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「更年期は、これから迎える老化の予行演習だと思います」。美容ジャーナリスト・小田ユイコさんがたどりついた暮らし方は

OTONA SALONE / 2023年9月23日 21時1分

オトナサローネは同世代の女性100人がいまどのような更年期を迎えているのか、そのあり方を取材しています(ご本人の年齢や各種の数値は取材時点のものです)。

 

今回は美容ジャーナリスト・小田ユイコさんがご登場。華やかな美容の世界は、いっぽうでスケジュール・プレッシャー・業務量、どれをとっても極めてハードな世界。そんななか、小田さんはどのように自分の体調の変化とつきあってきたのでしょうか。

 

 

お話/小田ユイコさん

1965年生まれ、57歳。日本女子大学文学部卒業、主婦の友社に入社し、女性誌の編集者に。1998年、主婦の友社を退社し独立。美容ライターとして、女性誌各誌の美容記事の編集、ライティングに携わる。2005年、集英社のビューティ誌『MAQUIA(マキア)』創刊エディターに。2008年より、美容ジャーナリストとして仕事をスタートする。集英社『MAQUIA(マキア)』『LEE(リー)』『eclat(エクラ)』『BAILA(バイラ)』、世界文化社『家庭画報』ほかで美容・健康特集を執筆。女性誌各誌で美容コメンテーターを務め、自身の美容術も披露。

 

【100人の更年期#96】後編

「いよいよ本格的な更年期に入った」。最初に感じた変化は「気力の減退」だった

50歳、閉経間近、旅行に出るのがおっくうになっていたころ。夫の誘いでようやく京都の紅葉狩りへ。

「いちばん覚えているのは、一気に気力がダウンしたことです。40代に入ってからずっと、疲れやすさは続いていましたが、それまではなんとか気力で乗り切ることができました。でも突如として、それが『もうどうでもいい、仕事やめちゃおっかな、やめられるんならやめよっかな』という気持ちに変わったのです。そして、何よりそう思う自分にびっくりしました」

 

仕事そのものは20代からいままで一貫して「好きで好きでたまらない」という小田さん。しかし、このころ急激に仕事以外の外出が減りました。ご主人や友人との外出だけでなく、出かける気力がなくなったことで大好きだった一人旅も激減したといいます。

 

「ふと気づくと、あれ、私ずっと旅行してないな。夏休み何しようかなと思ってもしたいことが思い浮かばない。48歳ごろから徐々に、そんな変化が起きました。51歳の夏休みにはそれが極まって、秋にちょっと長い休みをとったのに、どこにも行きたくなくて、ずっと家にいたんです」

 

いっぽうで、仕事以外の生活習慣は大幅に改善しました。自律神経が危険と言われた38歳時点で加圧トレーニングをスタート、ほぼ週1ペースで続けていたことに加え、このころはランを始めていました。また、夜11時には寝て、朝4時5時に起きるという生活のペースもでき上がっていました。

 

「仕事の量も少しコントロールを始めました。私、本当に仕事が大好きで、いちど手をつけると自分の限界までやりたい。でも、それまで自分のキャパ150%で続けてきたものを、このころに100%にしました。これは大正解でした。おかげで運動をする時間もできたし、趣味のピアノも弾けるようになりました。料理にもよりいっそう手をかけるようになりましたし」

 

小田さんは40代後半から血圧が高めになってしまいました。女性ホルモン減少に伴う高血圧、脂質異常症はよく起きる変化ですが、血管が気になったという小田さんはこのタイミングで食事内容のコントロールにも着手。朝昼晩バランスよく食べるいっぽうで糖質を減らし、野菜とたんぱく質を積極的にとり、食べる順番もサラダを先に食べてゆで卵、スープの順にするなど工夫をこらしたそう。

 

次ページ▶それだけで更年期をクリアできるの?「もっとしていたこと」って?

