51歳、更年期のめまいで病院にかかったものの塩対応。原因は?どうすればいい?【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#2
OTONA SALONE / 2022年5月21日 21時0分
青年期、壮年期などと同じような時期の呼び方として、女性の閉経の前後5年を更年期と呼びます。
日本人の閉経の平均は50歳のため、45~55歳は更年期にあたる人が多数。この時期に女性ホルモンの分泌が急激に減少するため、更年期障害と呼ばれる状態に至る人もいます。
乳がんのセカンドオピニオンを中心に診察する医師の新見正則先生は、丁寧に私たちの訴えに耳を傾けながら、「だいじょうぶ!更年期は絶対終わるから!」と太鼓判を押してくれる力強い味方。そんな新見先生に「質問以前の質問」をまとめて聞くシリーズです。
【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#2
Q 大好きなミュージカルが楽しめなくてショック。この更年期、よくなるのでしょうか?
こんにちは、私はいま51歳です。先日、初めてめまいの症状が出て仕事を休んでしまいました。それと前後してショックなできごとがありました。
私はミュージカルが大好きです。しかしコロナ禍の間、公演は中止に。ずっとずっと我慢を続け、先日一年半ぶりにやっと観に行けたんです。ところが、あれだけ楽しみにしていた公演なのに、音に敏感になってしまったのでしょうか、会場内で不快感と不安感でいっぱいになってしまい……。楽しめずに途中で外に出てしまいました。身体がすっかり変わってしまったみたいだし、人生の楽しみを失ったようで、強いショックを受けています。
婦人科を受診しても「年相応」という検査結果でした。漢方を勧められたので、命の母を飲み始めています。この体調不良は更年期からくるものなのでしょうか? それともなにか異常があるのでしょうか? 病院へ行ってもハッキリとは分からず、不安と心細さがつのる一方です。
(わかなさん・51歳 更年期症状の度合い/とてもつらく、耐え難いと感じることがある)
なぜこういう症状が出てしまうのか? 理由は……
A・更年期の入り口にはどうしても「レジリエンス」、回復力が低下してしまう
わかなさん、ご不安でしょうね。今回はいっしょに、どこまでが更年期で、どこからはそれ以外の異常なのか、切り分けていきましょう。
さて、ぼくは「女性ホルモン分泌量が低下する時期に、飛行機を軟着陸させるようにレジリエンスを高めていく」ことを「フェムレジ」、フィーメール・レジリエンスと呼んでいます。レジリエンスとは回復する力のことです。
わかなさんが見舞われている症状の根底には、この「フェムレジ」の低下があるんだと思います。でも、そのこと自体は51歳ならば普通のこと。ホルモン以前に、身体は年相応に老いていくんです。
それはある程度わかっていても、めまいのような症状に襲われると「怖い病気が隠れてるんじゃないか」といっそう不安になりますよね。
そこで、今回はぼくから簡単な判断のポイントをお教えしましょうね。
まず、めまいはそれほど恐れなくて大丈夫です。更年期の入り口でめまい、疲れやすさが出た場合、一度くらいはクリニックに行って検査を受けてもいいですが、そんなに慌てて行かなくても、また何度も行かなくても、一度チェックすれば大丈夫です。
めまいはのぼせ、ホットフラッシュと並ぶ更年期の典型的な症状なのですが、びっくりしますし、ぐらぐらしている間は歩けませんから寝ているしかなくて、お辛いですよね。わかなさんもさぞご不安だったでしょう。でも、命をとったり、致命的な後遺症が残ったりはしません。やがて更年期が終わるころには消失していくので安心してくださいね。
いっぽうで、絶対に病院に急いで行ったほうがいいのは「いままでに経験したことがないような〇〇」です。
どういうことなのかをご説明しますね。
急いで医者にかかる目安は「いままでに経験したことがないような〇〇」
どんなことかというと、「いままでに経験のない頭痛」「経験のない腹痛」「経験のない吐き気」などです。これら「経験のない〇〇」に襲われた場合、一刻も早く病院に行って、必死で医師に「いままで何十年生きてきたのにこんなこと一度もなかったんです、変なんです」と訴えてください。医師に「どうせ更年期でしょ」と片付けられないよう、とにかく訴えてください。
たとえば「いままで経験したことのない頭痛」の場合、くも膜下出血の可能性があります。
このほか、「3週間治らない〇〇」も病院に行きましょう。たとえば3週間ほど手指の痛みが治らない場合、関節リウマチの可能性があり、なるべく早めに投薬したほうが予後がいいからです。
更年期ごろには甲状腺の病気と診断される人も増えます。たとえば橋本病やバセドウ病は病名を聞くと不安になると思いますが、これらは比較的たくさんの患者さんのいる症状なのでそれほど悩まなくて大丈夫です。
甲状腺の病気も本人が自覚する症状に比して致命性は低めなため、医療サイドの対応がちょっと塩に感じるかもしれません。でも、甲状腺はピンキリあって、おおむね9割くらいの人は心配ないので、医療サイドがそういう対応なんです。塩対応されたら軽いということです。心配ありません。
もうひとつ、案外見落としがちな大切なことがあります。
ぶっちゃけ、医師も自分の専門以外はよくわからない。適切な科に行くことも大切
医師が言うのも何なんですが、医師って案外と自分の専門科のことしかわからないものです。ぼくは全分野を横断的にみる漢方の医師でもあり、なおかつ医師としての経験年数も長いため、いろいろなことがわかるのですが、案外と医師に相談しても医師もわからないことがたくさんあります。
なので、適切な科にかかることは適切な診断の第一歩なんです。ほんとうは、こういうときどういう科にかかればいいのか、会社の福利厚生なんかでコンシェルジェみたいなサービスがあれば最高なんですよね。
この点、薬剤師さんは全部の科を処方しますから、かかりつけの薬剤師さんを作っておいて、どの科に行くべきか、急を要すると思うか相談してみるのは不調が増える更年期世代におすすめの対処です。
日本は皆保険が行き届いて誰でも医療にかかれるかわり、窓口は誰に対しても平等なため、医師も薬局も、人数が多くて来院頻度も高い慢性疾患の患者さんの対応に時間を取られます。たとえば糖尿病なんかですね。
そうした、定期的かつ進行のゆっくりな患者さんへの対応は今後、遠隔診療や郵送制度などを活用して減らしていかざるを得なくなるのだと思います。
お話/新見正則医院 院長 新見正則先生
1985年 慶應義塾大学医学部卒業。98年 英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2008年より帝京大学医学部博士課程指導教授。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は乳がん患者に対するセカンドオピニオンを中心に、漢方、肥満、運動、更年期など女性の悩みに幅広く寄り添う自由診療のクリニックで診察を続ける。がん治療に於いては、明確な抗がんエビデンスを有する生薬、フアイアの普及も行う。
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