デヴィ夫人、大統領夫人の座を射止めた「嫉妬」の燃料化テクニック
OTONA SALONE / 2019年7月26日 21時0分
販売のお仕事は大変だなぁと思うことがあります。
新宿伊勢丹のフレグランス売り場で、30代くらいの女性が「オトコする香水が欲しい」と販売員さんに話しかけていました。売り場でよく繰り広げられるシーンなのかもしれません。が、私はこう思ったのです。
こんなざっくりしたお願いじゃ、お店の人は困るであろう。
プロの接客に見た「コスパのいいお願い」
しかし、販売員さんはさすがプロ。「男性が女性へのプレゼントとして、お求めになるのはこちらです」といった具合に接客していました。
私なら「そんなの人それぞれじゃないですかね」と言って一日でクビになると思います。
ショッピングは夢や高揚した気分を買う部分がありますし、売る側も数字が稼げれば双方ハッピーですから、この二人のやりとりはアリでしょう。
しかし、コミュニケーションとして考えるのなら、足りない部分があるのではないでしょうか。
他人にお願いをするときは、「わかりやすいこと」が基本ではないかと思います。
たとえば「〇〇というお店で××を買ってきて」と言われたら、間違いようはありませんが、「女性ウケするやつ、なんでもいいから買ってきて」と言われると、そんなの人によって違うので、わかりにくい上にコストパフォーマンスが悪いのです。
大統領夫人は、自慢がお好き
これは人生においても、同じではないでしょうか。「こういうことをしてみたい」「こうありたい」という目標が「わかりやすい」人ほど、その目標をクリアしている気がするのです。
たとえば、デヴィ夫人。いわずとしれたインドネシア建国の父、スカルノ大統領の第三夫人で、最近はバラエティーでもおなじみ。彼女の言動を見ていると、「わかりやすい」ことの大切さを感じるのです。
吉本興行のブラック体質が連日ワイドショーをにぎわせていますが、デヴィ夫人が某高級ホテルに預けたロシアンセーブルの高級コートを、ホテル側が破損したとして、民事裁判を起こしていることをご存じでしょうか。
夫人のコメントの一部を紹介しましょう。
床まで届くセーブルのコートというのは、世界にいくつかあるか分からないぐらいまれなもので、ニューヨークから持ってきたばかりで、初めて着たんですね。(中略)皆さまの前で、自慢したかった。
「自慢したかった」というお言葉を聞いて、私は腹を抱えて笑ったのです。今の日本で「自慢したい」とはっきり言える女性が、どれだけいるでしょうか?
SNSにおいてよくみられる匂わせは「自慢したいけれど、それはオトナとしていかがなものか」という欲望と常識が戦った結果、51:49で欲望が買ってしまったときに「偶然、映り込んじゃった」テイでなされるものです。
しかし、夫人ははっきり「自慢したい」とおっしゃっている。どうですか、このわかりやすさ。
いっぽう、「自慢が嫌い」というアノ人は?次ページ
蛭子能収さんは、嫉妬が嫌い。その理由を考えてみる
自慢と言えば、漫画家の蛭子能収サンは「女性自身」(光文社)で連載中の「蛭子能収のゆるゆる人生相談」において、繰り返し「人の幸せは嫉妬の標的になる」という理由で、SNSなどで幸せ自慢はしないほうがいいという堅実なスタンスを貫いています。
「自慢したい」と公言するデヴィ夫人と、「自慢なんてするな」という蛭子派。どちらを選ぶかは、“嫉妬”というものをどう捉えているのかによると思います。
蛭子さんは「やっかみや嫉妬は人として、当たり前の感情」だとし、だからこそ、嫉妬は報復となって返ってくると考えているようです。
それに対し、夫人はかつてバラエティー番組で、「人の視線はアタクシにとってビタミン剤」「嫉妬されることが喜び」と語っていたことがありました。
蛭子さんにとって、嫉妬は厄災の根源であり、その厄災にふりまわされてエネルギーを消耗するのはバカらしいと思っているのでしょうが、夫人にとってはご褒美なのです。
自慢する→嫉妬される→嬉しいので、もっとがんばるといった具合に、自分を高める域まで持っていける人だったのでしょう。
夫人は独身時代から、自分の結婚相手を「権力者」と決めていたそうです。もしかしたら、露骨な表現に眉を顰める人もいるかもしれませんが、「わかりやすい」という意味で最高の目標設定でしょうか。
なぜなら、権力者かどうかは出会いの段階ですぐにわかるから。
その人の内面というものはどこから見るかで変わりますし、内面そのものも年齢によって変化するので、見極めが難しい部分があります。その点、権力者という肩書を重視する場合、初対面の時点でアリかナシかすぐにわかるわけですから、効率的に相手を探すことができるのです。
同様に男性のカネやカオというように、「わかりやすい」部分にこだわるのも、婚活時短のテクニックと言えるでしょう。
夫人がバッシングに負けなかった理由とは……
バラエティー番組では、シンデレラストーリーと紹介されることの多い夫人の人生ですが、実際はそんな甘いものではなかったようです。
「デヴィ・スカルノ自伝」(文藝春秋社)で、夫人は10代後半という若さで、お母さんと弟さんを助けるために高級クラブのホステスとなります。昭和30年代に月収百万というのだから、どれだけ売れていたかわかるというものでしょう。
そのクラブで知り合った商社マンがインドネシアでビジネスをしており、それが大統領との出会いにつながっていくのです。
マスコミは夫人がホステスだったことをかぎつけます。同書で、夫人は「日本の大多数の男は、水商売をしていた女を許さない」と書いていますが、マスコミの夫人へのすさまじいバッシングの理由のひとつは、水商売をする女性への蔑視からだと思います。
日本のマスコミのバッシングに加え、夫人のインドネシアでの生活も過酷だったようです。
インドネシアに渡って、数年は外出もできない愛人でしたし、現地に日本から来て囲われていた”前任者”がいることを知ってしまいます(この女性は自殺しています)。
スカルノは日本人女性と浮気をし、こっそりインドネシア人女性を第四夫人を迎えています。第二夫人からはいじめられます。
フツウの女性なら命を絶ってしまってもおかしくはない。しかし、夫人は負けなかった。それはいじめやバッシングを嫉妬と割り切ることができたからではないでしょうか。
私に嫉妬しているのなら、もっと嫉妬させてやる。こういった具合に、世の中のトラブルを「わかりやすく」解釈することは、一種の強さなのだと気づかされるのでした。
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