【実録】バリバリ働く私がパニック障害を起こして「悲劇のヒーローを気取るな」と言われるまで
OTONA SALONE / 2023年1月25日 20時30分
こんにちは、日本最大級の不安・パニック専門のコミュニティ「nicot+」を運営する公認心理師、鈴木義一です。
今日は、バリバリと働くキャリアウーマンを夢見て、新卒で就職した会社でパニック障害になってしまったAさんのお話をします。僕はAさんのお話を聞いて、もしかしたら、自分の限界を超えて、頑張りすぎた人のうちのひとりだったのかもしれないなと思ったのですね……。
というのは、僕はパニック障害になった人を何人もみてきたのですが、「頑張り屋さん」で「真面目な人」が圧倒的に多いからなんです。
一生のうちでパニック障害になる人は、10人に1人と言われています。Aさんのような「頑張り屋さん」で「真面目な人」が、パニック障害になってしまうのは、他人事ではないのです。以下、Aさんの自分語りでお伝えします。
Aさん 東京都在住、32歳。実家で両親と同居中。このお話の当時は23歳で、都内の女子大卒業後、広告代理店会社に勤務。まじめでコツコツ仕事をする姿が評価を受け、順調にキャリアを積み上げていた。
負けん気が強く、とにかく必死だった就職活動
こんにちは、ご紹介いただきましたAです。私は大学生の時からキャリアウーマンを夢見ていました。一方で周りの友達は、結婚するまでの腰掛けのつもりで会社を探している人が多かったイメージ。昔から、負けん気が強く、就職活動で職種を選ぶときも「数字で評価される営業職」に強くあこがれを持っていました。
出身大学が女子大だったからか、営業職を希望している学生が少なく、大学のキャリアセンターに行っても、大学に寄せられている求人は「一般職」のものばかり……。当時は、新卒採用は「総合職」と「一般職」にわけられているのが一般的で、女性なら一般職の方が採用されやすい時代でした。
キャリアアドバイザーの方にも「なぜそこまで営業職にこだわるのか」まで言われましたが、そのときのとにかく、男性に引け目をとらないキャリアウーマンになりたい、という気持ちだけが強くありました。新卒で入社した会社は、やっと勝ちとったものだったので、やる気に満ちていたんです。
新人賞を獲得し、アポは一日5件。キャパオーバーであることも気づけなかった
研修期間を終え、営業職に配属されてからというもの、数字を上げるためにとにかく必死でした。とにかくたくさん電話をかけて、アポイントが取れたら商談をしに行くという営業スタイルで臨み、幸い、多くのアポイントをいただくことができました。
新人賞を獲得して、さらにやる気は倍増。とにかく、同期に負けたくないという気持ちでいっぱいでした。普通ならば午前1本、午後2本のアポイントで多くても3本くらいが限度なのですが、1日に5件くらい詰め込んでこなしていました。
はじめてパニック障害を発症したのは、そんな「やる気」がマックスだったころでした。
ある日、商談が終わって次の会社へ向かおうとする道すがら、電車の乗り継ぎを急いでいたときに、ふっと頭が真っ白になってしまいました。気づいたら道に倒れ込んで、過呼吸の状態に。血を一気に抜かれたようになって身体に全く力が入らないんです。息を吐きたいのにヒューヒューと入ってくるばかりで。
とにかく上司に報告しなければと思って、電話をかけて「道で倒れてしまって」とまでは説明できたのですが、「今どこにいるの?」「何が起こったの?」「これから訪問するお客様にはご連絡できてる?」などの簡単な質問に答えられないんです。脳みそのすべてが吹っ飛んでしまったかのような感覚に陥りました。
電話ができないから、メールか何かで伝えないと思っても指も動かない。びっくりするくらい手が冷え切っていました。そうやってあたふたしている私に、普段から何かと頼れる先輩が電話をかけてきてくれました。そして「あなた、過呼吸を起こしてる。助けに行きたいから、なんとか今いる場所だけでも教えて」。上司にあれこれ矢継ぎ早に聞かれても、なにも答えられなかったので、先輩からの限定的な質問には助けられました。
そして「迎えにきてくれるんだ」と思った瞬間から、安心したのか少しずつ息も整ってきました。過呼吸を起こしてから、落ち着くまでは2時間くらい時間が経過していたように思います。
その週末、私は生まれて初めて心療内科に行きました。医師は普段どんな仕事をしているのか、過呼吸が起こったときの経緯などを聞いてきました。そのときはじめて、1日5件の過密アポイントを一ヶ月休みなしで続けていたことに加え、過呼吸が起こった日の1週間前くらい前から残業が続いていて、朝の4時ごろまで働いていたことに気づいたんです。
そんなこと当時はわかりませんでしたが、いま振り返れば、頭も身体もとっくにキャパオーバーになってたんでしょうね。とにかく、私のように「頑張って、褒められること」が元気の元になるタイプの人は、パニック障害のリスクがあると認識して、身体と心に負荷をかけないないようにしてほしいです。
前編ではAさんがパニック障害を起こすまでの経緯をお伝えしました。会社がどのような対応をしたのか、それにAさんがどう応じたのか、この先の顛末は後編にまとめます。
【後編】「パニック障害?薬ですぐに治るよね」軽く考えていた過去の私にたった一つ伝えたいこと
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