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男性育休を取れなかった家庭が「取った夫婦に永遠に差をつけられる」シンプルな理由

OTONA SALONE / 2022年9月30日 21時30分

オトナサローネは40~50代女性の「更年期」「セカンドキャリア構築」のほか、30~40代の「育休復帰」「男性育休」、そして「夫婦関係」について取材を進めています。

さて、夫婦関係についての取材を通して浮かぶ疑問が「ずっと仲良く助け合っているご夫婦」と「割と早い段階から離婚秒読みのご夫婦」、違いはどこで生まれるのかという点です。

妻の側から離婚を切り出すケースを見ると、高い割合で「出産後のワンオペ育児の恨みが忘れられない」という声が聞こえます。つまり、ワンオペが起きない場合は夫婦円満が続く確率が上がるのかもしれません。

そこで、男性育休取得率75%、1年を越える取得者も複数いる企業にご協力いただき、「男性育休を取得した夫」に対する「妻の視点」を詳しく聞き取ってみました。

 

22年4月の法改正で10月からは「出生時育児休業(産後パパ育休)」が制度化されている

福岡に本社を置く株式会社ヌーラボはプロジェクト管理ツール「Backlog」などのソリューションを提供する中堅ITテック。拠点は福岡のほか東京、京都、シンガポール、ニューヨーク、アムステルダムにあり、社員数150人程度。コロナ禍で勤務地要件を撤廃したため、社員の60%弱が福岡に居住し、他は全国17都道府県に広がっています。

 

「もともとテックカンパニーはエンジニア採用が事業を左右します。職種の特性上男性が多くを占めるエンジニアはもちろんのこと、どんなライフスタイルの従業員にとっても働きやすい環境を整えることで、より志の高いメンバーが仲間になってくれます。、そして、みんなが最高のアウトプットを出してくれるという好循環が生まれます。そんな好循環を作り上げ、回転させていくのが私たち人事系部門の役割です。当然ながら、男性育休はかなり早い時点で取得が始まっていました」

(人事部 吉田さん)

 

男性育休制度は2019年に自民「男性の育休義務化をめざす議員連盟」が安倍首相(当時)に提出した提言が境目となり、2020年度以降はコロナによるリモートワーク普及も後押し、2022年の法改正で一層の進捗を見せています。 IT企業はその性質上これらの数年先を走っていると考えられ、その分だけノウハウや声の蓄積も進んでいます。

 

クリックで拡大/出典・厚生労働省「雇用均等基本調査」

 

こんなに違うとは…?妻からは「夫に対する感謝の言葉」しか出てこない

そんな中、ある意味結論ともいえる「男性育休を取得した夫の妻のコメント」をまずご紹介します。取得期間が長くても短くても、一様にこれだけの「感謝」が並びます。逆に言えば、男性育休を取得できなかったご家庭は、本来受け取れたはずのこれだけの「感謝の貯蓄」を妻から得る機会を逸したと考えられます。

 

「育休を決めてくれてすごくありがたかったです。大歓迎という気持ちしかありませんでした。育休を取ってくれたことで、夫婦の関係はより良好だと思います」

(内田桂子さん・41歳 夫の育休取得時期22年8月〜9月 1か月)

 

「初めての育児だったので、育休を取るよと言われたときは、2人で分担してやっていけると思い不安が軽減されました。産後の身体的に辛いときに、沐浴、爪切り、夜ご飯、買い物、夜のミルクをはじめとして、家事全般をやってくれたことは感謝しかないです。今後の欲を言えば、制度として妻の妊娠中のつわりが辛い時の男性の休暇取得ができるようになると嬉しいです」

(高木勝秀さんの奥様 夫の育休取得時期21年11月〜22年5月 6か月)

 

「元々とても仲がよい夫婦だと思いますが、夫の育休取得でさらに絆が深まりました。今後も色々なことが起きると思いますが、いつでも家族というひとつのチームで課題に向かえるだろうなという信頼があります。また、『産後1ヶ月が寝れない、って聞いてたけど、実際4ヶ月の時の睡眠退行ヤバかったよね。3時間でいいから寝たいって思ったよね』と、一緒に乗り越えた共通の思い出として、大変だった記憶を笑いながら話せることが嬉しいです」

(國廣慈さん・32歳 夫の育休取得時期20年4月~ 21年4月 13か月)

 

 

対する男性側「思い切って休んでよかったこと」とは何なのか?

