55歳、更年期症状がまだまだ辛い。この辛さはいつまで続きますか?【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#11
OTONA SALONE / 2022年7月23日 21時0分
青年期、壮年期などと同じような時期の呼び方として、女性の閉経の前後5年を更年期と呼びます。
日本人の閉経の平均は50歳のため、45~55歳は更年期にあたる人が多数。この時期に女性ホルモンの分泌が急激に減少するため、更年期障害と呼ばれる状態に至る人もいます。
乳がんのセカンドオピニオンを中心に診察する医師の新見正則先生は、丁寧に私たちの訴えに耳を傾けながら、「だいじょうぶ!更年期は絶対終わるから!」と太鼓判を押してくれる力強い味方。そんな新見先生に「医師に聞いていいのか迷うこと」をまとめて聞くシリーズです。
【Dr.新見の更年期あかるい相談室】#11
Q・遅く始まった更年期症状は、強く出たり、長引いたりするのでしょうか?
新見先生、こんにちは。私は現在55歳です。
最後の生理は53歳で、本格的な更年期症状が54歳から始まりました。
50歳ごろから、足が痺れたり、動悸がしたり、身体が重たくダルくて足がむくんだりしていましたが、それらの不調が更年期症状とは知らずに、なんだかこれまでより調子が悪いな……年をとったせいかな、とずっと悩んでいました。
54歳になってからは、コロナ禍で運動不足だったり、気分転換が少ないため気持ちがふさいだりということも影響しているのかもしれませんが、症状がいちだんと強くなりました。動悸が1日中続いているほか、不眠も強くなり、足の痺れが続いたり、倦怠感がとれなかったりで、具合の悪い日は横になったまま起き上がれません。
去年あまりに辛いのでホルモン補充療法を始めましたが、不正出血が続いてしまい、続けられませんでした。いまは漢方薬を飲んでいます。
閉経からまる2年たってもまだまだ不調が続き、辛い日々です。これだけ強く症状が出ているのは症状が遅く始まったせいでしょうか? また、遅く始まったから長引いたりするのでしょうか? いつまで続くのか、憂鬱で、先の見えない辛い日々です。
(うらしまさん・55歳 更年期症状の度合い/とてもつらく、耐え難いと感じることがある)
A・大丈夫!もうちょっとで終わりますから、前向きに希望を持ってくださいね!
うらしまさん、こんにちは。文面からお辛さをお察しします。ぼくはこういう症状のカウンセリングがとっても得意ですから、いちどぼくと直接お話できたらもっとラクになります。その前に、まずは文字でカウンセリングさせてくださいね。
さて、うらしまさんの辛い状態は、大丈夫、もうちょっとで治りますよ。
辛さがいつ終わるのかはいまうらしまさんがいま何歳なのかより、うらしまさんが何歳で閉経したのかのほうに強く関係します。閉経から3年たつとほとんどの人はずいぶんラクになるんです。
もしまだ閉経していない方ならば、まだしばらくホルモン量が下がるため、数年、たとえば5年くらいは辛い状態が続くでしょう。でも、すでに閉経しているならば減ったホルモンに身体が慣れていっている最中ですから、あと2年、3年というところで無事着陸できます。
ちょっと予断を許さないのが、たとえば45歳で閉経しているのに55歳になっても辛いというケースです。この場合は何かしら別に要因が潜んでいる可能性がありますから婦人科医に相談してみてください。
お若く見える方はもしかして、長引くかもしれません
ぼくの患者さんの中に、最近65歳になって更年期症状が出始めたという方がいらっしゃいます。閉経は50歳ごろでしたが、15年もたってホットフラッシュ、めまいなど、聞いている限りそれは更年期症状に近いですねという症状が出ているんです。
彼女はとっても若く見える方で、黙って座っていれば52歳くらいに見えます。
これはあくまでもぼくの主観なのですが、更年期症状ってこのように若く見える方のほうが辛さが続くような気がしています。今回ご相談のうらしまさんも、もしかしてお若く見えるタイプではないでしょうか?
かつてはぼくも「60歳になって大変な人なんていないから大丈夫!」と答えていたんですが、65歳で大変な人が出てしまったので、最近言わなくなりました。
でも、その65歳の方に「お若く見える方のほうが」というお話をしたら、ぱっと顔が明るくなって、「先生、それって、私の体内年齢が若いってことでしょうか? しんどくて大変ですが、若いせいなんだ!と考えたら乗り切れる気がしてきました」と急にポジティブになっていました。
そして、こんなに瞬時に発想を変えられるだなんて、やっぱり本質的に若い人なんだなと感じました。
ほかの病気の検査もしてみてください。たとえば不整脈、高血圧など
さて、55歳を越えてなお更年期症状が続いている場合、注意したいのは他の病気の可能性です。55歳を過ぎたら同じ不調でも更年期症状だと思い込まず、病気の検査を行ってください。
たとえば、痺れは糖尿病でも出現します。手の痺れならば頚椎症、
動悸は心臓疾患、不整脈、高血圧なども疑ってください。不整脈は運が悪いと生命に関わりますし、高血圧も命取りです。大抵の女性からエストロゲンの守りが消える55歳以降、こうした身体のバランスは急速に微妙になっていきます。明らかに元気な55歳もいる一方で、明らかに病気な55歳も増えていくのです。
また、55歳以降は加齢の要素もあるため、生活習慣病のリスクがどんどん増していきます。おなじ不眠でも、糖尿、痛風での不眠の可能性があります。
不眠は一般には加齢で出現しますが、痛風や糖尿で出現していると厄介です。糖尿は本当に厄介ですから早いうちから警戒してください、ぼくも糖尿だけはかかりたくないと感じています。
糖尿で出る症状も多数。糖尿は警戒し、早めに発見して、食事のコントロールを
かつては中年男性の病気のイメージだった糖尿病ですが、昨今は女性の罹患も増えました。平成9年と28年の患者数を比較すると、まだ男性のほうが多いものの、女性患者も増えています。
高血圧、糖尿病、痛風、高コレステロール血症。これらはじわじわと命をとる病気ですから、早めに見つけておきましょう。
また、閉経後に急増するのが骨粗しょう症。検査を受け、なるべく早い段階で治療を始めたい病気です。
このように、閉経は「加齢への入門編」のスタートです。人生100年時代、ここからもう50年の間身体を健康に保つ必要があります。なるべく早い段階で今後の人生の健康を保つための心がまえを始めてください。
お話/新見正則医院 院長 新見正則先生
1985年 慶應義塾大学医学部卒業。98年 英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2008年より帝京大学医学部博士課程指導教授。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は乳がん患者に対するセカンドオピニオンを中心に、漢方、肥満、運動、更年期など女性の悩みに幅広く寄り添う自由診療のクリニックで診察を続ける。がん治療に於いては、明確な抗がんエビデンスを有する生薬、フアイアの普及も行う。
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