好きで好きで仕方ない、麻薬のような「仕事」をなんとかして続けるために、だましだまし手綱をとってきた

54歳、閉経後。エイジングが顕著に。太りやすくなり、せめてもという感じで家事のあいまに青竹踏み。

「よく、ダイエットを始めても三日坊主でと落ち込む人がいますが、私の場合はすぐに何でも始めてみるかわりに、どうせできる範囲のことしかできないよねとあきらめてもいます。続かないものはがんばらずにすぐ見切りをつけちゃう(笑)。ファスティングもやってみましたが、うまくいかなくても、ま、別にいっか、と。そのかわり、できることを見つけるまでは迷わず何でもすぐ始めます。その中でできることだけを残して、できることの数を増やしていったのです」

 

運動だって、オリンピックに出るまで極めたいわけではない、楽しみたいだけであり、わざわざ苦労をしたいわけではない。そう合理的に考える小田さんがこのころ出会ったのがマラソンでした。

 

「ハーフマラソンは激やせした44歳のころに何度か出場していましたが、50代に入ってから香港マラソンに誘われて。北九州マラソンと、港区マラソンにも出場しました。でもマラソンってやっぱり疲れるし、当日に合わせて体調を整えることも必要。出走前の1週間はよく寝ないとならないので、睡眠のコントロールもすごく大変。さらに体重を2~3㎏落として、走る練習もしておかないと22㎞を走り切れない。出場したい気分にも波があるので、気力がうんと上がってがんばれそうなタイミングで出るようになりました」

 

でも、これは健康維持のためにワークライフバランスを考えて、というようなことではないんですよと小田さん。そもそも、自分を構成する100のうち80が仕事だとして、何が起きても仕事の80の部分を減らすという発想はなかったといいます。

 

「私はとにかく仕事が大好き。いちばん好きな、好きで好きでたまらない編集の仕事を続けていくため、体調コントロールにもなる趣味を探した、それがマラソンでした。私の体調管理はだましだましという言葉がいちばんぴったりきます。マラソンも、ワークライフバランス実現で趣味エンジョイ!なのではなく、自分に続けられそうな健康維持がこのくらいしかなさそうだな、という見つけ方でした」

 

その仕事もまた、大空を華やかに滑空することは志向せず、アンバランスでも低空飛行でもいいから、とにかく自分の好きな姿勢で好きな方向へ飛び続けることだけを考えてきました。

 

「美容分野を深めると、肌が弱い、健康を自慢できる肉体ではない、更年期症状に見舞われるなど『アクシデント』の実体験を持つことがよい取材につながります。不健康が悪いことばかりではないのもこの仕事の魅力。自分が実験材料になって記事を作ることで、多くのかたに共感いただき、わかりやすかった、役に立ったと喜んでいただけるからです」

 

取材を通じて出会いがあり、知識を得る機会もあります。自分の年齢なり体の変化に合わせて、そのときに知りたいことを調べていくことが楽しいと小田さん。

 

「私は新しい知識を得ること自体が大好き。自分の頭の中がダイナミックに変化していくこと自体が麻薬のようで、仕事をやめることができないんです。知らなかった!そうだったんだ!という瞬間がうれしくてしょうがない。この脳のワクワクをずっと保ちたいがために、自分の体の手綱をずっと握り、だましだまし走ってきた。いえ、あまりうまく握れていないですよね、でもそのことからも得るものがあるんです」

 

次ページ▶ところで、更年期っていつ「終わり」ましたか?終わりってはっきり感じるものですか?

気がついたら、ホルモン補充療法(HRT)からがんのリスクがほぼなくなっていた! 57歳でスタート

さて、ここのところ、主だった更年期症状は治まりつつあると感じる小田さん。

 

「更年期って、この波の上下に慣れることそのものなんですね。女性ホルモン量が劇的に落ち、変化を感じる時期ですが、私たちはこれ以降60代70代も引き続き老化を感じていくことでしょう。だからこそ、ドラスティックに変化を迎えるこの40代50代は、これからの老化で起きる変化に慣れるための訓練なのだと私は感じています。抜け毛は続き、水分量も減り、物忘れもひどくなるけれど、そうした変化に慣れていく時期なんですね」

 

とはいえ、更年期症状がおおむね過ぎ去ったと感じた昨年秋、猛暑のあと涼しくなったのに寝汗がひどくなり、毎晩夜中に目が覚めるようになったそう。慌てず「お、どしたどした」「誰かに聞いちゃお」と女性ホルモン治療のエキスパート・野崎雅裕先生を探し出し、取材しました。野崎ウイメンズクリニック(福岡市)で診療にあたる女性医療の名医です。

