不倫は熱を帯びていく。なのに「急に我に返る」のはなぜ?
OTONA SALONE / 2021年4月29日 22時1分
後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。
不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。
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【不倫の精算#28後編】
「選ばれなかった女」の悲しい末路は
その日、電話の後すぐに“現場”に駆けつけたとき、Kさんは生け垣の隅に背中を丸めて座っていた。
「……」
こちらに気づけば急いで駆け寄ってくるだろうと予想していたが、それに反してKさんは影が重なるほど近づいても顔を上げなかった。
とりあえずこの場所から離れなければと、Kさんに乗ってきたクルマの場所を尋ねると、
「あ、うん、電車で来たの」
と力の入らない返事があった。
それを聞いてこちらのクルマに乗ってもらい、すぐに近くのコンビニエンスストアまで移動した。
その間、Kさんはひと言も口をきかなかった。
駐車場に停めてからもKさんは黙ったままだったが、ただ言葉を待った。
「もういいや」
しばらくして漏れた声は、電話のときとは正反対の、焦りを通り越した平坦さがあった。
Kさんを見ると、やっとこちらに顔を向けて彼女は続ける。
「もう、馬鹿らしくなっちゃった。
何やってるんだろう、私」
その、自分に言い聞かせるような言葉は、確信を待たなくても終わりを選べるのだと気づいたような響きがあった。
こんなこと、もう続けていけないから
「大丈夫?」
こちらの言葉に、Kさんはうなずいた。
「彼ね、さっき帰ってきた。ひとりで。
でも、買い物していてさ、食料品の。
あの人ね、料理なんてしないのよ。
誰が作るんだろうって……」
“私は呼ばれていない”。
その言葉にしない事実が、彼女にとっては答えだったのかもしれない。
「……」
既婚の彼に見えた、自分以外の女性の影。
決まったわけではないが、疑いがあるだけでも、続けていくのは難しいこともある。
不倫だから。
堂々と責めることはできない。
「私とも不倫だしね」と言い切ってしまったKさんは、彼を詰ればその関係を選んでいる自分の惨めさを目の当たりにする。
それが現実。
「……帰ろうよ」
Kさんは、背中をシートにゆっくりと押し付けて脱力した。
カレ、気づいていないんだ、私が「見ちゃった」ことを
次の日、Kさんからふたたび着信があった。
出てみると、昨日来てくれたことへの感謝を告げられた後で、こう続いた。
「ああいう人がいるって、はじめて知った」
落ち着いた声は、自分たちの関係を客観的に見ている冷静さが伝わった。
既婚の彼は、いつも通りに接してきたそうだ。
Kさんが自分の帰宅を見張っていたことも知らず、食料品を買い込んだ姿を見られていることも気づかず。
「私が来る時間にね、必ずあの人が出るように今まではしてくれていたんだけど、それがもう虚しくて。
昨日はお楽しみでしたか、なんて嫌味が出そうになっちゃった」
結局、彼が”浮気“をしていたかどうかはわからない。
でも、彼女のなかでは疑いがある時点で続けるような関係ではなくなっていた。
「うん」
ただうなずいた。
幸福なエンディングなんてあり得ない。不倫って
不倫中、「我に返る」人がいる。
自分たちの関係が実はどれだけ不毛か、後ろ暗く救われないものか、そしてリスクしかないつながりであるか。
そのきっかけは、第三者からの指摘ばかりではなく、ふたりの間のつまずきから生まれることもある。
Kさんの口にする「ああいう人」とは、不倫に抵抗がないうえに、複数の女性とそんな関係を持つことに違和感を持たない異常さを指している。
昨日の彼の実際がどうであれ、疑いを持てば普通の恋愛関係以上に失う信頼は大きい。
「それに、どうせいつまでもは続かないしね」
投げやりにつぶやくKさんだったが、こちらが予想していた彼の単身赴任が終わる際の葛藤より早く、諦めを手にしていた。
「うん」
それが正解なのだと口にはしなかったが、うなずくだけで彼女には伝わるはずだった。
「あの男と同じことをしているんだ、私って」
あれから、Kさんは既婚の彼とはすっぱり関わりを断ったそうだ。
しばらくは会いたいとLINEが来ていたそうだが、Kさんが「不倫はもうこりごり」と返してからはいっさいの連絡はなくなった。
仕事でも、彼の会社に出向いた際の“お迎え”はなくなり、顔を見ることもない。
彼との話題が少なくなるにつれ、Kさんのなかに「醜い」という感情が生まれているのを感じていた。
不倫も、仮面夫婦であえて単身赴任を選ぶのも、複数の相手を抱えることも。
そしてその男性に熱を上げていた自分も。
我に返れば、どれもが醜悪で受け入れがたい姿であり、それを垣間見たことで正常さを取り戻したようだった。
「二度と不倫はしない」
何度も吐き出すKさんの言葉がどうか本心でありますようにと、祈るばかりだった。
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