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坂東眞理子さん×八木亜希子さん 女性は50代からどう生きる?「女性の覚悟」対談

OTONA SALONE / 2022年10月6日 20時0分

人生のしまいどきがひたひたと近づいてきた気がして不安を感じる人も多い50代。その世代の女性たちがこういう本を待っていたと口をそろえるのが坂東眞理子さんの新刊『女性の覚悟』です。坂東さんと、50代まっただ中の八木亜希子さんに女性の生き方について話していただきました。

 

昭和女子大学理事長・総長 坂東眞理子 (ばんどう・まりこ)
●1946年富山県生まれ。東京大学卒業後、総理府(現内閣府)入省。埼玉県副知事、オーストラリア・ブリスベン総領事、内閣府初代男女共同参画局長などを務め退官。現在、昭和女子大学理事長・総長。『女性の品格』『70歳のたしなみ』『幸せな人生のつくり方』など著書多数。

 

フリーアナウンサー 八木亜希子 (やぎ・あきこ)
●1965年静岡県生まれ。早稲田大学卒業後、フジテレビジョンにアナウンサーとして入社。看板アナウンサーとなり活躍する。2000年3月に退社。以後、フリーアナウンサー、タレント・女優としても活動。ニッポン放送の「八木亜希子 LOVE&MELODY」に出演中。

 

気がつくと50代に。ちょっと焦ってます

八木 「覚悟」という言葉が胸にずんときたんです。まさに私の世代がもたなくてはならないものだなって。

坂東 この本は50代の女性を意識して書いたんです。八木さんは50代後半ですよね。

八木 57歳です。あっというまに。

坂東 テレビ局のアナウンサーからフリーになられて、女優や司会業もなさって。今、まさに脂が乗っているんじゃないですか。

八木 前向きにおっしゃっていただき、ありがとうございます。でも正直言いますと、行き当たりばったりの人生でして。

坂東 大変な競争の中から局アナとして採用され、順風満帆に歩んでこられたように見えますけど。

八木 いやいや。まだ女性は、ちょっと社会経験をして結婚してと考えられていた世代で、もう死語ですけど、腰かけ気分な人も多かった時代ですから……。

 

坂東 その価値観、根強いんですよ。私たちのときは、女性の採用がなかったり、長く働けない職場も多かったんです。それで私は、自分には向いていないなと思いながらも男女対等であるとされる公務員を選んだのだけど、……折に触れ、女性に対する差別や女らしさを期待する価値観には悩まされました。女子アナは華やかなイメージですよね。

八木 そう思われるんですけど昭和最後の入社で、当初はお茶くみも私たちの仕事でした。退職したのは、12年目の34歳のとき。ずっと忙しく働いて燃え尽きた気がして、一回、立ち止まり、ちょっと違う形で社会と関わっていく仕事を探そうと思い切ったんですが、同時に、こんなに長く仕事をするつもりはなかったという気持ちもあったんです。

坂東 それが今もこうして働いていらっしゃる。

八木 ええ。気がつくとこの年齢になり、あとは衰える一方だと焦り始めていたときに、『女性の覚悟』に出合い、また希望が見えた気がしました。老後、人間関係、孤独……私の中にあるさまざまな不安とどう向き合うのか、人生の先輩に一つひとつ、教えていただいた感じがしました。

 

 

先々ではなく、今の自分を見つめることで前向きに

坂東 50代は迷ったり不安になったりするんですよ。初めて老いに気がつく時期ですし、人生のステージが変わる。

八木 坂東さんは私のこの年で、公務員から大学にキャリアチェンジなさったんですよね。

坂東 ええ。それまでの経験とか通用しないまったく別の世界でしたから、とても不安でした。この年で、新しいことにチャレンジするのは難しいんじゃないかと思いました。でも今になってみると、50代なんてほんとに若くて、いろんな挑戦ができるんです。

八木 力強いお言葉。

坂東 八木さんが退職した34歳の頃、今になって思えばものすごく若いと感じませんか。それと同じよ。八木 でも不安って、とてもやっかいですよね。人生を真剣に考えて、まじめに生きようとする人ほど、先のことを考えて、不安になってしまうんじゃないでしょうか。