 

「すると、それが夜中のホットフラッシュなんだよと先生に言われて。私は51歳で閉経したので、5年後、つまり56歳で更年期は終わったと思っていたんです。ええ!まだ更年期続きますか?それはちょっとしたショックですよ?って落ち込みました」

 

それを野崎先生に相談したら、ホルモン補充療法(HRT)がいいよとアドバイスが。以前は踏み切れなかったHRTを57歳にしてスタートしました。

 

「すると、飲み始めて3日目に寝汗がぴたっと止まって。よく眠れるようになると体の調子もよくなりました。寝汗のきっかけが何だったのかよくわからないままでしたが、この業界は夏にお盆進行と新作紹介が重なってものすごく忙しいので、過労が原因だったのかもしれませんね」

 

以前はがんリスクが気になったHRTですが、2年前に低リスクの天然型ホルモン新薬が保険適用になりました。天然型黄体ホルモンは3カ月分で約9000円とやや高いものの、5年10年続けるのであれば保険内での選択肢があることは大切です。

 

「野崎先生に、ホットフラッシュ改善以外のHRTの効能も教えていただいて、女性ホルモンを足しておくといいことがいっぱいあるなと再確認しました。以前から知ってはいましたが、この年齢になり、自分ごととしてトラブルに直面したあとは深刻度が違います」

 

もしもこの仕事をしていなければ、昔の知識をアップデートする機会もなく、ナチュラルホルモンは高い、保険適用もないと思ったまま過ごしていたかもしれないと小田さんはいいます。

 

「また、以前は人ごとだった骨や血管のトラブル、肌や髪のうるおい、体の内側からの健康維持が、いまは自分自身のエイジング問題としてリアルに理解できます。いまはまだ必要ないなと感じたことであっても、その後情報に触れ続けることはとっても大事、知っておくことはすごく大事だなとあらためて感じました」

 

では、小田さんにとってHRTを始めたメリットは? 聞いてみると、ホットフラッシュが治まったことのほか、手足の冷えを以前よりはるかに感じなくなったこと、また、アイデア出しや企画立案など情報を編集する際のクリエイティビティや頭の回転速度が上がっていることを感じるそうです。

 

「クリエイティビティはこの年代で成熟するともいわれていますよね。以前、脳科学者の黒川伊保子先生を取材したとき、先生は『56歳からよ!』とすごくおしゃっていたんです。もしかして私も56歳からシナプスのつながりがよくなるかも!と期待していましたが、実際HRTを始めたあたりから実感するようになりました。薬の恩恵なのか、56歳という年齢のおかげか、どちらかはわかりませんが、とにかくアイデアを出すことが楽しいし、楽しくありたいとも思います。きっと黒川先生が言っていたことはこういうことなのかなって」

 

次ページ▶まだまだ続く不調の波、どういう心構えで向かい合っていけばいいのでしょう?意外な答えが!

こんどはテニスを始めました。そこで故障して「わかったこと」、筋トレの重要さ

55歳、テニスをスタート。コロナ禍で運動不足が気になり、テニスをスタート。HRT療法を始めてからは腰痛が消え、体力にも自信が感じられるようになって、より没頭できるように。

さて今日はたくさんお話を伺いました、ありがとうございます……とお礼を申し上げる直前、ここで小田さんから「私、最近テニスを始めたんです」と新たなネタが!

