これが私たちに起きる未来の出来事だと思う。不倫相手の側が日常になる【不倫の精算#48】前編
OTONA SALONE / 2022年4月29日 22時0分
後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。
不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。
解決しない、夫とのレス。既婚女性が不倫を「選ぶ」までの経緯って
42歳になるEさんが不倫に走ったのは、夫とのセックスレスが原因と聞いていた。
不倫相手は50歳、マッチングアプリで知り合った男性で月に二度ほどホテルに行く仲だった。
「この年でレスな夫婦なんていっぱいいるでしょ」
と以前話していたが、マッチングアプリで性の相手を探す自分について
「相手してくれない旦那が悪いのよ」
と言い切る姿を覚えている。
そのEさんに、不倫相手とはどんな状態か確認したくて久しぶりにLINEを送ると、「会って話そうよ」と返ってきてランチに行く約束をした。
イタリアンのお店で顔を合わせたEさんは一年前と変わらず血色のいい顔で、マスクをしていても人懐っこさが伝わるような、柔らかく下げた目尻で迎えてくれた。
薄いメイクにカジュアルな服装は昔と同じだったが、ふわりと羽織った淡いレモンイエローのカーディガンが、Eさんの内情を表わすようにささやかな華やかさを添えていた。
1年ぶりに会った彼女の中で、夫は「もう存在しない人物」になっていた
「あの人とはね、半同棲みたいになっているの」
笑顔で挨拶を交わしランチメニューから注文を済ませ、Eさんはまるで世間話のように普通のトーンでそう言った。
「え?
同棲ですか?」
夫とは離婚したの、と言わないということは、いまだに不倫状態と考えるのが自然だ。
夫との仲を確認するのは憚られて、「前より仲良しになっているじゃないですか」と茶化すように返した。
ふふ、とEさんは笑い、
「そうねえ。
何か、旦那よりこの人といるほうが自然になっているかも」
と同じ口調で続けた。
記憶が正しければ、不倫相手の男性とは一年以上続いているはずだった。
話を聞いていた頃は、月に二回の逢瀬で満足しているような雰囲気で、それ以上の恋愛感情のようなものは彼女から出ていない。
Eさんを見ると、穏やかな表情を浮かべていた。
「相性がいいってことですか」
体の、と声をひそめて続けると、吹き出す口を抑えながらEさんが言った。
「やめてよ。
そっちの相性は普通だと思うけど、話が合うというか、一緒にいると気が楽なのよ」
それは本来、夫に感じるのが正解のはずだと思ったが、夫を話に登場させないEさんの気持ちを想像すると、つっこむのはためらわれた。
不倫している既婚女性の多くは、不倫相手の話を聞くときに必ず夫への不満や怒りをにじませる。
配偶者を裏切る不倫という行為を正当化するためだったり、愛情を失った自分の確認だったり、「配偶者がいるのに別の異性と肉体関係を持つ」不毛さを少しでも薄めたいのかと見ていて思う。
だが、この日のEさんから、婚姻関係にある夫の話はいっさい出なかった。
「週末はね、あの人の部屋でおつまみを作って一緒に晩酌するの。
そのままベッドでするときもあるし、しないまま寝てしまっても特に不満はないのよね。
平日も時間があれば私が彼の部屋に行くのよ、掃除とか洗濯がしたいから」
目を細めながら楽しそうに話す様子は、そして内容は、不倫相手との付き合いにほとんど窮屈さを感じていないことを伝えてきた。
どう考えても「不倫相手の側が日常になる」のはおかしいのだけれど
「うまくいっているのですね」
前菜とサラダに続いてパスタの皿が運ばれてきて、いっぱいになったテーブルでカトラリーのケースに手を伸ばしながらそう言った。
「うん」
ありがとう、とフォークを受け取るEさんはやはり笑顔だった。
「あの、こう、きっかけとかあったのですか? 同棲の」
配偶者と離婚しないまま不倫相手と半同棲などという事態は、どう考えても普通じゃない。
そもそも不倫関係が異常ではあるのだが、半同棲まで進むことを許した現実について知りたかった。
「そうね……」
口に入れたサラダを飲み込んで、Eさんは首をかしげた。
「何か大きな事件があった、とかじゃないのよね。
ただ普通にいろんなことを話せるようになって、夜は休日でも外に出ていくのはしんどいとか、野菜や魚が中心のご飯が好きとか、合うところが多いってお互いにわかって、少しずつ一緒にいる時間が増えたの」
「相手のかたはずっと一人暮らしでしたよね」
「そうそう。バツイチで。
それで、ホテルじゃなくて彼の部屋に行くようになって、飲み物とかお菓子とか買うんだけどそのうち晩ごはんでも作ろうか、みたいな流れで」
旬のアサリはやっぱり美味しいわね。
パスタを頬張りながら最後にそう言うEさんの姿は、まるで彼氏との同棲のはじまりを報告する女性のようだった。
「……」
既婚者であるEさんの日常に、必ずいるはずの夫。
それ以上に近い距離で時間を共有する不倫相手の男性。
その「流れ」を止める存在が登場しないことが、Eさんの結婚生活を物語っていた。
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