そもそも日本は休みを取りにくい風土を持つ上、たとえ組織が休みを許したとしても休む間の業務調整にかなりの労力を割く必要があります。「そこまでするなら自分は休まず仕事をしていたい」「ただでさえ休むことで昇進が不利になりそうなのに、準備までしてリスクはとりたくない」と二の足を踏む人がいるのも事実です。そんな中で「敢えて休んでよかったこと」を聞いてみると…?

 

「子供の成長をそばで見られたこと。困難なことを夫婦で相談しながら解決できたこと。自信を持って育児ができるようになったこと。お互い頼ったり相談したりを重ねてこられたので、夫婦の絆が強まりました。父になって、自分よりも妻や子供や世界の人々の幸せのためにどうするべきかを深く考えるようになりました」

(二橋宣友さん・32歳 育休取得時期21年10月〜22年3月 5か月)

二橋宣友さん&穂乃実ちゃん

「妻の第二子出産に伴って、入院のときに長男と二人きりで毎日を過ごしました。育児や家事、保育園の準備など全てを担い、長男と二人で過ごせたことは宝物です。また、家族が増えたことで、育児や家事の大変さを身を持って知りました。その経験から家族や妻への感謝がよりできるようになりました。 」

 

(谷山鐘喜さん・37歳 育休取得時期21年8月〜21年12月 4か月)

 

他にも、子の成長を一緒に楽しむことができたことが最大の喜びというコメントが並びました。

 

新生児の育児、やってみて理解できた「妻の地獄のしんどさ」

いざ休むと心に決め、職場の引継ぎができたとしても、当然ながら育休はいいことばかりではありません。そもそも育児は想像よりもはるかに心身を削られる作業で、育休から復帰してきた女性たちは軒並み「仕事って本当にラク」「私も仕事だけしていたい」「少なくとも大人は仮にミスをしたとしても話が通じて意思疎通できる」と口にします。この「見えている地獄」に対する男性陣の感想は…?

 

「大変だったのは、赤ちゃんの夜の睡眠になかなか苦労して日中も常に寝不足だったこと。赤ちゃんの朝寝と昼寝になかなか手こずったこと。我が家は先に妻が復帰したので、その後の育休期間に一人で日中赤ちゃんを見なければいけなかったこと。でも、日々成長する子どもと妻との時間を持てたことで、家族のチーム感が強まりました」

(國廣輝夫さん・32歳 育休取得期間20年4月~21年4月 13か月)

國廣輝夫さん&お子さん

 

「日中9時から24時まで、おむつ替え・ミルクを担当しましたが、それだけでも大変すぎてあんまり『よかったこと』を感じる余裕がなかったです。3時間おきでおむつ替え・ミルクをあげないといけなかったことは本当にしんどかった」

(内田優一さん・41歳 育休取得時期2022年8月〜9月 2か月)

内田優一さん&悠翔くん

 

「腰痛、肩こり、身体的疲労……。でも、子どもの成長全て、家族のみんなで過ごす時間を得られたのでその甲斐はありました」

(高木勝秀さん 育休取得時期2021年11月〜2022年5月 6か月)

 

「育休中は義理の実家で暮らしていたので、何かと気を使いました。でも、子どもの世話に集中でき、短いながら少しずつ成長していくのも見られたのは得難い経験です」

(川端慧さん・33歳 育休取得時期22年1月〜22年3月 2か月)

 

 

ですが、仕事は大丈夫だったのでしょうか? 育休復帰後に起きたことは?

このように、「地獄は地獄だが、辛さと幸福がセットになっている有意義な地獄だった」という意見が共通する男性育休。では、いざ男性が休むと決めたあと、また復帰してから、職場ではどのようなことが起きたのでしょうか。

 

「業務引き継ぎ資料作成、業務の自動化など、自分が不在の間も他のチームメンバーだけで仕事が回せる仕組みづくりはしましたが、やはり評価に影響が出たり、信頼を失うかもしれないことが不安でした。ですが、仕事復帰後はより総合的な目で仕事を捉えるようになり、限られた時間の中でどう働くべきかや、家族を養うために何をするべきかをより考えるようになりました」

(二橋宣友さん・32歳 育休取得時期21年10月〜22年3月 5か月)

