台風19号でも発生…被災者の弱みにつけ込む窃盗や詐欺、悪質性で刑は重くなる?

オトナンサー / 2019年10月22日 8時10分

 台風19号の豪雨による河川の氾濫で、長野県や茨城県などで大きな被害が発生、自宅が浸水したり損壊したりした住人は、自宅を離れて避難生活を送っています。そうした中、不在になった住宅に窃盗目的で侵入したり、災害に便乗して詐欺行為を行ったりする、いわゆる「火事場泥棒」の発生が懸念されています。実際に水戸市では、水が引いた住宅が空き巣被害に遭ったという報道があります。

 被災者の傷口に塩を塗るような火事場泥棒ですが、こうした犯罪の容疑者が逮捕・起訴されたとき、刑の軽重に悪質性は加味されるのでしょうか。グラディアトル法律事務所の井上圭章弁護士に聞きました。

■犯罪の行為態様や結果などを考慮

Q.自然災害の被災地で窃盗や詐欺などの犯罪行為を働いて逮捕・起訴された場合、一般的な窃盗や詐欺などよりも罪が重くなる可能性はあるのでしょうか。

井上さん「重くなる可能性はあります。刑法では、窃盗罪は10年以下の懲役、または50万円以下の罰金、詐欺罪は10年以下の懲役と定められています。なお、10年以下の懲役の場合、下限は1カ月となります。刑法では、刑について幅のある定め方をしており、具体的に懲役何年にするかについては、犯罪の行為態様や結果、動機、犯罪に至る経緯、社会的影響などの諸事情を総合的に判断して決めることとなります。

例えば、住人のいない間に家の中に入って、引き出しの中にあった10万円を盗んだというケースでは、平常時の空き巣も火事場泥棒も行った行動や生じた結果についてはほぼ同じといえそうです。しかし、火事場泥棒の場合、災害などで住人が混乱しているという状況をあえて利用する点で、反社会性や私利私欲性が強いと考えられ、このような事情が考慮される場合、平常時の空き巣に比べ罪が重くなる可能性があります」

Q.東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨でも、被災地で窃盗が多発したとの報道がありました。こうした火事場泥棒の容疑者が逮捕され、有罪になった実例を教えてください。また、それは通常の窃盗と比べて、刑の軽重はどうだったのでしょうか。

井上さん「熊本地震の際、被災地の空き家から約70万円を盗んだという窃盗事件で、懲役2年4月、執行猶予3年の判決が言い渡された例がありました。単純に比較できるものではありませんが、例えば、知人宅の腕時計(時価約70万円相当)を盗んだというケース(災害とは関係ない)で懲役1年2月、執行猶予5年が言い渡されるなどしていることと比較すると、火事場泥棒という点が考慮され、責任が重いと判断されたと評価できるかもしれません」

Q.熊本地震の被災地で窃盗が多発したことから、被災地での犯罪を厳罰化するための法改正を求める動きが生まれました。法改正は行われたのでしょうか。

井上さん「残念ながら現在のところ、厳罰化のための法改正は行われていません。法改正が行われなかった背景はさまざまですが、刑罰を与えることの重大性と刑法の規定の仕方がその背景にあると考えられます。言うまでもなく、被災地での犯罪は決して許されるものではありませんが、国が国民に対して刑罰を加えるということは、大きな人権制約を伴うもので、できる限り避けるべきと考えられます。

他方、刑法では、刑罰についてある程度の幅を持たせた規定をしており、その幅の中で十分対応できることが多いです。例えば、窃盗罪のケースでは、最高で10年の懲役刑を科すことができ、罰金刑や懲役2、3年の執行猶予付き判決も多いことからすると、被災地での犯罪という事情を量刑上考慮し、初犯であっても実刑を言い渡したり、5、6年の実刑としたりするなどして対応することができると思われます。このような背景もあり、厳罰化のための法改正は行われなかったのではないでしょうか」

Q.台風19号では、都市部の一級河川が氾濫して避難しなければならないなど、人ごととは思えなかった人も多いと思います。自宅が被災して不在にしないといけないとき、窃盗や詐欺の被害を防ぐためにできることは何でしょうか。

井上さん「災害が迫った状況では、命優先の行動を取るべきことは言うまでもありません。そのため、私たちができることとしては、台風や地震といった自然災害の際には、戸締まりなどを確認する暇もなく避難所に逃げるなどの行動を取る必要があることを前提に、日頃から、銀行や貸金庫の利用、自宅の貴重品は金庫に入れておくといった防犯行動をしつつ、防犯意識を高めるといったことでしょう」

オトナンサー編集部

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