 

「いつでも行き当たりばったりだから、出会ってしまったことはどんどん始めるのですが(笑)。コロナ禍で大会もなくなって気分が変わり、それまでのマラソンから急に違う運動にシフトしたいと思い立って。急にテニスと出会ったんです」

 

ここでもまた急激なのめり込みを見せた小田さん、最近初めて足をねんざしたそうです。

 

「下手なりに楽しくなったタイミングで故障して、やりすぎたなと気づきました。膝のX線を撮ったら半月板が薄くなっていて大反省、理学療法士にリハビリを教わりました。脚のその他の筋肉を鍛えてとアドバイスを受け、実際にトレーニングしてみたら、膝への負担が圧倒的に減るんです。言われるままに足の前側、後ろ側と鍛えて伸ばしてしていますが、専門家に見てもらうのは大事ですね」

 

長く仕事を続けていきたい、そのためにテニスのような娯楽を健康管理の一環で取り入れていきたい、だからこそ体をアジャストする筋トレのような調整努力が必要なですねと小田さん。

 

「評判のいい整形外科で膝にヒアルロン酸を打ってもらって痛みを予防していますが、そのクリニックでは理学療法士の指導もセットになっていたのがラッキーでした。やってみると、そうういうことかと納得しました。筋トレってマッチョを目指すわけではなかったんですね。動かしやすい、自分がやりたいことを維持できる体を作るひとつの方法として筋トレがある。それはやったほうがいい、必要だと思いました。テニスをいつまで飽きずに続けられるかはわからないけれど、故障なく楽しみたいなら私たちの世代には筋トレがマストなんです」

 

たとえば小田さんの場合、スクワットの際に膝が揺れるため沈み込むとき力が入るのだそう。揺れながら落ちると負担がかかるため、揺れない膝を目指してくださいと言われて、とても納得したそう。

 

「体のどこを鍛えればいいかわかったことで、たとえば駅の階段の上り下りすら楽になったと痛感します。50代で半月板が薄いと言われてしまいましたが、でも、いま気がついてよかった。筋肉ってすごく大事だなと思うようになったので、もう少し積極的に何かやってもいいのかなと考えています」

 

更年期は絶対終わるから大丈夫。わくわくすることを1つでも多く毎日の生活の中で感じてほしい

「テニスもですが、ワクワクできることを保つこと自体を私はがんばっていきたい。ワクワクが昔と比べてどのくらい減ったかはわからないけれど、1日に1回でもいいから『今日これを知ることができてよかった!』と思うことを見つけたり、今日はいい原稿が書けたなと達成感を得たりと、どんなに忙しくても1日1回は何かいいことができた満足感を持ちたいなって」

 

人によってワクワクの源はまちまちでしょう。トイレを掃除したらきれいになってすっきり!気分がいい!というような気持ち、それがあれば多少の不調はあっても生きていけると小田さん。

 

「若い人に最近話すのが、年をとると不調が当たり前になるということ。だいたい引かれます(笑)。100%元気!という日は少なくとも私にはもうない。年齢を重ねるってそういうことなんですね。でもそれでも楽しく生きていけるんです。テニスで70代のかたと知り合うと、痛いところはないですか?なんて根堀り葉ほり聞いちゃいますが、でもみんな、ここからこういうことが起きるけど、続けられるよ!と、暮らしの中の楽しいことを見つけているんですよね」

 

できたことがうれしいと喜ぶ気持ちがきっとこれからより大切になっていく予感がすると小田さん。未来に何があるかはわからないけれど、できることをできると受け止めて喜ぶことが幸福のコツではないかと周囲を見ていて感じるそうです。

「更年期は、必ず終わるから大丈夫です。慣れていくから。これから先の老化に慣れるトレーニング期間ですから、難しくてもずっと自分の手綱をとり続けようという気持ちは大事にして。先々に向けて準備を心がけなくても、目の前にきたことにひとつひとつ向き合っていく、その行き当たりばったりで大丈夫」

 

いっぽうでHRTに関しては、野崎先生は早いうちからHRTを始めて老化をゆるやかにしたほうがいいと提言していますよね。40代半ばから始めることに賛成なのだそう。

 

「それもいいと思う。でも、早くから気をもまなくても、そのときがきたらやるべきことを体が教えてくれます。休めと体がいうなら休み、食べろというなら食べ、動けというなら動く。体が教えてくれることにすなおに従って過ごしてください。人間の動物としての節理で、年をとっていくことは止められません。でも、それを恐れる必要はないんです」

 

▶更年期はどう始まりましたか?>>>57歳「更年期が終わったあと」には何が起きますか?美容ジャーナリスト・小田ユイコさんの場合は

 

≪OTONA SALONE編集長 井一美穂さんの他の記事をチェック!≫

 

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