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新型コロナウイルスの「初歩的な疑問」に【医師が答える】Q&A11

OTONA SALONE / 2020年2月19日 12時0分

一般社会にも拡大し始め、新たな段階に突入した感のある新型コロナウイルス 。

各企業が通勤ラッシュ時間帯を避ける時差通勤やテレワークを勧めたり、国内で開催のイベントが相次いで自粛されたり、自分の生活とも無関係でなくなってきたように感じる人も少なくないのではないでしょうか。

たくさんの情報が出回る中、私の方に素朴な疑問が寄せられるようになりました。
今回は、Q &A形式で、ウイルスに対する疑問にお答えしたいと思います。

知っておくべきガード法・予防法については、過去の記事をお役立てください

>>新型肺炎から身を守るには?医師が教える「究極シンプルな」ガード法

>>「新型コロナ」医師が勧める正しい対処法とは?

 

Q1.風邪やインフルエンザとの区別はつくの?

A1.症状だけでは見分けがつきません。

この時期「風邪かな」と思っても、実は「新型コロナウイルス 」という可能性は否定できません。
まずは、他人への配慮としても、無理に外出せず、家で安静にすることです。

新型コロナウイルスの典型的な症状は、発熱・咳・倦怠感とされています。
無症状から軽い風邪のような症状、そして強い倦怠感や高熱になるとインフルエンザの症状とも似ています。SARSやMARSよりは少ないものの下痢症状があるケースもあるようです。

唯一、インフルエンザの場合のみ、迅速キットで「インフルエンザ」の診断ができるので鑑別が可能ですが、風邪か新型コロナウイルスかは、一般のクリニックでは診断ができません。
新型コロナウイルス の感染かどうか、迅速な診断が全員にできない現状で、最寄りの保健所の「帰国者・接触者相談センター」に相談する目安は、

  • 風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合
    (※基礎疾患がある場合は症状2日以上で)
  • 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合

Q2.「市中感染」として新たな段階ってどういう意味?

A2.一般社会で普通に生活する中で、どこでどう感染するかわからない段階に入ったということです。

「市中感染」とは、普通に生活する社会の中で、一般生活者に感染が起こることを言います。通勤電車の中、外食、集会への参加など日常の行動の中でウイルスと接触する可能性があります。

街中に出ることで、ウイルスと接するリスクがあることを意味しています。

一方で、病院という限られた空間の中で感染が拡大することを「院内感染」と言います。
新型コロナウイルスは、いずれもが起こっている段階です。

 

Q3.手についたウイルスは皮膚の上で増えるの?

A3.いいえ。増えません。

ウイルスは、自力で増えることができません。
ハッカーのように、人など宿主の細胞に侵入して、その細胞のシステムを乗っ取ることでしか増殖できません。
宿主細胞のメインシステムである核内の遺伝情報をハッキングして、自らの遺伝情報を挿入。そして、宿主の細胞に自らのコピーをどんどん作らせて増殖します。

皮膚の上に付着しているだけでは、ウイルスは増殖できないのです。
手洗い後に手が濡れていても、ウイルスがその湿度によって増殖することはありません。ただし、手の上に拡がりやすくはなりますので、水分を拭き取ることは大切です。
一方で、細菌は、湿度や温度が保たれ、エサがある環境で勝手に増えていきます。

 

Q4.ウイルスって、細菌とは違うの?

A4.ウイルスと細菌は、同じ微生物の仲間ですが、別物です。

ウイルスと細菌は、両方身の回りにたくさんいる微生物の仲間です。
人や動物に悪さをせず、共生している種類もたくさんありますが、一部は病原性であり感染症を引き起こします。

細菌は、1つの細胞です。エサを食べ、エネルギーを作ることで生き、自ら増殖します。
人と共生する腸や皮膚の常在細菌は、人を守りますが、サルモネラ菌や病原性大腸菌など感染症を起こすものもいます。

ウイルスは、細胞ではなく、DNAやRNAという遺伝情報を持つ箱のようなものです。
エサも食べず、自ら増えることもできないので、「ウイルスは生物ではなく、単なる情報だ」という人もいます。
日常的な風邪やイボ、また、麻疹、風疹、インフルエンザなどはウイルスによって起こります。

 

Q5.手についたウイルスはどうやって体に侵入するの?

A5.ウイルスが健康な皮膚のバリアを破って侵入することはありません。
口などの粘膜や傷などを通して感染します。

ウイルスの種類によって主な感染経路は違いますが、コロナウイルスのように上気道症状を引き起こすウイルスが手に付着した場合、その手で口や鼻、目などの粘膜に触れることで感染します。
他にも、皮膚にイボを起こす種類のウイルスは、乾燥や傷によってバリアが壊れた皮膚から侵入し、皮膚の細胞に感染します。
また、HIVウイルスは、性交渉によって陰部の粘膜を通して感染するなど、ウイルスによって感染の仕方は様々です。

 

Q6.コロナウイルスは、鼻と口のどちらから入るの?目からも感染するの?

