もう、一生セックスしないのかも…。【40代、50代の性のリアル】#1(後編)
OTONA SALONE / 2021年6月3日 22時1分
したい・したくない、する・しないーーセックスについての選択や可能性はいつだってこう単純に分けられるものではなく、幅広いグラデーションがあり、その日そのときの気分でも変わるもの、相手あってのことなので、自分のひとりの思いだけではどうしようもできないことも、多々ある。
それは年齢や、これまでの人生経験値にも大きく影響される。40代を迎えた女性たちの、性の現在地はどこにあるのか。そしてこれからどこへ向かうのか。
男性の身体がどうしても…
「それは私がセックスを好きになれない理由が、痛い思いをしたからとか、これまでの恋人たちのテクニックがイマイチだったからとか、そういうところにはないからでしょうね。理由は、私の中にあります。あの……実は、男性の身体に興味が持てないんですよ」
それは、マッチョな男性が好きじゃないとか、太りすぎている肉体が受け付けないとか、そういうこと?
「いえ、なんていうかフォルムが好きじゃないんですよ。絵画や写真作品などを見ても女性の肉体は曲線的で美しいなって思うし、年齢関係なくすてきだと思う女性はたくさんいます。同性愛というわけではないんですが。男性の場合、ゴツゴツと骨ばってきたり体毛が濃くなったりすると、生理的にパスしたくなっちゃう。これもスカートめくりに起因しているんですかね、まだ子どもでしたけどあの乱暴さとかマッチョな感じとかに拒否感が出てしまって」
だから、男性の肉体をダイレクトに感じにくい「手をつなぐ」がミナエさんにとって心地いい性的接触の、上限になるのかもしれない。
性別を意識したくない
「少女漫画に出てくる男の子とか、舞台俳優とかは大好きです。彼らの世界はそこで完結していて、私はそこにいないから。ファンタジーなんですよ。少しでも生身の男性っぽさを感じると、気持ちが引いてしまいます。肉体面でも精神面でも男性性を感じたくないんです。それと同時に、男性に私のことを女性だと意識してほしくもない。仕事でもプライベートでもお互いに性別を意識しない距離感を保ちたいです」
美意識、という語が思い浮かぶ。ミナエさんのなかに美しい/美しくないを分けるラインのようなものがあり、美しくない側に判別されると受け入れられない。身勝手だと思われるかもしれないが、ミナエさんは男性に対して面と向かって拒絶を示すわけではない。男性性の封印を求めることもしないし、もとより封印できるものでないことも知っている。それを受容できない自分を熟知しているだけではないか。
一方、男性、女性ではなく“一個人”として接してもらうため、まずは自分からそれにふさわしい振る舞いを心がけてもいる。そうやって自分にとって居心地のいい状態を作り上げていっているのだろう。
「終わり方」へのこだわり
「きっと自分のことが好きだからでしょうね。自分が大事。それもセックスが好きになれない原因のひとつかな。セックスって、男性が射精すれば終わりじゃないですか。女性がどれだけ満足しているかとか、このあとどうしたいかとかはあまり考えられず、男性が終わった時点でセックスも終了。女性が主導権を握ることもあるんでしょうけれど、結局、最後は男性の都合で決まるって、なんかヘンだと思っちゃう。たとえば食事をしていて、一方が食べ終わった時点でもう一方を待たずに勝手に席を立つってことないですよね。私、何ごとも終わりはきれいにしたいんです」
これもまた美意識なのだろう。ミナエさんはこうしたいろんな要素をもとに、いまの自分にセックスは特に必要ないと見極めているようだ。
「ええ、これまでも自分で決めてきたし、これからもそうしていくと思います。でも40代になってから、セックスがそんなに気持ちいいことなら、それを知らないまま終わるのも女性として生まれてきたのにもったいないのかな、という思いがふと胸をよぎるようにはなりましたね。だけど、やっぱり私にとっては親しい人たちと楽しく遊んだり食事したり、ひとりでぼーっとしながらあれこれ考えをめぐらしたりする時間のほうが大事。少なくともいまはそう思います」
40代、これからのセックス
この先、好きな人ができたらその考えは変わるのだろうか。
「『彼氏を作らない』という気持ちも、44歳になって少し変わってきました。先のことは決めつけなくてもいいですもんね。人生があと50年つづくとして、誰かと出会って交際するようなことがあったら、いままでやったことがないことをしてみたい。たとえば、思いっきり仲良しカップルになってみるとか(笑)。いままでは“サバサバ系”という自分のキャラに合わないとか、自分の美意識に反するとか、そんな理由でイチャイチャしたり甘えたりしたことってなかったんですよ。でも人生で一度ぐらい、ちゃんと恋愛してみるのもアリかもしれませんね」
* * *
する・しない、したい・したくないに翻弄されるのは思いのほか苦しいことだけれど、ミナエさんは自分が欲しているもの、快適な状態にすなおでありつづけてきたため、いま自分が立っている性の現在地に納得している。そんないまがあるから、いつか訪れるかもしれない“ラブラブ期”には仲良しカップルぶりを見せてくれるだろうと思わせてくれる。セックスがあってもなくても、それはハッピーな体験になるにちがいない。
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