確認した母親が次のように尋ねてきました。

「月10万円になるのであれば、息子もかなり安心できると思います。息子は額改定請求で障害厚生年金の2級になりそうなのでしょうか」

「2級に該当するかどうかは、医師の作成する診断書の記載内容によります。こちら側でできることは、耕平さんの現在の日常生活の困難さを医師に伝えることです。伝え方は口頭でもよいのですが、文書を渡す方がより効果的でしょう。なお、耕平さんの場合、次の3つの書類を日本年金機構へ提出する必要があります」

【必要な書類】
・診断書
・障害給付 額改定請求書
・年金生活者支援給付金請求書

 母親はさらに疑問を口にしました。

「提出書類は意外と少ないのですね。もし額改定請求が認められたら、息子はいつから年金が増額になるのでしょうか」

「仮に額改定請求が認められた場合、請求した月の翌月分から年金額が変更になります。よって、速やかに耕平さんの文書を作成し、医師に診断書の作成依頼をするようにしましょう。耕平さんの同意が得られれば、文書は私が作成することもできます」

「はい、ぜひお願いしたいと思います。息子にも伝えてみます」

 母親との面談後、耕平さんの同意を得た私は、速やかに書類をそろえ、額改定請求を完了させました。

 額改定請求から約3カ月が過ぎた頃、母親から「無事に障害厚生年金の2級の通知が届いた」という連絡がありました。

「おかげさまで月10万円くらいの収入が得られるようになりました。増額した年金は、将来のために貯蓄をしていくことにしました。貯蓄ができる状態になり、息子も少しだけお金の不安から解放されたようです」

 母親の報告を聞いて、私も一安心できました。

社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也

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