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「妻とはレスなんだ」この言葉を吐く男が本当にレスである確率は20%程度しかない、知っておいて【不倫の精算#59】前

OTONA SALONE / 2022年9月6日 22時0分

後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。

「不倫」を選ぶ女性たちは何を考えているのか。どうして「不倫」を選ぶのか。

地方都市に在住し、恋愛相談家として幅広い世代の女性の悩みに寄り添うライターのひろたかおりさんが、垣間見た女性たちの胸の内を語ります。

【不倫の精算#59】前編

34歳、仕事のできるさわやかな女性が「後腐れがないから」と不倫を選んだ。でも…

Pさんは34歳。数年前まで県外で働いていたが、当時付き合っていた彼氏との結婚話が破談になったことで「何もかもがイヤになり」、地元に戻ってきたと本人から聞いていた。

今は契約社員として市内で有名な会社に勤務しており、順調に仕事をこなしているのは感じていた。

ランチで行くお店を相手に合わせ、メニューの内容と金額をあらかじめ把握して「こんな感じですが、どうですか?」とこちらに確認し、会計は席でお金をまとめてレジでさっと済ませるスマートさが、「仕事でもこんな風に優秀なのだろうな」と思わせた。

 

「営業スマイルですよ」と言うがいつもにこにこと明るい笑顔で気さくに会話ができる彼女は、都会とはいえない地元でも付き合う男性に困ることはないだろうと思った。だが、現在交際しているのは既婚者で、不倫関係は2年になると聞いたときは素直に驚いた。

 

「どうして不倫なんか」と言うと、

 

「後腐れがないじゃないですか。

そのときぱっとホテルに行って、次はとか今後はとかあまり考えなくていいから楽ちんです」

 

淀みなく答える様子からは、配偶者がいる男性と肉体関係を持つ自分への嫌悪は感じられなかった。

 

そのPさんから「別れました」と連絡をもらい、話を聞くためにランチの約束をした。

 

不倫男性の10人に8人が言う「よくあるセリフ」。彼女もまたハメられていた

待ち合わせたお店はこちらが彼女の食べたいものを聞いて決めたお店で、いつものように個室を予約していた。

 

改装が終わったばかりというきれいな店内を見回し、「わあ、前はもっと薄暗かったですよね」と軽い口調で話すPさんには、不倫相手と別れたばかりという悲壮感はなかった。

 

部屋に落ち着き注文を済ませたところで、「そういえば、彼のことですけど」と彼女のほうから切り出し、顔を上げると暗い影を落とす瞳とぶつかった。

 

「奥さんがね、妊娠したそうです」

 

先ほどのはしゃいだ声とはまったく違う低い調子は、光を失った瞳とともにやっと心の痛手を伝えてきた。

 

「そうなんだ」と返すと、

 

「私には、奥さんとはしてないって言ってました。

嘘ばっかり」

 

「……」

 

その話は以前に聞いていた。

 

「妻とはずっとレスだから」

「今さら愛情もないし、君のことしか考えてないから」

 

そんな言葉を吐かれたとこちらに言いながら、

 

「ま、不倫相手にはそう言うのがマナーですよね」

「本当のところはわからないけど、乗ってあげないと」

 

と顎を上げてふふんと笑っていた彼女を思い出す。

 

「よくある話だよ」と言うのは簡単だが、この言葉は彼女にとって軽すぎるなと思い、

 

「不倫でも、嘘をつかれたら悲しいよね」

 

と静かに返した。

 

「別に悲しくなんかないですよ」

 

次に届いたPさんの返事は、想像と違う方向に飛んでいた。

 

彼女には、こちらの気遣いのセリフすら痛みになる。不安定な心の内側は

はっとしてPさんの目に視線をやると、こちらを射るような強い光が見えた。

 

「ムカつくだけです。

結局、奥さんともやって私とも楽しんでたってことじゃないですか。

嘘ついてコソコソする男って最低」

 

初めて耳にするPさんの怒りを含んだ声は、押し殺していても痛々しさがあった。

 

「……そうだね」

 

「乗ってあげないと」と言っていた自分は忘れているのだなと思い、ただ頷く。

 

「だから、悲しくはないです。

勝手に決めないでください」

 

「……」

 

ずしん、と心に鉛を投げられたような重い衝撃が走り、「気遣い無用」の文字が浮かぶPさんの顔から目をそらす。

 

つらくて痛くてたまらないとき、聞いてくれる人の言葉すら追い打ちになる。

優しさがかえって毒となって相手の心を蝕む例は、これまでもたくさん見てきた。

 

今はどんな言葉も届かないとわかり、聞く側に徹することを決めた。

 

彼女は「こんなもんですよね」と自嘲するけれど、深く傷ついた心は隠せない

黙り込んだこちらに気づき、Pさんは少し気まずそうに眉を下げ

 

「お腹すきましたね」

 

と小さな声で言った。

 

視界に入るPさんの指の、いつもはきれいに塗られているだろうネイルに剥げた箇所が見えて、何とも言えない気持ちになった。

 

「しょせん不倫だし、いつかは別れると思っていたんです。

ただ、こんな裏切りは本当にムカつくし、だったら最初から奥さんともやってるって言えよと思って」

 

言い訳のように気持ちを打ち明けるPさんの声は、冷静だが怒りが深いせいでくぐもっていた。

 

「……」

 

「まあでも、不倫する男なんてこんなものですよね」

 

まさに嘲笑と呼ぶにふさわしい歪んだ笑みを浮かべるPさんは、相当に傷ついていると感じた。

 

 

 

 

≪恋愛相談家 ひろたかおりさんの他の記事をチェック!≫

 

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