抑うつ、不安…症状が似ている「適応障害」「うつ病」 見分けは困難? 精神科医が教える“大きな違い”
オトナンサー / 2025年2月12日 20時10分
「適応障害」という病名を聞いたことがある人は多いと思います。そもそも、適応障害とはどのような病気なのでしょうか。うつ病と症状が似ているといわれていますが、何が違うのでしょうか。両者の自殺に至るリスクの違いや対処法なども含め、医療法人社団ユーアイエメリー会(埼玉県久喜市)理事長で、精神科医の鈴木枝里子さんが解説します。
■適応障害は「特定のストレス要因」が原因で発症
適応障害とは、職場のトラブルや家庭の問題、失業などの特定のストレスにうまく対応できないことで、感情面や行動面で問題が現れる病気です。例えば、感情面では「抑うつ気分になる」「不安に襲われる」「怒りが爆発する」「絶望感に襲われる」などの症状が出るほか、行動面では「欠勤、欠席」「社会的なひきこもり」「過剰な飲酒や喫煙」「衝動的な行動」といった症状が出ます。
適応障害の原因としては、次の3つのストレスが関与します。
(1)転勤、昇進、パワハラなど職場の環境変化
(2)離婚、介護負担など家庭内の問題
(3)引っ越しや学校の卒業など、人生の大きな変化
これらのストレスに対する反応は個人差が大きく、「その人にとって重大な出来事」であれば適応障害を発症することがあります。
適応障害の症状は「特定の状況や場面」で悪化することが多いため、その場から離れると普通に活動できる場合があります。例えば、職場でのストレスが原因で適応障害を発症した人の場合、休日または友人と過ごす間は元気に見えることがあり、一緒に過ごしている人は気付きにくいことがあるのです。
適応障害の治療の基本は、「ストレス源を特定し、それに対処する」ことです。主に「心理療法(カウンセリング)」や「薬物療法」で治療を行います。
心理療法では、ストレスへの対処方法を学びます。認知行動療法(CBT)などが効果的です。また、睡眠障害や不安が強い場合、抗不安薬や睡眠薬が一時的に使用されることがあります。
適応障害は比較的治りやすい病気とされ、通常は半年以内に改善します。ただし、ストレス源が解消されない場合や、重症化した場合は長期化することもあります。
ここで、適応障害とうつ病の相違点、共通点について解説します。
【適応障害とうつ病の相違点】
(1)発症のきっかけ
適応障害は「特定のストレス要因」によって引き起こされることが多いです。一方、うつ病は明確なストレスがなくても発症することがあります。
(2)症状の経過
適応障害はストレス要因が解消されると症状が改善する傾向にありますが、うつ病はストレスがなくなっても症状が持続する場合があります。
【適応障害とうつ病の共通点】
適応障害、うつ病ともに、抑うつ感や不安感、意欲の低下など、似た症状を示します。また、こうした症状が原因で日常生活や仕事に支障を来します。
適応障害、うつ病はともに自殺のリスクがありますが、どちらかと言うとうつ病の方が自殺に至る可能性が高いです。
適応障害では「現実的な解決が難しいストレス」が原因で一時的に自殺念慮を抱くことがありますが、ストレスが解消されると自殺のリスクは低下します。一方、うつ病では「長期的な絶望感」や「自己否定感」が強く、自殺のリスクが高まりやすいです。
実際は、一般の人が適応障害とうつ病を正確に見分けるのは難しいケースが多いです。両者はともに抑うつや不安感、意欲の低下などの症状を示すため、症状だけで区別するのは困難だからです。
ただし、適応障害やうつ病に該当するかを判断する上で、先述の「発症のきっかけ」「症状の経過」が参考になります。もし心当たりがある場合は医療機関を受診するのをお勧めします。
もし家族や会社の同僚、友人など、身近な人が適応障害と診断された場合、「話を聞く」「無理をさせない」「専門家への相談を勧める」の3点が重要になるでしょう。
例えば、解決策を押し付けるのではなく、「つらかったね」と共感する姿勢が大切です。また、本人のペースで休める環境を整えるとともに、専門の病院やカウンセラーに一度相談し、本人と病院またはカウンセラーの間をつなぐサポートをしましょう。
最後に、適応障害を予防する方法として、次の3つの取り組みを提案します。ぜひ日頃から心掛けてみてください。
(1)ストレスをためずに、早めに発散する
適度な運動や趣味、リラクゼーションを取り入れます。
(2)環境を調整する
必要な場合は職場や家庭の環境を改善する努力をしましょう。
(3)相談できる相手を持つ
家族や友人、同僚と良好な関係を築き、困ったときに相談できる場を持つことが予防になります。
オトナンサー編集部
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