青木さやかさん。私たちの育児と仕事と、その他いろいろの「しんどさ」の根本って何なんでしょう?
OTONA SALONE / 2023年2月21日 11時0分
青木さやかさんファンのみなさま、こんにちは。待ちに待ったさやかさん4冊目のエッセイが2月21日に発売されました。
WEBザテレビジョンの人気連載を大幅に加筆した『母が嫌いだったわたしが母になった』、今回のテーマは「母と娘」。その冒頭からさっそく繰り広げられる母娘の掛け合いの、まるで目の前で起きているかのようなありありとした音と体温に驚かされます。
個人的に印象に残ったのは、母という立場にどこか戸惑いを持ちつつ、でも自分の感情とも必死で折り合いをつけながら進む、修行僧と戦士が同居するかのようなさやかさんの心情の変遷です。
中学生という難しい年齢に差し掛かった娘さんとの日々を振り返っていただきながら、「子どもとのよき関係の保ち方」についてお話を伺いました。
とにかくここまで大変だった。「死なない」「倒れない」がゴール、疲弊し続けた日々
――母親への複雑な思いを吐露したエッセイ集『母』から約1年半、こんどは現在中1の娘さんとの日々にまつわるお話です。
書き始めたのは娘が中学に入ったばかりの夏でした。それより前のできごとは記憶をたどりながら書いていますが、あまりにも忙しくあっという間に時間が過ぎていく日々だったので、昔のことを思い出すのは難しかった。でも、そんな中で印象的な感情だけはよく覚えていました。「やたら大変だった」とか、「死なない」「倒れない」がゴールだったとか(笑)。そして、娘は瞬間瞬間、すごくかわいかったな、とか。
――私は最初のほうでいきなり泣いてしまいました。決して泣ける感動作として書いてはいないと思うのですが。
昔を思い出しながらいろいろ書いていくと、私もすごく辛くなりました。相当大変だったんだなと思います。大変だったのはやはり、シングルになってしばらくの間と、なる前、なったとき、なったあと。つまり全部ですね。
シングルになったのは娘が2歳、いちばん手がかかる時期でした。同時に私はパニック症にもなったので、本当に大変でした。仕事はいちど断るともう入ってこないという恐怖感もあるので、どこまでやれるのかな、でも生活もあるし、どういうバランスがいいのかなと探り探りの日々でした。今でも生活、体力、娘との時間、この3つのあやういバランスを取りながら、迷いながら暮らしています。
――育児の難所っていろいろあると思うのですが、振り返るとどこがいちばんでしたか?
娘が小学校2年生のとき、私は初期の肺がんの治療をしました。そのあと親が亡くなったこともあり、本当に忙しくて、娘のことがおろそかになっていたなと感じます。当時はパニック症の影響もありましたし、長くママ友に預ける時期もありました。中学に入った今のほうが一緒にいる時間が長く、いま取り返してる!という気持ちです。
――コロナ禍はいかがでしたか? 子どもとずっと家に閉じ込められて、気が変になりそうだったというご家庭も多いのですが。
コロナ禍に入ったとたんに舞台のお仕事がなくなり、家にいる時間が増えました。いろいろ大変だった中ですが、私たち母娘は向き合う時間が増え、私はといえばはじめて「ネコってこんな感じなんだ」と気づいたりしました。「こういう模様してたんだな」とか、「昼間はこういうところで寝てるんだな」とか。娘は公園で近所の子たちと友達になり、遊べるようになりました。近所の目って防犯にもなるので、どこにどういう人が住んでいるのかはものすごく知りたい。そんな、これまでよくわからなかったことがわかるようになりました。
中学に入学した娘に心は向けて、身体は離して。「難しい時期」がやってきた
――テレビ、執筆、講演、舞台と幅広くお仕事をなさっていますから、かなりハードな毎日ですよね。中学はお弁当で。
いろんな雑誌で「ワーママの私はこうしてバランスをとっています」という記事を読むたび、時間の使い方や暮らし方はやはりその人の収入と環境によって全然違うんだなと感じます。私なりの生活レベルと、娘との時間と、体力のバランスを常に常に考えながらの手探りなので、万が一このバランスが崩れたら、私が倒れるのか、仕事のパフォーマンスが落ちるのか、または娘に何か問題が起きそうになるのか。
――子どもなりの自立に向かう時期ではと思います。いまどのような難しさがありますか?
中1とはいいますが、まだまだよく見ていないとだらっとしたり、とんでもないことをしでかしたりします。遠巻きに見て手は伸ばさないけれど、ママは近くにいるよとサインを出しつつ。その距離の保ち方が難しいです。体力的に大変な時期は過ぎましたが、見守る難しさはまた別です。体力は使わないけれど、かといって離れていいわけではなく、心だけを娘の傍らに置いておく感じです。時間的な比重が仕事に振れることもあるけれど、心のどこかに娘がいます。きっと私は永遠に娘のことが心配であり続けるだろうと思うんです。
――迷いながらとはいえ、作中で浮かび上がってくる娘さんとのいい感じの距離感は、子どものいるママたち全員が「うらやましい」と感じると思います。
自己肯定感がとっても低いのがよく働いたのかもしれないのですが(笑)、私はかなり客観的に私たち母娘の関係を見ているところが自分のよさだと思っています。自分のことも、娘のことも、ある程度客観的に見ています。娘に対して「あの子とつきあわないほうがいいよ」などの否定を言ったことは一度もなく、いろんな人に娘を任せています。近所の子どもに私は「変わったオトナ」と呼ばれていますが、「よかったねオトナにもこんな変わった人がいるって知ることができて!」と言い返しています。
――いま、言っている姿が浮かびました(笑)。さやかさんが「よそゆきのママ」をやらずいつも素でいるだろうことは作中からも伝わってきます。
はい、子どもの前でよそゆきの顔はしていないですね。娘の友達が遊びに来ているときでも、ちょっとだらしない恰好で平気で出て行きますし。きちんとしなさい!みたいなことは言わず、友達の前で急に踊り出したり、演劇の稽古をしだしたり、夕飯おにぎりでいいかな私ヨガに行きたいんだけどって交渉したり。そりゃ、変わったオトナって言われますよね(笑)。
▶【後編】子どもを「不必要に怒らない」ため、先輩から伝授されたとっておきの「シンプルな考え方」とは
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