子どもの障害は「個性」と言う人への違和感 「障害」と認めることが配慮生む

オトナンサー / 2019年11月17日 6時10分

 私の息子は知的障害を伴う自閉症児です。パニックや自傷行為で大変な思いをしながら子育てをしていたとき、「誰でも得手・不得手があり、凹凸(おうとつ)があるのが人間なのだから、障害ではなく“個性”の一つと考えればいいんじゃないの」と励まされたことが何度かあります。私は「“個性”で片付けないで」と心の中で叫んでいました。

 わが子の障害を認めたくない親御さんが「他にも似たような子はたくさんいるじゃないか。うちの子は個性的なだけ」「障害なんかじゃない! もっと厳しくすれば集団行動を取れるようになる」と言っているのを耳にすることもあります。しかし、私は「個性と障害は別物だ」と思っています。

■「個性の一つ」は耳に心地よいが…

 幼稚園や保育園では、「個性」が語られる場面がしばしばみられます。

 ある母親はわが子の行動を見て「もしかして発達障害なのかも」と不安になっていたとき、担任から「個性の一つですよ。長い目で見ましょう」と言われ、その瞬間は少しホッとして帰宅しました。しかし、今後の対応について明確にされることもなく、見えないトンネルに入ったように感じてしまいました。

「個性の一つ」という言葉は耳に心地よいかもしれませんが、もし、障害であれば、その言葉は一時しのぎにすぎず、そのまま放っておくと苦労するのは子ども本人です。障害を早期に発見し、早い段階から支援をしていくことにより、ハンディを持ちながらも過ごしやすい毎日を送ることができます。

 一方で、このようなパターンもあります。ある親御さんが個人面談のとき、「うちの子は発達障害があるので、特別な配慮をしてほしい」と申し出たところ、担任から「それは個性の一つですよ。どの子も性格が異なり、個性があるのですから、○○君だけ特別扱いはできませんよ」と拒否されてしまいました。「個性」という言葉が、「配慮をしない」理由として使われているケースです。

■そもそも、個性は万人に存在する

 障害のある子どもを持つ親に対して、第三者が「障害のある子は天使よね」と「障害そのもの=性格」のような言い方をしているのをよく耳にします。しかし、実際は、そのような“型にはまった”ものではありません。

 ダウン症児、自閉症児などの「障害名」ごとに分類したとき、「人懐っこい」「友達と関わっても一方的」など、ある程度共通する先天的な特性は確かにあります。そこへ、両親から受け取った気質と育った家庭環境の中で「穏やかな」「意地悪」などの個性が生まれます。健常児にも、さまざまな子どもがいるわけで、それは障害児も同じです。

 障害が個性ならば、視覚障害のある人や車椅子の人も「個性」ということになってしまいます。障害を個性とすることはすなわち、「性格の一つである」とみなすことです。そうなると、子どもはそれぞれ性格が違うのですから、その子だけの特別な配慮がされないことを意味し、障害者差別解消法による合理的配慮も受けられなくなります。障害によって、本人が明らかに健常者の生活パターンで生きづらいのならば、「障害は障害」と認め、特別なサポートが必要になります。

 例えば、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもに対する特別な配慮を挙げてみます。聴覚過敏がある子どもで、「幼稚園で流れる音楽が耐えられない」「運動会で使われるピストルの音が怖い」といった場合は、音が聞こえない場所に避難させる、耳栓やイヤーマフ(耳全体を覆う防音保護具)を着けさせるなどの方法があります。皮膚の感覚過敏によって、園で粘土やのりが触れない子どもには、別の制作道具を与えることが有効です。

 ほかに、次のような配慮が考えられます。

・特定の服しか着られない→特定の服のみの着用でも問題ないとする
・味覚過敏があり、ひどい偏食がある→給食を「残さず食べよう」ではなく、食べられるものだけを食べてもよいとする
・決まった電車や道順でないと不安になる→本人が安心できるルートで外出する
・集団行動が取れない→他の子どもと同じ行動をすることを強要しない

 また、発達障害の一つである限局性学習症(学習障害・LD)の子どもに対しては、通常の教科書を読むことが難しい子どものためのデジタル教科書「マルチメディアデイジー教科書」を使ったり、読んでいる行に集中しやすくするための補助具「リーディングスリット」を使ったりするなどの配慮もあります。注意欠陥多動性障害(ADHD)の子どもには、ついたてを立てて集中できる環境で学習させるなどの配慮も考えられるでしょう。

 これらを「あなただけ特別扱いすることはできない」と、一般のルール上認めることなく、「みんなと同じようにすること」が暗黙の了解のようになってしまうのは、本人にとって酷なことです。どうぞ、個性という言葉でひとくくりにせず、毎日快適に生活できる環境を準備してあげてください。

子育て本著者・講演家 立石美津子

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