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紀子さまは涙を拭いたティッシュを「私が預かります」と受け取った。映画『グリーフケアの時代に』中村監督が舞台挨拶で体験したこと

OTONA SALONE / 2023年12月6日 21時10分

12月1日に封切られたドキュメンタリー映画『グリーフケアの時代に』。初日には秋篠宮皇嗣妃殿下紀子さまが臨席されました。舞台挨拶を終えた中村裕監督にお話を伺いました。

 

「映画初日に紀子さまがお越しになる」と5日ほど前に連絡が。そこから大騒ぎに

映画『グリーフケアの時代に』封切り上映。写真前列左から、中村裕監督、秋篠宮皇嗣妃殿下紀子さま、音無美紀子さん。

自分が前に出る仕事ではないドキュメンタリーディレクターにとって、そもそも映画の舞台挨拶は心理負荷の高い瞬間なのだそうです。さらに今回は初日に皇族のご臨席を仰ぐと聞き、この上なく緊張したと語る中村さん。

 

「初日の5日前くらいに、妃殿下がご覧になりますと連絡をいただいて。そこから大騒ぎになりました。何を話せばいい? 服は何を着る? 髪は切ったほうが? でも当日はごくごく普通の映画の初日でした。紀子さまも一般客といっしょの席。ご入場の際にはアナウンスがありました」

 

上映後、舞台挨拶が終わってから別室へ移動し、中村監督、ナレーションの音無美紀子さん、プロデューサーの益田祐美子さん、音楽の日景健貴さんのほか、作中に登場した附属池田小児童殺傷事件遺族・本郷由美子さんと、日本グリーフ専門士協会代表理事の井出敏郎さんに紀子さまからご質問がありました。

 

「隣のホールへ移動、10分ほどの予定でしたが、結局立ち話のまま30分近くご質問をいただきました。紀子さまは社会心理学の研究を続けておいでですから、グリーフケアというテーマそのものに興味をお持ちなのかな、と感じました。この映画もご自身でご覧になるとお決めになったのではと」

 

というのも、想定外なことに、ナレーションはどなたがお書きになったのですか、どうやって画像に合わせて読むのですかと、具体的な作成プロセスについてのお尋ねがあったのだそうです。

 

「書いたのはぼくです。台本があって、タイムがきたらぼくがボタンを押すと、音無さんが読んでいる別室でランプが光ります。ナレーションはそう録るんです、とお話ししたら、興味を持たれていたようでした。どのように映画を作ったのか、どのような気持ちだったかなど、作り方と背景の部分にまで話が及びました」

 

もうひとつ、映画をご覧になる紀子さまの印象的なエピソードがありました。

 

もらい涙の音無美紀子さんに、紀子さまからそっと差し出されたティッシュ

上映中、本郷さんの事件当時の朗読にさしかかると、紀子さまが涙ぐむ気配があったのだそう。

 

「ハンドバッグからポケットティッシュをお出しになって、涙をぬぐい始めて。すると、隣に座った音無さんもぐずぐずともらい泣きを始めました。ところが、ぼくたち出演者は控室に荷物を置いてきたので、ハンカチが手元にないんです。どうしようと思っていたら、紀子さまがお察しになり、どうぞお使いくださいと、音無さんに静かにティッシュをお渡しになりました」

 

ありがとうございますと受け取った音無さんですが、すぐに舞台挨拶のため登壇しなくてはなりません。このティッシュをどうしよう、と戸惑う音無さんを再び紀子さまがお察しになり、なんと「私が預かります」と手を差し伸べたそうです。

 

「音無さんは帰宅後、そのお話をご主人の村井國夫さんになさったそうです。『主人に、世が世なら不敬罪だぞ!と言われました』と笑っていました」

 

「これこそがグリーフケアなのだな」紀子さまを囲んで流した涙

お尋ねの途中、紀子さまから本郷さんに、こんな質問があったのだそう。

 

「あのようなつらい体験をなさったのちに、グリーフケアを始められ、悩んでいる人、悲しんでいる人の相談を受けるときに、どのようなお気持ちでいらっしゃるのですか?という内容のお尋ねでした」

 

本郷さんは2001年、当時小2の長女・優希さんを大阪教育大学附属池田小学校児童殺傷事件で亡くし、長く深い悲嘆の時間をすごしたのち、そのご経験から自分自身がグリーフケアを行う先駆者になったという経緯を持ちます。

 

「本郷さんは『皇室の皆さまが国民に向けるまなざしや姿勢、佇まい、すべてがグリーフケアそのものです。僭越ながら、そのお姿を参考にさせていただいています』というように答えました。それをお聞きになった紀子さまが、ふっと涙ぐまれたのです。その瞬間、その場にいた全員がそれぞれの心に自らの悲しみを思い浮かべ、何かを共有していることがありありとわかりました」

 

これがグリーフケアの空気なのかと、中村監督は感じたそうです。

 

「グリーフケアは特別なことではなく、人と人が心を向け合い、祈り合い、互いに癒やされることなのだということが伝わる時間でした。祈りとは宗教的な意味合いだけではなく、太陽や宇宙のような何か大きな世界をすべる存在に対して、お願いだからこの目の前の人をなんとかしてほしいと託すこと、またその人の幸福を心から願うこと、そういう側面もあるのだなと感じました」

 

≪OTONA SALONE編集長 井一美穂さんの他の記事をチェック!≫

 

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