ずっと受け身のセックスばかりだった、けど。【40代、50代の性のリアル】#2(前編)
OTONA SALONE / 2023年4月22日 22時30分
「セックスしたら、相手のことを好きになっちゃうんです。それでつらい思いをしたこともあるけど、いまでもそれが治らなくて」
アヤコさん(42歳)は、これまでをふり返ってそう切り出した。シンプルなようでいて細部まで気を配ったファッションとツヤのあるショートヘアが、いかにも長年、都心部で派遣社員として働く女性らしくてスマートだった。
けれど、その口調はどこか頼りない。歯切れが悪いわけではない。自分がたどってきた道は正しかったのか、これからどうなるのだろうかと自問しながら話しているからだろう。これまでのセックスは、ひと言でいうと受け身。主体性はほとんどなかったという。シリーズ2回目は、そんなアヤコさんの遍歴をうかがう。
気持ちだけが宙ぶらりんに
「いま、婚活アプリを使って恋人を探しているんです。会ったのはふたりで、そのうち年齢が近かった男性はマメに連絡をくれたので、合っているうちにつき合ってもいいかなって気になったんです。それで、3回目のデートで求められるままセックスを。事前に『セックスしたら、あなたのこと好きになっちゃうかもよ』と伝えていたし、その後は案の定、私の気持ちがどんどん彼に傾いていったのですが……彼からの連絡が途絶えるようになっちゃって」
思えば10代のころは想いを告白し、それを受けて交際がはじまった。けれどあるときから私たちは、それをしなくなった。あいまいに始まり、あいまいなままセックスをする。ときにその順序は逆になり、気づけば「なんとなく交際開始」になったり「なんとなく自然消滅」になったりする。
関係を持った直後は積極的に連絡を寄越してきたという、その男性。けれどアヤコさんが本格的な交際を望むようになるとフェードアウトしていった。あとには、アヤコさんの気持ちだけが宙ぶらりんのまま残った。バツイチで中学生の息子がいるアヤコさん、再婚は特に望んでいない。これからの時間を一緒に歩いていけるパートナーがほしかった。
求められたから、応じてきた
「でも、私がその彼に求めていたものが大きすぎたのかなっていう反省もあるんです。過去にすごく好きで、いまでも忘れられない男性がいて、誰とセックスしてもその人と比べてしまう。その人もそれをなんとなく察していたのかな、って」
忘れられない男性ーーユウスケさんと出会うまで、アヤコさんは決してセックスが好きではなかったという。積極的に自分から求めたことはなく、「愛されている」という実感がほしくて求められれば応じていた。けれど、セックスすればその相手に情がわく。
当時の職場でユウスケさんと出会ったとき、アヤコさんには10年以上生活をともにしている男性がいた。20代で結婚、夫の不倫、揉めた末の離婚を経験したあとに出会ったその男性、リュウジさんとは夫婦も同然で、子どももずっと父のように接していた。
▶何度か結婚を考えたことはあったけど
「何度か結婚を考えたことはありました。子どもが小学校にあがるときとか、そういう節目のときに。彼はどの仕事に就いても長続きせず、『落ち着いたら籍を』といってはいたんですが、状況は何年も変わらないまま。それはそれで彼の人生だからいいんですけど、ただ、長いあいだ一緒に暮らしているうちに、わざわざ結婚する意味が見なくなったんですよね」
交際がはじまったころは頻繁だったセックスも、そのうち回数が減り、月に一度すればいいほうという状態が長くつづいた。それもリュウジさんが求めてきたときに「仕方なく」していたのだとアヤコさんはいう。
「家族になった彼とのあいだに、セクシャルな空気をあんまり漂わせたくなかったんですよね。それまでは男性が望めば受け入れてきた私でしたが、彼とは毎日一緒にいるから『いつでもできるよね』『今日でなくてもいいじゃん』という気持ちから断るようになり、そのうち彼も誘ってこなくなりました。最後の3年間ほどは完全にセックスレスでしたね」
そうしているうちに、リュウジさんがうつ病を発症した。
40代で知った劇的なセックス
新しい職場は出張が多く、激務に追われていた。そのせいだとしか思えない。病院に行くよう勧めたり仕事を辞めたほうがいいと助言したり、彼を支えようといたアヤコさんだが、当の本人は仕事を辞める気もなく、次第に症状を重くしていった。
自分の想いが通じず、彼の帰りが遅くなると「何かあったのでは」と気をもむ日々。けれど子どもの手前、自分が引きずられてはいけないと気を張ってもいた。
「そんなとき、仕事のつながりでユウスケさんに出会ったんです。彼女にフラレたばかりで落ち込んでいる彼を励ますうちに、好きになっちゃって。私、自分から人を好きになることがそれまでなかったんですよ。常に受け身で、好きになってくれた人とつき合ってきました。でも、彼は違った。お互いに徐々に距離感が縮まり、彼の傷も回復してきたのを間近で感じていました」
ユウスケさんとのセックスをふり返り、アヤコさんは「劇的だった」という。
「いままで自分がしてきたセックスが正直どうでもよくなりましたね。求められて『私でよければ』ぐらいの気持ちでしていたから、中身は重要ではなかったんです」
>>後編「ふたりでしている、という感覚」に続く
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