2人の男に求愛され続けたい…?不倫のカレと独身のカレ【不倫の精算#47】前編
OTONA SALONE / 2022年4月21日 22時0分
後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。
不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。
もう私、いいかげん不倫から卒業したい。そう言ったはずなのに
5年前に離婚して「ひとり暮らしって最高」と話すDさん(39歳)から聞いた悩みは、マッチングアプリで出会った既婚男性との不倫についてだった。
興奮気味に「ねえ、私の出会いを聞いてくれる?」と打ち明けられたのが一年前、順調そうに見えたが半年ほど経って「やっぱり無理……」と沈んだ声で連絡が来て、会いに行ったのだった。
待ち合わせのカフェに着くと、テラス席でぼんやりと座るDさんが見えた。
手にしたスマートフォンの画面を見る瞳は曇っていて、背中を丸めた姿からは「相手なんて意外と簡単に見つかるのね」とはしゃぐように話していた以前の面影は消えていた。
「お待たせ」
と声をかけるとハッとしたように顔を上げたDさんは、急な呼び出しを詫びるとすぐに本題に入った。
「あのね、実は好きな人ができて」
「え?」
店員さんがお水を持ってきてくれたのでDさんは黙り、メニューを開く余裕もないままカフェオレを注文して店員さんがまた去っていくのを待つ。
「それは……よかったじゃない」
改めて椅子に座り直しながらそう言うと、Dさんは
「うん。
そうだよね? いいことだよね?
それで、今の彼とは別れたいのだけど……」
なぜかすがるような弱々しい声を返した。
不倫から卒業したいの。
それは、これまでも度々Dさんの口から出ていた願望だった。
「不倫相手」と「好きな人」、不倫なのに二股だなんて…?
「不倫をやめたいって前から言っていたよね?
好きな人ができるのはいいことだと思うけど」
肯定したのにどうしてうろたえるのか不審に思いながら重ねて言うと、
「うん……」
Dさんは泳がせていた目を下に向けた。
「まあ、不倫相手に別れてって言わないといけないものね、それはストレスだよね」
無事に別れられるのかどうかが不安なのかとそう尋ねると、
「うん。
この間ね、旅行の約束をしたばかりで」
と、Dさんはこちらを見ないまま小さな声でそう言った。
「え、好きな人ができたのに?」
思わず声が大きくなり、肩をすくめて「どうするの、それ」と続けると
「まだホテルの予約はしていないから、大丈夫だとは思うの。
でも、何かさ、二股っぽいなあって……」
「……」
二股。
不倫と普通の恋愛を同列にすることに違和感があったが、彼女にとって不倫相手の彼がどの程度の重さなのかがわかるようで、何も答えられなかった。
ちらりとこちらを見るDさんは相変わらず気弱な表情のままで、それに押されて
「不倫なら、独身側のほうに新しく好きな人ができても責められないでしょ」
と言うと、「そうだよね」と小さくつぶやく声が聞こえた。
独身のあなたは、独身のカレと幸せになればいい、そういう話じゃないの…?
注文していたカフェオレが届き、一口飲んでから
「ところで、その男性はどんな人なの?」
と彼女の新しくできた好きな人について尋ねた。
「まだ片想いってこと?」
そう言うと、Dさんも自分のカップを持ち上げながら
「片想い……ではないかも。
一応、お互いに好きだとは言うのだけど」
と、歯切れの悪い言葉が返ってきた。
「あのさ、確認するけど、その人は独身だよね?」
「あ、うん。
それは確か」
こちらの質問に慌てて答えるが、よく聞いてみるとその人は彼女が行きつけのバーのマスターで、Dさんと同じバツイチであることは本人とほかの常連さんから耳にしていたそうだ。
「両想いなのに、どうして不倫相手と旅行の約束なんてするの……」
こちらの呆れた声に、Dさんはまた視線をうろうろとさまよわせ始めた。
「だって……」
「そのこと、もちろんそのマスターは知らないのよね?」
彼女の返事を聞く前に尋ねると、こくんと頷く。
二股。
好きな人ができて両想いになれているのに、不倫相手とも関係を続ける矛盾に、彼女は苦しんでいた。
「いずれ別れるもの」と理解していても
しばらくふたりとも無言で、目の前のカップを眺めていた。
Dさんは、離婚後に好きな人ができないことについて悩んでいた時期がある。
「別に男嫌いになったわけじゃないのだけど、男の人と積極的に仲良くなりたいと思えない自分がイヤ」
無理に恋愛しなくても、と言うこちらにDさんは「せっかく独身に戻ったのに」と口をとがらせたが、結局はその気になれる機会がないまま、つかんだのは不倫だった。
それについて何も言わなかったが、不倫相手と過ごしながら別の独身男性とも親しくなり、恋愛感情を育てるまでになったのはなんとも皮肉だな、と思った。
彼女は今の不倫について「いずれ終わるもの」と言ったことがある。
未来はなく本気になるような関係ではないと理解していたはずなのに、いざ好きな人ができても旅行の約束をしてしまうのは、Dさんのなかで「好き」が揺らいでいる証拠でもあった。
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