更年期の尿もれ、子宮が腟から飛び出す子宮脱。出産経験や体型も関係している⁉
OTONA SALONE / 2023年9月25日 20時30分
人生100年時代といわれている今、女性の50代は人生の後半戦の生き方を見直し、からだを点検する分岐点といえるかもしれません。50歳を境に、女性ホルモンのバランスが大きく変化し、さまざまな不調を感じやすくなります。
オトナサローネ世代の不調の一因は、骨盤底筋(こつばんていきん)の衰えと女性ホルモンの減少が関わっています。
50年以上の長きにわたり、不妊治療、妊娠・出産、思春期・更年期医療で女性の身体と心に向き合い続けている産婦人科医・松峯寿美先生にお話を伺いました。
【50歳からの婦人科 #1】
骨盤底筋も加齢や女性ホルモンの減少とともに緩みます
![](https://otonasalone.jp/wp-content/uploads/2023/09/shutterstock_2063183480-400x300.jpg)
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骨盤底筋の衰えを招く要因は、加齢、女性ホルモンの減少、出産経験とその回数、日ご
ろの生活習慣の4つ。
これらの要因によって筋肉量の減少や筋力の低下が起こり、骨盤底筋のハンモックのような弾力や伸縮力が失われていきます。
特に閉経以降、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が止まると、粘膜下組織のコラーゲンが減少してしまいます。すると、腟や尿道を締める筋肉の組織が緩みやすい状態に陥るのです。
ただ、骨盤底筋の緩みには個人差もあります。
「尿漏れがひどくて、尿漏れパッドが手放せない」という人の場合、太りぎみで内臓脂肪が骨盤底筋を圧迫していたり、頑固な便秘に悩まされたりしている人が多いようです。また、日ごろの運動不足が原因で骨盤底筋の筋力が衰えているケースも少なくありません。つまり、骨盤底筋の強度には、日ごろの生活習慣が大きく影響するということです。
また、出産回数が多い人ほど、骨盤底筋が傷ついていて、ダメージを受けやすい傾向
にあります。特に大きめの赤ちゃんを経腟分娩した人、難産で分娩時間が長くかかった人は、出産時に受けたダメージが残り、更年期以降、骨盤底筋の緩みが現れやすくなってしまうのです。
骨盤底筋が年齢とともに変化していくということを知っておきましょう。
骨盤底筋の衰えが先々の〝骨盤底筋トラブル〞を招きます
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骨盤底筋の伸縮力が衰えると尿漏れを招き、さらに症状が進むと、子宮、膀胱、直腸の
位置が下がったり、腟の緩みを招いてしまったりするケースがあります。
また、骨盤底筋の緩みがひどくなると、大きく広がった腟内にこれらの内臓が下垂(かすい)したり、子宮が腟口から飛び出してしまう子宮脱(しきゅうだつ)になったりするなど、「骨盤臓器脱」を併発するケースもみられます。
私のクリニックには思春期から80代まで、さまざまな年齢の人たちがやってきますが、
尿漏れの相談にくるのは主に更年期から閉経以降の人たちです。そして60〜70 代以降の人たちの約2割が子宮脱を併発しています。
ある女性は、加齢で緩んだ腟から子宮が出てきた状態でした。家族の介護で日常的に腹
圧をかける動作をしていたことが一因だったのですが、彼女から「受診先がわからず、一人で悩んでいた」「女性として落ち込んだ」と打ち明けられたとき、命に関わることはないけれど、これは女性の尊厳に関わるトラブルだと胸が痛みました。
女性としてのQOLを生涯にわたって守っていくためにも、骨盤底筋の若さをキープしていくことが大切です。
『50歳からの婦人科 ~こころとからだのセルフケア~』
松峯寿美・著
高橋書店 1,485円
デリケートゾーンのトラブルとケア、尿漏れにも関係する骨盤底筋の変化やトレーニング法、骨のエイジング対策、全身のビューティーケア、こころの持ち方など……50歳からの自分自身をいたわりケアする方法を、読み物とイラストでやさしく紹介した一冊。
大切なのは、正しく知る、前向きにつき合うこと。50歳からはもちろん40代の方も知って欲しいことばかり。
【お話】
松峯寿美 (まつみねひさみ) 先生
1946年生まれ。産婦人科医。70年、東京女子医科大学院卒業。医学博士。(婦人科)とくに不妊治療、思春期・更年期医療に力を注ぐ。
卒業後は女子医大に10年間勤務、〝不妊外来〟を創設。80年東峯婦人クリニック(東京・木場)院長に就任。女性専門外来の先駆けとなる。著書やマスメディアへの登場、からだの不調で悩む女性へ向けた講演なども多数。
妊娠・出産・更年期・老年期まで、婦人科系QOL(生活の質)を保つ医療を実践。骨盤底筋トラブルの治療や子宮脱を改善する経腟手術も行い、高齢女性の健康管理を見守り支える一方、2018年3月第一回「日本産前産後ケア・子育て支援学会」では、大会長をつとめた。 女性の一生を支える存在でありたい、こころもからだも美しくいきいきと過ごせる人生であるように、との思いで日々診療に向き合っている。
※記事の内容は書籍刊行当初の情報です。
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