坂東 そうだと思いますね。不安の正体は、まだ起こっていない先々のことなのね。親が倒れたらどうしよう、仕事がなくなったら暮らしていけるのか、とか。将来起きるかどうかわからないことで自分を苦しめるのではなく、今自分に何ができるか、何をしたいかということを考えるほうがずっと前向きだと思います。

八木 それには状況に応じて柔軟に切り替える力というか、覚悟も必要ですよね。著書の中の『むつかしい人にならないでお人好しになる』というのもそうですよね。この言葉、すごく印象的だったんです。

 

坂東 経験を重ね、価値基準ができると、人はそれを当たり前で全員に通用すると思い込む。この基準を「それは○○でしょ」と頭ごなしに若い人に言ったりして、怖い、むつかしい人になってしまうの。

八木 若いときは意見を言えばほめられたりしていたのに、あるときから、普通に言っているつもりなのに、引かれたりして。知らず知らずのうちにむつかしい人になることってあると、私も実感します。

坂東 こちらが軽い気持ちで言っても、若い人たちは重たく受け止めたりしがちです。

八木 そうなんです。なんか私、疎ましい人になってない?って。

坂東 それに気がついているのは、八木さんが言葉に敏感だからだと思うの。気づかずやり続けていると、敬して遠ざけられてしまうんです。だから年を重ねたら意識してお人好しに振る舞わなくてはならないと思います。

八木 勇気をもって上の人に言うより、そっちのほうが難しいかも。

坂東 どこかでギアチェンジをしなければいけないんですよ。若手のうちは鋭い突っ込みも歓迎されるけど、年を重ねたら、受け入れる側に変わっていくんだろうと思います。同時に「ほめる力」を身につけてほしいんです。誰かがいいことをしたときに、「あ、すごい」「助かったわ」と口にする。若い人をたしなめたり教えようとしたりするより、ポジティブな言葉をかけることのほうがずっとやる気を引き出せる。ほめると、周囲が変わっていくんですよ。

 

 

 

年齢を重ねてから「学ぶ」という道も

坂東 八木さんはアメリカでも暮らされたんですよね。

八木 フリーになって2、3年経った頃、海外で学びたいと思い、ニューヨークに行ったときに、たまたま赴任していた夫が案内してくれて、それで結婚することになって。ひとりで海外に住むつもりだったので、え、結婚で?とも思ったんですけど。

坂東 大学院に行かれたとか。

八木 最初はほぼ専業主婦でした。でも夫はひとりで何でもできる人で、私はもともと出不精なので、座敷童子みたいに家にいて、「お帰りぃ」と。なんかしたほうがいいと大学院に進んだのですが、夫が帰国することになって私も帰ってきました。ほんとに、行き当たりばったりですみません。

坂東 アメリカの、特に大学院は社会人も多いから、刺激を受けたでしょ。

八木 学部生のときとは全然違いました。学ぶことがほんとに嬉しくて面白かったんです。

坂東 年を重ねて学び直す人は、今後増えていきますよ。自分のお金で通っているから熱心だし、人生経験も問題意識もある。同じことを学んでも若いときとは違うのね。知らないことを知る、できなかったことができるという喜びも深い。それが人を内面から輝かせてくれるんです。実務・実社会で役に立つ知識やスキルも身につけられますし。

 

 

選択肢はあっても、人生はひとつしか選べない

八木 私たちの覚悟が足りないって、もしかしたら女性の場合、選択肢が多すぎることもあるのかなって思うんです。今は、ばりばり働いている人もいれば、専業主婦の道を選ぶ人もいる。子育てなど家庭の事情で仕事を休み、状況が変わったら再び働くとか、出たり入ったりしている人もいる。女性の働き方は多様で正解がないですよね。

坂東 そのとおりです。自分の人生はひとつしか選べません。あれもこれもはできないんです。50代で迷うのは、充実した仕事や素敵な暮らしをしている人もいるのに、それにひきかえ私は、みたいに思ったりすることもあるからかもしれませんね。

八木 そうかも。隣の芝生は青いってことわざも知っているのに。

坂東 でもそれはおろかなことですよ。今、自分がもっているものの価値を認めずに、自分の幸せに気がつかないのは本当にもったいない。

八木 坂東さんはそんなふうに思ったことがないんですか?

