ごめん理解できない、「ホテルに行こう」は言えるのに「好き」って言えないの…?【40代のダメ恋図鑑#3】後編
OTONA SALONE / 2022年4月2日 22時1分
40代。未婚でもバツイチでも、「独身」を楽しみたいと思いながら恋愛でつまずいてしまう女性たちは、どこで間違えてしまうのか。
アラフォーの女性たちが経験する「恋の迷路」をお伝えします。
こんなにストレートに誘ったのに、その男からの返事は…信じられない
今夜、ことさらにCさんの気持ちが荒くなっているのは昼間に起こった「事件」が原因だった。
仲良くなって半年以上経つが、ふたりはいまだに肉体関係を持っていなかった。
それはCさんが離婚の話し合い中であっても既婚者であり、安易に一線を超えることにふたりが抵抗を覚えたからで、そのわきまえ自体は素晴らしいと思う。
だが、離婚が成立してすぐに次の関係に進めたのかといえばそうではなく、引いた目で見てみると「両思いなのにどちらかの告白待ち」というもどかしい状態、しかも片方だけに負担が偏る関わり方になっていた。
お互いの様子を伺い、好意を引っ張り合うような窮屈な時間だからこそなのか、決して見せないが肉体をつなぐことへの欲望はふたりとも抑えがたくなっていたのだろう。
今日、Cさんは彼に「ホテルに行かない?」とはっきり誘っていた。
それを聞いたときはびっくりしたが、
「だって、しんどいもの、そういう雰囲気は毎回もあるのにそれを無視して過ごすのって。
どうせあっちから誘ってくることはないのだから、もうこっちから行っちゃえって思ったのよ」
とCさんは苦々しく顔をしかめて言った。
そして、Cさんの誘いに対する彼の答えは
「そんな関係じゃないのに、行けないよ」
というもので、この言葉に「絶望した」Cさんは衝動のまま
「本当に男らしくないのね。
もういい」
と彼のクルマを降りてしまっていたのだった。
「肝心なところでまだ女の私に恥をかかすのよ。
もう、最低」
呪詛のように繰り返しつぶやきながら、Cさんはビールのジョッキを持つ手を緩めなかった。
こういうマンガ最近読んだ。相手に好きって言わせれば勝ちっていう、高校生のマンガ
こじらせ具合がここまで極まったなら、もういったん離れるのがお互いのためだと思ったが、「会わなきゃいいじゃない」と言えば
「それはできない」
「きっとこのまま音信不通になると思うし」
「時間が経てばどうせ元通りだから」
と、Cさんは言い訳を続けていた。
ホテルを断られても、まだ会おうとするのが勇気なのか執着なのか、
「それは恋愛感情なのかねえ」
と問えば
「わからないわよ。
でも、このまま引き下がるのは嫌よ」
と今度はトーンダウンした声が返ってくる。
どうして頑なに「好きだ」と伝えるのを避けるのか、無意識のうちに「あちらに言わせて言質を取りたい焦り」を抱えていることに彼女は気づいていない。
デートに誘うのも、食事に行くお店を決めるのも、自分からでいい。我慢する。
だが、決定的にふたりの関係を変える告白だけは、彼から受け取りたい。
「求められた自分」で恋人になりたい。
その暗い欲望は、必ず見えない圧力となって彼の心を追い詰めるだろう。
「肝心な場面」はホテルに誘うことではなくてもっと別の瞬間なのだ。
そもそも「好かれている自分」が見たいのは彼も同じであり、ずっとそれを感じているにも関わらず告白させようとすること自体が、ないものねだりなのだ。
「時間の無駄だね」
これは緑茶ハイだったっけ、と思いながらチューハイに手を伸ばしてそう言うと、ぎらりとした視線が横から突き刺さった。
他人の性格が変わることはありません。ただし、気持ちだけは変わる
「ひどい」
潰れた声でCさんが言った。
その悔しそうに歪んだ表情をちらりと見て、
「賭けてもいいよ、彼が動くなんてことはこの先一生ない。
あなたが変わるしかないよ」
と、淡々と続けた。
「……」
彼女は黙る。
そうだ、わかっているのだ、自分が何を仕掛けようと、すべて彼はかわすだろうと。
「言わされそうな場面」になると、絶対に逃げることを。
どこまでも、自分が負う側になるのだと。
惨めさは続くのだと。
「あちらに言わせたい焦り」が消えることも、満たされることもない。
そんな人と過ごすことを選んでいるのは、間違いなく自分なのだ。
「ごめん、正直に言わせてもらうけど、そんな年相応じゃない幼稚な男、私なら無理。
自分の時間をそんな男に使いたくないわ」
傷つけるとわかっていても、今だ、と思った。
主導権を相手に渡す恋愛など、決して幸せにはなれないと気付かない限り、彼女の不毛な苦しみは続く。
アンタは、そうね、いつも対等ってうるさいものね。
こちらにわずか届くくらいのかすれた声でそうつぶやいて、Cさんはジョッキから指を離した。
「私だって、まともな恋愛がしたいわよ……」
その本音をどうか行動に移してほしいと願いながら、次の一杯を注文するために手を上げた。
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