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【岩井志麻子】40代は女として「もう終わり」なのか?

OTONA SALONE / 2021年4月20日 21時0分

八十年代に大人気だった、そして没後三十年近く経った今も読み継がれている森瑤子さんの著作。正直、私はリアルタイムではそれほど夢中にはなれなかった。

都会的でお洒落な雰囲気、上流の人達のドラマチックな色恋。岡山の田舎の高校生はまぶしい未知の世界に憧れながらも、こういうのは類型的な浅い物語だ、などと私自身が類型的な読み取りしかできず、浅い経験と知識による感想しか持てなかった。

若くなくなった「女性の焦り」

とにかくあの頃は、若いというより子どもだった。驕りの季節の中にいた私は、華やかな描写の合間に挟み込まれる中年女性の悲哀、若くなくなった女達の焦りを、それこそ表面的には目に入っても、若さ由来の残酷さで薄笑を浮かべ、反感すら持っていた。

自分も歳を取る、私だって中年女になる日が来るとは、ほぼ考えられなかったからだ。

ちなみに森瑤子さんが『情事』で世に出たのは、三十八歳のときだ。当時の私からは親世代だが、なんと今現在の私からは十八歳も若い。改めて、いろんな意味で愕然とする。

よく知られている逸話だが、素敵な夫と可愛い娘さん達と、小説そのままのお洒落な都会の生活を満喫しているように見えたけれど、本人は自分が何者でもなく、もう色恋とは縁がなくなり、このまま四十代を迎えることに強い焦りを感じ、小説を書いたという。

この作品ではないが、歳を取ると「外出が冒険でなくなってしまう」のが寂しい、という意味の言葉が印象深い。若い女は外に出れば様々な誘惑があるが、歳を取ると男達の視線にさらされなくなり、恋愛や情事の機会がなくなっていくということだ。

40代、迷えるあなたへ

森先生はしかし、そんな苦悩をアバンチュールやラブアフェア(八十年代風に)で紛らわせ溺れることはせず、原稿用紙にぶつけ、結果として名作を生み出し、さらに華やかな存在となるのだ。誰もが森先生みたいにはなれないが、森先生の読者にはなれる。

四十代になってから再読し、あの頃はわからなかったことがわかるようになり、今は熱烈な愛読者だ。加齢は経験や感情も豊富にしてくれるのだから、若いときはわからなかった感動も得られる。逆に、若く未熟な頃でないと味わえない感動もあるんだけどね。
ともあれ森瑤子作品からは、四十路女性への指針と箴言が次から次へと新たに発見できるので、ぜひ迷えるあなたにも読んでほしい。

 

 

≪作家 岩井志麻子さんの他の記事をチェック!≫

 

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