 

「私の場合、職種上、身を持って育児を体験することで育児の大変さや難しさを知る必要があると思ったために育休を取得しました。子を持つメンバーが多く、互いにその大変さや気苦労を理解しているからか、他のメンバーの家族事情なども自分事として考えられるようになったと思います。 そのため、仕事で何かトラブルが起きても、以前に増して当事者の気持ちが理解ができるようになりました」

(谷山鐘喜さん・37歳 育休取得時期21年8月〜21年12月 4か月)

 

「同僚の男性が育休を取得していたことが、取得しようと思ったきっかけです。初めての子育てで分からないことが多く、夫婦一緒に力を合わせて育てていけたらと思いました。 また、妻が里帰り出産をしないため、妻の産後ケアもできればと考えていました。私1人しか出来ない業務は抱えておらず、優秀なチームメンバーだったので業務上の不安はなかったのですが、1人減ることで業務の負荷が上がることが不安でした。復帰してみたらチーム体制が変わっていたことに驚きました」

(高木勝秀さん 育休取得時期2021年11月〜2022年5月 6か月)

 

「上の子4歳、2人目の子どもの出産時、妻は仕事が休めなかったので私が取得しました。会社の同僚もたくさん育休を取って前例があったのも大きかったです。仕事はチームメンバーに引き継いで、休み中に自分が業務することはなかったのですが、復帰後は子どもの夜泣きで睡眠不足の日が多く、以前より肉体的な疲労感が多い気がします」

(川端慧さん・33歳 育休取得時期22年1月〜22年3月 2か月)

 

やはり育休取得前の「仕事の準備」は一定以上は必要です。これらは社員に対するバックアップ体制が強い会社だからこそ実現できている部分もありますが、これから職場で1人目の育休取得者となる方は参考になる点があるのではと思います。

 

果たして、男性育休を取得したご家庭は離婚リスクが減るかどうか?

事前の予想を上回って賛否の「賛」で埋め尽くされた男性育休の取得感想ですが、最後に「離婚リスクが減るのでは」と質問しました。2名の女性陣からのコメントをご紹介します。

 

「間違いなくそうだと思います。子育て、特に産まれて間もない時の子育ては不安もあり、心労もあると思います。その時のサポートがあるかないかは大きいと思います。周りで、ご主人が育休を取得出来なかった友人の話を聞いているとそう感じます」

(内田桂子さん・41歳)

 

「共感します。『自分だけが大変な思いをした』『そのとき、あなたは分かってくれなかったよね』という思いは、よほど納得できる理由がないと心の中にくすぶり続け、『どうせこの人は私の大変さを分かってくれない』という思いに繋がるのではないかと思います。夫の長期育休取得はまさに『一事が万事』だったと感じます、私自身のことや家族のことを普段から大事に思ってくれているからこその決断で、その姿勢が育休取得、積極的な育児に表れたという感覚です」

(國廣慈さん・32歳)

 

組織が変わらないのなら、休める環境に転籍することも視野に入れる時代がきた

そもそも、育児は1人で行うものではなく、核家族化が進む前の日本では同居の祖父母を含めた環境で子どもを育てていました。これまでの「ワンオペ」が歴史的に見ても異常だったと言えます。

 

22年4月には法改正により企業には周知・意向確認義務が課せられ、10月からは出生時育児休業(産後パパ育休)もスタートしました。しかし、すべての職場がすぐ簡単に長期休めるようになるわけでもなく、移行は徐々に進んでいくのでしょう。逆に、移行に前向きではない組織に属しているのならば、その組織への帰属そのものを考え直してもいいのかもしれません。

 

会社づとめは最大でも65歳までの有期のもの。ですが、家族の関係性はその後もずっと永続します。人生90年時代、定年後にも20年以上の時間がある中で、休みを取らなかったことで失う家族との信頼関係があるのならばそれは取返しのつかない大きな損失です。

 

私たちはいま、単なる育児にとどまらず「幸福な人生のために」男性育休を取得できるべきと捉える時代にいるのだと感じました。

 

 

▶【あわせて読みたい】 いよいよ「男性の育休取得」が常識に?厚労省に改正育休法の背景を聞きました

 

≪OTONA SALONE編集部 井一美穂さんの他の記事をチェック!≫

 

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