坂東 若い頃は心を乱していました。自分はこっちを選んだんだからこれでいいと、どこかであきらめた。それこそ、いくつもの人生は選べないから。

八木 今、思い出したことがあるんです。私、着なくなった服を友達にあげて、あげなければよかったと思ったことがあるんです。このスカートにあのブラウスがぴったりだったのに、って。とても親しい友達だったので、一回服を返してもらったことがあるんですよ(笑)。

坂東 まあ。返してもらったの?

八木 ええ。ところが着てみたら、やっぱり今の私には合わなかったんです。自分の中で、人にあげた洋服を理想化していたみたいで。

坂東 服だけじゃなく、いろいろなことがそうなのね。手放したときには自分のものじゃなくなるのね。

 

危機はチャンス。でも疲れたら休んでいい

八木 私の母は87歳で、今も洋裁を生徒さんに教えているんですよ。生徒さんに支えられながら元気にやっています。

坂東 それは素晴らしいですね。私の目標ですよ。

八木 私が3年前ドクターストップで仕事を休まざるをえなくなったとき、その母が、「さ、ここから何が出てくるか、楽しみだね」って励ましてくれたんです。仕事の関係者に迷惑をかけてしまい、もう社会復帰はできないんじゃないかと落ち込んでいるうえに、入ってくるお金もゼロ。これからどうなるのだろうと思い悩んでいたときに。

坂東 さすが、人生の達人でいらっしゃる。

八木 先生の本にも「危機はチャンスだ」「案ずるより産むが易し」とありましたよね。

坂東 危機を乗り越えると、ネクストステージが必ず待っているんです。次のステージ、見つかりましたか。

八木 私は9カ月お休みさせてもらったんです。気持ちが変わったのは3カ月経った頃でした。それでも私は生きていくし、人間関係で変わらないものは変わらない。変わったものは、変わるべくして変わったのかもしれないと思えました。それがネクストステージだったのかもしれません。

 

坂東 大変だったでしょう。でも、得がたい経験となりましたね。

八木 疲れたら休むことも覚えました。たくさんの方々に迷惑をかけながら、堂々とそれを言うのもどうかと思いますが。休むと見えることがあるんです。自分の代わりっているんですよ。同時に待っていてくれた人もいました。それがすごくありがたくて。自分に向いていることもわかったし、自分が本当に求められていることがわかった気がします。

坂東 体に気をつけつつも、これからも働き続けてもらいたいなぁ。

八木 この経験を通して、報酬を得ることは大事だけれど、それ以上に人の役に立っていることが私にとっては働くことだなと感じたので、そういう意味なら死ぬまで働けると思います。今日、励ましのお言葉をいただきましたし。坂東さんは90歳までだって働きそうですね。

坂東 80歳までは働くと言っていますけど、その年になったらそうね、90歳と言いだすかもしれないわね。生涯、人の役に立てるように。

八木 でも疲れたら休んでくださいね。休むのはお嫌いでしょう。ずっと走り続けていらした感じがします。

坂東 わかりますか? 休む覚悟はねぇ……まだないかもしれない。人生いくつになっても新しい課題が見つかるものですね(笑)。

 

 

『女性の覚悟』 坂東眞理子著 1350円(税込) 主婦の友社

「50代、60代はまだまだ若い。可能性はいくらでもある。けれど責任をもって生きていくという覚悟が必要です」という坂東さんのエールがぎゅっと詰まった一冊。すぐにも実行できる、しなやかに人生を生き抜くための方法やヒントがいっぱいです。Amazon1位(女性問題部門)などヒット中!

取材・文/五十嵐佳子   撮影/柴田和宣(主婦の友社)

 

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