小林麻耶、コメンテーターとしては生きていけないその決定的理由
OTONA SALONE / 2020年11月6日 21時0分
ワイドショーは、今、過渡期を迎えているのではないかと思います。
その昔、ワイドショーと言えば、芸能人の熱愛を報じ、結婚披露宴を中継し、新婚旅行にまでついて行った。離婚のときは「今のお気持ちは?」とマイクをむけ、既婚オトコと不倫をした独身女性をたたき、反対に夫を奪われた妻には「自分の何が悪かったと思いますか?」と聞けた。
メディアがいま直面している「大炎上時代」
しかし、現代は芸能人もSNSで結婚や離婚を発表する時代です。今時、「離婚はダメなこと」と思っている人も少ないでしょうから、離婚報道そのものが盛り上がらないでしょう。フェミニズムも高まっていますから、昔のルールで番組を作っていたら、炎上しかねません。
加えて、現代は地震、集中豪雨などの災害、新型コロナウイルスの流行と、命をおびやかすような出来事が次々に起きていますから、まず自分の命が危ない。生活に直結した役に立つ情報が欲しいと願う視聴者も多いと思いますが、そういう話題の時に、芸能人を集めてコメントさせても、雑談の域を出ないでしょう。
それでは、専門家をどんどん出せばいいのかというと、よく知らない人が出ている番組を見たいと言う人はあまりいないでしょうし、まじめすぎる内容でも肩が凝る。画面がバエないと、商業的な成功にも結び付かないのではないでしょうか。
となると、ワイドショーは、扱う内容とコメンテーター選びに注意が必要になってきていると思うのです。
ワイドショー向きのネタの条件とは?
10月29日放送の「グッとラック」(TBS系)。芸人・だいたひかるが不妊治療を再開したことを話題として取り上げていました。もちろん、応援する意味での放送だったとは思いますが、結果的にこれは誰もトクをしなかったのではないでしょうか。
不妊治療の最中に、乳がんが見つかっただいた。以降は治療に専念していましたが、再発も経験しています。45歳という年齢もあって、だいたは不妊治療を再開することにしたそうですが、乳がん治療では女性ホルモンを抑える治療をし、不妊治療では女性ホルモンを増やすそう。乳がん治療と反対の行為を行うわけですから、当然、再発や転移の可能性はあがります。しかし、だいたは「死んじゃってもいいから、子どもを迎えに行きたい」という気持ちで、挑戦することを決めたそうです。
まず、この話題を今やることが、ワイドショーに向いていないように思うのです。
芸能人のプライバシーという「他人事」を扱う時の原則は、「誰の命にも別状はない」「やりなおしが効く」ことだと思います。不倫しても離婚しても、仕事には戻れますから。
しかし、今回の話題は、がんと不妊治療というダブルで「いのち」が絡んだ話題です。少し前にデヴィ夫人は「不妊の原因は中絶」と発言して炎上しました。これはちょっとひどすぎる例ですが、シロウトが医療ネタを話すと、公共の電波にのせて間違った発言をしてしまう率は高いでしょう。
司会・志らくがうまくまとめようと動いたその矢先に
コメンテーターもやりにくかったのではないでしょうか。だいたがそこまでの覚悟で夫婦で決めたことを、他人がとやかく言うことはできません。でも、何か言わないと、仕事として成立しないのですから。
司会の立川志らくは、「自分が亭主の立場になったら、いや、子どもはいいから、おまえ、がんばって生きてくれよと思うことも間違いじゃないし、親の立場になって、いや、孫はいいからおまえ、一日でも長生きしてくれよと当然親はそう思う」と、いろいろな考えがあることを示しながら、「決断したのは、彼女だから、みんなで認めて応援してあげないといけない」と結んでいます。
志らくは「母親がいないと、子どもにとっては不幸じゃないか」と思ったので、妻とこの話題について話しあったそうですが、妻はだいたの決断を理解できるというような答えをしたそうです。
スタジオ全体が応援ムードになってように私は感じましたが、コメンテーター・小林麻耶が「考えは人それぞれなので否定するつもりはないんですが、志らくさんが先ほど『母親がいないことは不幸だ』とおっしゃったのは、私はそういうふうには思いません」「母親がいない人たちだってたくさんいますし、母親に虐待されている人もいます」「母親がいない人は不幸っていう、そういう言い方は個人的に嫌いです」とひくーい声で発言したのでした。
どちらの気持ちもわかるが…鈍感すぎるオトコと敏感すぎるオンナ
このやりとりがネットニュースで切り取られて配信され、小林が正しい!志らく、ひどい!という声も上がったようです。
が、番組を見ているとわかるのですが、志らくが言う「母親がいないと、子どもにとっては不幸じゃないか」の母親は、だいたを指しているのであって、世の中の母親のいない子供全体を指して「不幸だよ」と言っているわけではないのです。
志らくもだいたの決断を応援しているし、それは小林麻耶も同じです。それならば、なぜ、このようなすれ違いが起きるかというと、まず志らくは、だいたの話をしているのに、「お母さん」という不特定多数の呼称を雑に使ったことで、誤解を生みやすくなった。
そして、もう一つ、小林に「自分のことを言われているわけではないのに、自分のことだと思ってしまう」傾向があるのではないでしょうか。
妹の麻央さんが乳がん闘病の末になくなり、甥御さん姪御さんはお母さんを失いました。それだけに、今回の話題はいろいろ思うことがあったのだと思います。それ故に「お母さんがいないと子どもは不幸」という発言が、まるで甥御さん姪御さんを侮辱したように感じられたのかもしれません。
体験をドライに切り離してコメントするのはとても難しい
けれど、繰り返しになりますが、志らくは「母親のいない子ども」全体を不幸と決めつけているわけではありません。
プラスして、コメンテーターの仕事というのは「自分の経験をいかしながら、自分と切り離して話すこと」だと思うのです。たとえば、離婚を経験して「結婚はもうこりごりだ」と思っている人がいたとします。その人がコメンテーターとしてワイドショーに出ているとき、芸能人の結婚のニュースで「よく結婚なんてしますよね」と言ったら、それはおかしいでしょう。コメンテーターは「人のこと」について話すわけですから、そこに「自分」を持ち込みすぎると、番組は違う方向に行ってしまうのではないでしょうか。
明らかに小林やその周辺を侮辱したと思うようなことであれば、どんどん反論していいと思いますが、そうでもないところで引っかかって感情を激したり、涙を見せられると、視聴者もあまりいい気分ではありませんし、小林のコメンテーターとしての評価もプラスにならないでしょう。
自分が「悪く言われた」と思ったときに、考えてみてほしいこと
一般人の世界でも、「Aさんのことを話していたわけではないのに、Aさんが怒りだした」ということはあると思います。もちろん、周りの言い方もあると思いますが、怒りやすい人の特徴として、「いつも自分のことを考えている」ことが挙げられると思います。
いつも「人が私をどう言っているのかな~」とアンテナをはっているから、自分にまつわる言葉を敏感にキャッチしてしまうのではないでしょうか。クラスメイトのB君に恋しているとき、誰かが「Bがさ~」と話していると反応してしまうのと一緒です。
傷つきやすい人は、生きにくいことは間違いありません。「自分がダメだからだ」と自分を責めたり、「侮辱された!」と激昂する前に、まず「本当に自分のことを言っている?」と考えてみるところから始めてみるといいかもしれません。
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