「つかえねえ女だな」「センス悪すぎ」暴言だけで暴力はない「サイレントモラハラ」どう対処する?
OTONA SALONE / 2023年11月15日 21時11分
夫婦問題・モラハラカウンセラーの麻野祐香です。直接的な暴力・暴言のないモラハラ「サイレントモラハラ」に苦しむSさんのストーリーの後編です。
優しく我慢強く尽くす女性はモラハラ加害者にロックオンされやすい
モラハラ被害者になる方の特徴として、経済的な自立が困難な人だけでなく、自分が悪いと思ってしまう人 、自己肯定感の低い人、尽くすことが愛だと信じている人 、自分に自信がない人、また精神的自立の意思が弱い人があげられます。
相手に対して正論を言うことができ怒りを表現できる人は、モラハラの対象にはなりません。モラハラ加害者は、自分に都合の良い相手を探す能力に長けています。「結婚前は優しかったので気づかなかった」とみなさんが口を揃えておっしゃいますが、自己肯定感が低い人が多いため、事を荒立てる勇気もないので別れるための強い気持ちを持つことができません。
モラハラ夫は優しい時期(ハネムーン期)とモラハラ時期を繰り返すのが特徴なので、夫が普通の状態に戻っただけで「夫は治ってくれたんだ。」と期待しホッとします。でもモラハラは治ることはないので、またモラハラ時期がきて辛い思いを繰り返します。モラハラ期がくるたび、自分の態度が悪い、自分が至らないせいだと思い込んでしまうのです。
夫のこの態度こそが「サイレントモラハラ」だと気づけたきっかけは同僚からの指摘
Sさんはある日、昼休みに同僚の会話で「私の夫はモラハラだけどあなたの夫は?」と聞かれました。「うちは暴言を言わないのでモラハラじゃないの。でも夫が怖い」と返事をしたところ、「それってサイレントモラハラっていうのよ」と教えてもらったそうです。
「本当に驚きました。自分がモラハラ被害者だったなんて夢にも思っていませんでした。夫が怖い、夫に怒られないように、夫の機嫌が悪くならないようにいつも気を使い神経をすり減らしていたのも、モラハラ被害者の特徴だと教えてもらいました。 夫の帰宅した時の表情や空気感を見て、今日は怒っている、今日は不機嫌だ、どうやって対応しようかといつも緊張しているのが普通でしたが、これがモラハラ夫から受ける心の状態だったのですね」
モラハラ被害者は、モラハラ夫の言葉や態度で人間性を否定され、「自分はダメだ」と思い込んでしまいます。自分には価値がない、でもこんな自分を妻にしてくれている夫に申し訳ない、もっと頑張らないといけないとより自分を追い込んでいってしまうのです。
経済的にも心理的にも自信がないので、夫の元から離れることなんて考えることもできない状況に追い込まれていきます。 そして不安、混乱、緊張感の状態で暮らし続けると、うつ病などの心の病を発症してしまいます。
これはモラハラだとわかったはずなのに…「暴力がないだけマシ」と自分に言い聞かせてしまう
Sさんのご主人は、自分で何かを言う前にSさんがやっておかないとたちまち不機嫌になります。忙しい朝、スーツやYシャツなど一揃えセットで出しておくのもご主人に怒られないためでした。
「でも、ネクタイの色が気に入らないと『センスねえな』と、直接目を見て言うわけではないのですが、明らかに私を否定する言葉を呟きます。夕飯のおかずが気に入らないときも『またこれか』とひとりごとを言いながら『はぁ』とため息をつき、不味そうにおかずをつつきながら食べます。箸をバンっという大きな音でテーブルに置き、黙って席を立ってしまうのです」
Sさんはむなしさ、悲しさ、恐怖がないまぜになって心が壊れそうになっていましたが、サイレントモラハラは直接の暴言や威圧、責める言葉がないため、暴力もないならば自分が頑張ればいいんだと心に言い聞かせて耐えていました。
「こんな状態は絶対におかしいはず、夫婦とは言えない、それはわかっていても自分の頑張りが足りない、自分がきちんとできていれば夫は私に優しくしてくれると思っていたのです」
モラハラ夫は時々「きちんとやればできるじゃないか」「いつもこうだったら俺も怒らないんだぞ」「俺だって怒りたくて怒っているんじゃない、君が普通の主婦になれるように教えてあげているんだよ」と言う言葉で妻を上手に操ります。 その操りがモラハラ被害者を洗脳し、夫が怒るのは自分が悪い、自分が完璧じゃないから夫の機嫌が悪くなると考えてしまうのです。
大抵の場合、モラ夫が「改心する」「変わる」未来はない。耐えるか、逃げるか
全て自分が悪いから夫が怒ると思ってしまうのは明らかに洗脳です。 夫婦とはどんな場合であれ必ず対等なのです。どちらかがどちらかを支配し、思い通りにしようとすることはあってはならないことです。Sさんは指摘されたことでモラハラに気づき、態度を変えてみたと言います。
「夫がサイレントモラハラだとわかった後、すこし冷静に観察できるようになりましたが、結局夫のあの威圧は治らないという現実に気づきました。会話のキャッチボールなんて夢のまた夢、私が話をしても絶対に会話になることはありません。ですが、私は私の態度を変えてみました。ひとりごとで文句と不満を言う夫のことが今までは怖くて、怯えて何も言えませんでしたが、怯えるのをやめてわざと明るく『どうしたの?』と聞き返すようにしたのです」
Sさんの態度が変わっても、ご主人からの返事はなく、舌打ちが返ってくるだけだそうです。でも、自分がモラハラ被害者だとわかったことで、どんなに頑張ってもこの人は変わらないから仕方ないと割り切ることができたとSさんは言います。
「こんなのは夫婦の姿じゃないとわかっていますが、娘がせめて高校生になるまでは経済的な不安があるので、すぐに離婚は選択しません。暴力や暴言がないことが救いと思い、自分の心が壊れないように上手に夫と接していこうと思います」
Sさんはカウンセリングで自分の状況をしっかりと把握でき、夫の言葉や態度を気にせずスルーすることが今の自分の生活にとっては最善だということに気づきました。モラハラ夫と離婚したくても、諸事情ですぐに離婚に進めない場合は、このようにモラハラ夫の言葉や態度を心に入れずにスルーする力を養うことが大切です。もともと優しい方がモラハラターゲットにされるので、夫の言葉や態度を鵜呑みにして自分を責めないように努力をするのです。
サイレントモラハラは傍目にはわかりにくいものです。自分でもモラハラかどうか気づけない方がたくさんいます。 暴言がなくても、夫が怖い、夫の顔色ばかり窺ってしまう、辛い、と思う場合は、まず間違いなく同じようにサイレントモラハラの被害にあっていると気づいてください。サイレントモラハラは気づかずに、心を壊されていきます。壊れる前に、自治体などの無料相談のほか、私のようなカウンセラーを頼り、声をあげてください。必ず誰かがあなたを助けてくれます。
つづき>>>「モラハラだとは気づきませんでした…」巧妙な言葉で妻の心を静かに破壊する「サイレントモラハラ」の恐怖
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