コロナ後遺症、医師が警鐘を鳴らす「長い倦怠感」。感染した覚えがなくても「あり得る」理由とは
OTONA SALONE / 2022年9月4日 21時0分
コロナ罹患後、数か月たっても倦怠感が残り、体調が本調子に戻らない。そればかりか、頭にもやがかかったようなブレインフォグの状態が続く、咳が取れない、起き上がるのがしんどいなど、症状の終わりが見えない。そんな「コロナ後遺症」の訴えが増えているそうです。
「コロナ後遺症は確定診断が難しく、治療法も見出しにくいため、医師も手探りの状態です」。そう語る新見正則医院・新見正則先生と、漢方治療に詳しい+kampo(プラス漢方)の代表薬剤師・笹森有起先生にお話しを伺いました。
市中にはコロナ後遺症難民がたくさんいるのに、治療法は手探りが続く
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新見正則医院 院長 新見正則先生
――新見正則先生は乳がんのセカンドオピニオンを中心に幅広く不調の相談を受ける自費診療クリニックをご開設です。先生の診療範囲でもコロナ後遺症が見られるということでしょうか。具体的にどのような症状を訴える方が多いのですか?
まず、猛烈な倦怠感。ブレインフォグと言われるもやのかかったような状態が続き、意思決定ができない、物忘れがひどいなど、社会生活に支障をきたす状態に陥ります。そのほか、咳が続く、月経異常、脱毛、嗅覚障害、頭痛、不眠。
医学的な視点から見れば、後遺症のうち、脱毛はいずれ生えるし、味覚や嗅覚の障害もいずれは治るものです。しかし、ブレインフォグなどメンタル系に出る症状は仕事や家事に深刻な影響を与えるうえ、予後もわかりにくいのが大きな悩みです。
多くは倦怠感を伴いますが、いっぽうで咳だけ、味覚や嗅覚の障害だけ、脱毛だけと倦怠感がない人もいます。そもそもコロナに感染した記憶がない人すらいます。ステルス感染や、PCR陰性だった等の場合、そのまま時間が経てば抗体値も落ちますから、コロナ後遺症だけが出てくるというケースも否定できません。他に見落としている異常がないか検査してルールアウトを続け、最後にコロナ後遺症の診断となる、非常にやっかいな病気です。
――いつ頃からコロナ後遺症の患者さんが増えてきたのでしょうか?
コロナ第7波以降、7月からは倦怠感を訴える人が格段に増えました。従来であれば、このように倦怠感が続くが検査を受けても異常は見つからない場合、代表的な病名は「うつ」「更年期障害」の2つでしたが、そこにもう一つ「コロナ後遺症」が加わったイメージです。
「咳が続いて慢性気管支炎に移行してしまった」というような具体的診断のつく後遺症状を別として、実は7月以前のぼくは「コロナ後遺症」に対懐疑的でした。医師は経験的に、この世にはごく少数ながら常識では考えられないほどの「休みたがり」がいるのを知っているからです。ですが、経営者やフリーランスなど、休むことそのものが明らかに不都合な人たちからも後遺症の声が上がようになりました。確かにこの症状はあります。
――先生の患者さんでは、実際にどのような症例がありましたか?
いちばんひどかった例が43歳の女性です。もともと更年期障害で継続的に受診していた患者さんなのですが、2月に第6波に感染してから調子が戻らず、現在もまるで慢性疲労症候群のような事態に陥っています。最初のうちは「更年期障害が酷くなったんですかね」と本人が冗談にする余裕もありましたが、そのうちあまりの辛さに「もう死んでしまいたい」と口にするところまで悪化しました。
彼女の場合、主訴は「重力に逆らえない」レベルの倦怠感です。布団から起き上がれず、肩より上に手が上がりません。髪も洗えませんし、ちょっとでも動くと疲れ果てて何日も動けなくなります。手に力が入らずペットボトルの蓋が開けられない、食べ物も飲み込みにくいと、辛くて絶望するような症状です。この方は、国立精神・神経医療研究センター病院 コロナ後遺症外来の高尾昌樹先生に紹介し、いろいろな検査で他の疾患がないことをルールアウトしたうえでコロナ後遺症と診断をつけました。
――たとえば、私には月経異常を訴える友人がいます。生理とコロナ、一見関係が遠そうですが、そんな症状もコロナ後遺症として考え得るのですか?
考えられます。神経・ホルモン・免疫はそれぞれ相互に緊密に影響しあっています。そのため、コロナに罹患して免疫が下がれば一緒に神経やホルモンに異常が出てもまったく不思議はありません。このように、あらゆる症状が考えられるというのがコロナ後遺症のやっかいな点です。
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