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乳房と卵巣、子宮を摘出。髪を失うことへの恐怖を取り除いて、がん治療にのぞんでほしい【乳がん体験談】(後編)

OTONA SALONE / 2023年11月23日 19時1分

前編「遺伝性のがん⁉姉に続いて私も乳がん…女性として見た目が変わることが恐怖だった」に続く後編です。

お姉さんの乳がんが契機となり、2014年「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」であることがわかった野中美紀さん。その後、乳がんが見つかり、42歳のときに左乳房の全摘出。翌年、乳房再建手術を受けたあと、その翌年に予防的措置として健康な右の乳房と卵巣・子宮をすべて摘出しました。

 

がん治療で脱毛してウィッグ使用。みずからウィッグ開発へ

右:SUMIKILの部分ウィッグ装着前、左・部分ウィッグ装着後

乳房の全摘出手術のあと、⻑期間のホルモン治療もあって髪の毛が抜けてしまったといいます。

「髪の毛は5割くらい抜けましたね。ドクターにはほかの人より早く抜けたと言われました。とくにトップの分けめが薄くなり、円形脱毛にもなりました。さまざまな医療用ウィッグを試しましたが、パッと見でもカツラとわかる見た目で途方に暮れていました。
悩んだ末、⻑くお世話になっていた美容師に相談したところ、ネットで買った自分に合わないウィッグをなじませてくれたり、髪型の相談に乗ってくれて。大丈夫、かわいくできるよと言ってもらえたことで救われました」

 

高額な人毛ウィッグがもっと身近になるように、ウィッグでも髪型を楽しめるように、自分にできることはないのだろうか。この経験から、人毛100%の医療用ウィッグを開発・展開するように。

病気が遺伝しているかもしれない娘のために、同じように悩んでいる仲間のために、利用者のことを第一に考えた医療用ウィッグを作りたいと思うようになりました。 ウィッグへの抵抗がない環境になってほしい。髪が抜けることへの恐怖や不安を取り除いて、安心して治療にのぞんでほしい。

ちょうど2020年コロナ禍で職場は待機状態になり、これはチャンスだと考えて 。自分が理想とするウィッグ作りを検討しました。前職で知っていた中国の工場に直談判し、日本に流通している人毛ウィッグのサンプルを取り寄せました。

日本市場3000憶円と言われるウィッグの生産はほぼ中国。ウィッグにも種類があって、人毛100%のウィッグはナチュラルな見た目で、カラーやパーマもできて1〜2年使用できます。でも、流通している人毛ウィッグは10万円〜30万円と高額なんです。
安価なのは化繊100%の人工毛ウィッグ。ただ、人工毛ウィッグはあきらかにウィッグだとわかったり、静電気に弱くて毛先からチリチリになり、数ヶ月で消耗してしまうなどデメリットがあります。人毛と人工毛のミックスもありますが、こちらも高いんです」

 

>>遺伝性乳がん卵巣がん症候群は遺伝の確率は50%。人毛100%使用の医療用ウィッグを開発、起業にいたるまでにどんなことが?? また、現在の活動は?

髪を失う恐怖をなるべく少なくしたい…そのために感動体験を届ける

人毛100%ウィッグはヘアアイロンの使用も可能

ユーザーのことを第一に考え、コストを最低限に抑えた人毛100%の医療用ウィッグを開発。2022年に株式会社を設立し、オンライン販売をスタートしました。

「人毛100%のウィッグは今までもありましたが、なるべく安く、そして人毛ウィッグに美容師さんの手を加え、一つひとつカットした状態で届けるサービスを3万円台から提供しています。ネットで買って、届いたらすぐに身に着けられる。人毛ウィッグなら髪型やカラーを変えることも、アレンジもできます。また提携美容室では、実際にウィッグを被った状態でカットすることも可能です。普段通りの美容室の体験を、ウィッグでもサービスとして提供しています。

 やっぱり、髪のことを一番に相談したいのは国家資格を持っている身近な美容師さんですよね。ウィッグというものを販売するだけでなく、培ってきた技術と知識を提供してほしい。そんな私の想いに賛同してく れる店舗は、現在全国に23店舗。今後、全国に提携美容室を増やしたいと思っています。 最低でも各県に1店舗。万が一病気になっても、近くに提携美容室があれば心強いはず」

 

病気を正しく知ることで、正しく治療できる

退院のたびに連れて行ってもらった湘南の海

今年、人材紹介コンサルに転職。起業だけでなく、兼業でキャリアを積んでいます。また、遺伝性乳がん卵巣がん当事者会にも参加。

がんサバイバーとして、社会復帰して起業したロールモデルになれたらと思います。女性として、同じ体験をした女性が前向きになっていけるような発信をしていきたいですね

2015年遺伝性乳がん卵巣がん症候群当事者会の特定非営利活動法人に姉と参加しました。現在は姉が副理事を務めています。私の娘は現在23歳、姉の娘は20歳。現在はふたりとも母親が乳がんであること、遺伝性乳がん卵巣がん症候群であることを知っています。娘には高校入学後に伝えました。まだ遺伝学的検査は受けてはいません。遺伝の確率は50パーセントと言われています。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合、進行も早いため亡くなる方も多い。でも、 遺伝学的検査は簡単にはできないんです。家族歴でリスクが高い人から優先して、病院側が検査できるかどうかを決めていると聞きます。娘には、近いうちに検査を受けた方がいいこと、知ることが大切なこと、遺伝カウンセリングをすすめています。

私たちにできることは、がん治療への恐怖や未来への不安をなくすこと。髪が抜けるのが嫌で抗がん剤を拒否したり、全摘出を拒否して命を落としてほしくない。年齢が若いほど、将来のことを考えて判断を誤ってしまうケースもあると思います。正しく知れば、正しく治療できます。そのために、当事者としての情報を発信することで、治療までのタイムロス、悩む時間をなくしたいと思っています」

 

野中さんはがん患者の家族の立場も、がん患者本人も経験しています。パートナーや家族に求めることはどんなことでしょうか。

「一緒に泣かれるとつらいですね。目先のことではなく、がん患者本人の目線を上げるコミュニケーションをしてもらえたらと思います。正直、気持ちは本人しかわからないこと。いっしょに落ち込むのではなく、2年後旅行しようよなど先のことを話してほしい。望むことも正直に言ってもらったほうが楽だと思います」。

 

人毛100%の部分ウィッグは薄毛や白髪に悩む女性にも人気だという。注文後、美容師が自毛になじみやすくカットし、指定のカラーリングがされた状態で届く。ナチュラルにボリュームアップすることができ、さまざまなアレンジが楽しめます。ホルモン療法をしている方や更年期障害で薄毛や脱毛に悩む方に、人毛ウィッグは手軽で自然なものであるということが広まっていくことを願っています。

 

≪オトナサローネ編集部 木村美穂さんの他の記事をチェック!≫

 

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