A6.いずれからも侵入する可能性があります。

一般的に、鼻は、鼻毛と湿度によって、ウイルスの付着したホコリなどをトラップし、感染防御する仕組みを持っています。
鼻呼吸をすることはこの点でとても大切です。
口は唾液の潤いによって感染から粘膜を守っています。ところが、呼吸になると口腔内の粘膜が乾燥し、ウイルスが侵入しやすくなります。
花粉症の人はこの時期口呼吸になりやすいので、注意して下さい。
同じコロナウイルス のSARSでは、目の粘膜からの感染も報告されています。新型コロナウイルスでははっきりしていませんが、SARSのウイルスとかなり似通った遺伝子を持つことが分かっているので、可能性はあります。

 

Q7.コロナウイルスに加湿は効果があるの?

A7.あります。

上気道症状を引き起こすウイルスについては加湿が有効です。
ウイルスは、乾燥するとふわふわと身軽になり、ホコリなどと共に環境を漂いやすくなります。
湿度がある環境では、身重になり落下しやすくなります。
加湿器などで湿度を50〜60%程度に保つことが勧められています。
逆に、加湿のし過ぎは、じめじめした環境を好む真菌(カビ)を増やすため、こちらも不健康です。
結露が発生したらしっかりと拭き取り、カビの発生にも注意が必要です。

Q8.コロナウイルスに効く消毒剤は?

A8.アルコールや次亜塩素酸が効きます。

嘔吐下痢を引き起こすノロウイルスは、アルコールが効かないために塩素系消毒剤が必要なことが知られていますが、コロナウイルスにはアルコールも効果があります。
70%〜80%のアルコール液を振りかけたり、人が触るところを拭き取ることは有効です。
次亜塩素酸も効果があります。
本来は、マスクは使い捨てしたいところですが、マスクが手に入らない場合は、使用後にアルコールスプレーなどで消毒するのも、一考かと思います。

Q9.石鹸はコロナウイルスを死滅させるの?

A9.死滅はさせません。

石鹸は、付着したウイルスを物理的に洗い流すことしかできません。
一方で、アルコールは、ウイルス自体を破壊することができます。
手洗い後には、アルコールスプレーをダブル使いする方が確実です。

 

Q10.症状がないのに感染を拡げる人がいるのはなぜ?

A10.不顕性感染(ふけんせいかんせん)が起きている可能性が考えられます。

ウイルスに感染しており、体内でウイルスが増殖しているのに、症状がない感染を「不顕性感染」と言います。
今回の新型コロナウイルス は、免疫力が高い人では、症状が出ないケースも多く隠れていると考えられています。
この場合、無自覚に感染を拡げている可能性もあります。
ですから、症状があってもなくても、拡げない・もらわないつもりで、予防することが大事です。

 

Q11.若くても重症化するケースがあるのはなぜ?

A11.「サイトカインストーム」が原因と言われています。

通常、感染症では、免疫力が弱く、自分の免疫がその病原体を駆逐できないために重症化します。
ですから、今回の新型コロナウイルスでも、高齢者や基礎疾患のある人の方が重症化しやすいと報告されています。
一方で、若くて免疫力が十分ある場合、免疫細胞がウイルスとの戦争の中で暴走してしまうことがあります。
免疫細胞が作り出すサイトカインという武器が、嵐のように自らの体を襲い、焼き尽くしてしまう状態で、これを「サイトカインストーム」と呼びます。
これが起きると、感染症であるにも関わらず免疫を抑制する治療もしなければならず、治療がとても難しく危険な状態です。
医師は、この言葉を聞くと、冷や汗をかき、頭を抱えることになります。

 

WHO「80%が軽症で回復」

WHOのテドロス事務局長は、2月17日の記者会見で、「SARSやMARSほど致命的ではない」とコメントしています。
致死率が9.6%のSARSに比べると、現在のところ、中国では致死率2%で、感染者の80%以上は軽症にとどまっているとのこと。

一方で、「14%は肺炎などの重症の症状が起き、5%は多臓器不全など命に関わる状態になっている」と警告もしています。

この割合は、あくまでも医療機関での対応が十分に追いついていない中国での数字です。日本で然るべき対応をした場合は、致死率などももっと低いと考えられています。

生物の歴史は、ウイルスとの戦いの歴史でもあります。
自然界にはまだまだ人間が遭遇していない未知のウイルスがたくさんいるため、今後もこんな危機が定期的に起こらないとも限りません。

その際に、パニックにならず、また油断もせず、対処するために、ウイルスについての基礎知識を持って備えましょう。

 

今回は、素朴な疑問にお答えするQ &A方式でお伝えしました。
基本的な知識や対処については、以下の記事もご参考になさってくださいね。

 

≪内科医・認定産業医 桐村里紗さんの他の記事をチェック!≫

 

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