コロナ第9波襲来中だが「その他の感染症も急増している」。免疫専門家が語る「これからどうすべきか」
OTONA SALONE / 2023年6月21日 12時30分
全国で「ヘルパンギーナ」「RSウイルス」に感染する子どもが急増しています。どちらも東京都でも昨年に比べて高い伸びを記録し、新型コロナウイルス(以下コロナ)発生以前の2018年と比較しても急激な増加を描いています。
オトナサローネ編集部も例外ではなく、この5月から6月にかけて51歳編集者は自分自身が水ぼうそうに罹患。また、41歳編集者は保育園に通う娘がヘルパンギーナに罹患しました。
果たして私たちは「アフターコロナの感染症予防」についてどう考えればいいのでしょう。外科、漢方、免疫3分野でのトリプルメジャー医、新見正則医院 院長 新見正則先生に解説していただきました。
コロナ禍の「マスク暮らし」で我々のレジリエンス(回復力)は大きく落ちたと考えていい
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東京都のヘルパンギーナ定点報告数推移 2022年(青)2023年(赤)出典・東京都感染症情報センター
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東京都のRSウイルス定点報告数推移 2022年(青)2023年(赤)出典・東京都感染症情報センター
――コロナワクチンはすでに6回目がスタートしています。接種はどうすればいいでしょう。また、これから先、ワクチンも含め、私たちは何をどう回避していけばいいのでしょう。
まず、感染症は「絶対かかってはならないもの」「かかってもいいもの」どちらであるかを考えたほうがいいでしょう。
コロナも「ダイヤモンドプリンセス」の頃の、いったいどういう病気なのかがわからなかった段階ではゼロコロナ施策が正解でした。しかし、インフルエンザ程度だなとわかった現在では、ワクチンも打ちたい人だけが打てばいい。打たない場合は免疫力(健康力)を下げない努力をしっかりと行いましょう。
ぼくは免疫の専門家です。この立場から極論を申し上げると「命にかかわらない感染症はさっさとかかったほうがいい」。ずっと逃げ回っていると免疫ができませんから、現在のように隔離を終えて集まるといっせいに感染が始まります。感染症は「いつの時点でかかるか」が勝負であり、ある程度治療方法も確立されたらさっさとかかったほうがいいのです。このことをメディアがきちんと発信せず政府の忖度に終始している点は苦言を申し上げたいです。
感染症の分類も死者数の順にはなっておらず、「5類」であっても結構な死者が出ます。たとえばインフルエンザは全数把握をせず定点観測ですが、高齢者の多い現代、日本の年間死者数158万人(2022年)のうち1%くらいがインフルエンザをきっかけとする死でもおかしくありません。コロナの死亡者報告は、亡くなった方でコロナ陽性だった人のかずです。同じように計算すればインフルエンザでの死亡数も実は相当数になる可能性もあります。
交通事故での死者数は年間3000人ですが、事故死を恐れて外出しない人はいない。誤解を恐れずに言えば年間3000人はこの社会にとって許容範囲なのだと考えることもできます。このように、すべてはメリットとデメリットのトレードオフで捉える必要があります。
免疫は「ブースター感染」がないとどんどん落ちる。水ぼうそう、はしか、風疹への罹患もあり得る
――編集部では51歳のメンバーが水ぼうそうに罹患したことで全員が震え上がりました。彼女は出産時に水ぼうそう(水痘)、はしか(麻しん)、風しんの抗体値を検査していますが、それも15年前。15年たつと感染してしまうの?と。
罹患はお気の毒でしたが、免疫の説明をするには好例です。これらワクチンは1回2回と打ちますが、その後「ブースター」がかからないと免疫はどんどん落ちていってしまう。その証明のような感染がその方に起きました。
麻疹ワクチンは1968年に、風疹ワクチンは1976年に定期接種とされました。その後いろいろな変遷を経て、子どもの麻しん・風しんワクチンは2006年に再度定期接種化されました。水痘ワクチンは2014年に定期接種化され、今に至っています。
多くの人はそれ以降いちどもウイルスに暴露されずに暮らしていることでしょう。免疫は「感染はするけれど発症しない」という「ブースター」の状態を繰り返すことで強くなっていき、ブースターがないとどんどん落ちていきます。15年の間ブースターへの暴露がなく、ついに感染するところまで免疫が落ちたのだと考えていいでしょう。
麻疹風疹水痘のワクチン(MMRワクチン)は接種割合が相当に低い国もあるため、国内での罹患がなくなっても外から入ってくることは止められません。ですから、いざ海外から入ってくると突然全員が全滅する状態になっているのです。
これよりも致死性の高い感染症の中で、天然痘は撲滅できました。ですが、今になって万が一天然痘が発生したら、もう免疫を持っていない人類は全滅する可能性もあります。最近ではサル痘の発生時に話題になりましたが、こうしたリスクに備えて天然痘のワクチンは天然痘が撲滅された現在でもまだ生産され備蓄されています。
このように、ほとんどの感染症は過剰に遠ざけず、感染すれど発症しない「免疫が勝つ」状態を繰り返すのがいちばんです。ただし風しんは胎児に風しん症候群が出ますから、妊娠可能な女性は全員ワクチンを打つといいでしょう。男性もワクチンを接種していくほうがいいという意見もあります。
――帯状疱疹は水ぼうそうのウイルスが起こすと聞きました。帯状疱疹ワクチンは打つべきか、不要か、どうなうのでしょう?
帯状疱疹は神経に潜む水ぼうそうのウイルスが引き起こします。したがって、水ぼうそうに感染したことがない人は帯状疱疹ではなく水ぼうそうを発症します。帯状疱疹の最良のワクチンは水ぼうそうの自然感染です。編集部で今回感染した方は、この最良のワクチンを得ましたから、打つ理由がありません。
女性は妊娠時に抗体値を調べていますから、何年か前には抗体が「あった」という実感を持っていると思います。ですがその後ウイルスに暴露される機会はほぼなかったでしょうから、下がっている人もいるでしょう。どのくらい下がっているのか、こればかりは調べないとわかりません。抗体値が高い人はワクチンを打つ意味がないため、いちど抗体値を採血検査するのがベターではありますが、痛いのを1回で済ませたいなら直接ワクチンを打ってもいいです。
ぼく自身は接種するかどうか? そうですね、帯状疱疹が命をとる可能性は極めて低いので、ワクチンはまだ打たずに免疫力(健康力)維持に気を付けます。もう少し年齢を重ねて、免疫力の低下を自覚したらワクチンを打ちます。
つづき▶感染症に「かかりやすい人」、その原因って? ストレスのほかにも原因があるのですか?
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