能登半島地震の被災者が改めて語る「非常持ち出し袋に本当に入れておくべきだったもの」。意外なものが重要
OTONA SALONE / 2024年2月1日 19時46分
輪島市町野町出身のシナリオライター、藤本透さん。ご実家は輪島市の中でも珠洲市と隣接するエリアにあり、1月1日の能登地震で被災、完全に倒壊しました。藤本さんは発災から28日後、家族との再会を果たし、当日何が起きたのかを被災したご両親と帰省中の妹さんから聞き、その記録をX(旧ツイッター)で発信。その内容が「冷静な筆致だけに緊迫感がすごい」「自分が直下型地震に見舞われて被災する場合にどう備えるか、ケーススタディとして完璧」と反響を呼んでいます。
前編記事ではご許可をいただき、投稿内容を一部加筆・編集のうえで配信しました。つづく後編記事でも藤本さんに「災害への備え」をご紹介いただきます。
次ページ▶まずはじめに、経緯の簡単なご説明から
三週間に及ぶ避難所生活の経験をもとに、「災害への備え」のためのリストを作成
以下は、妹がまとめた三週間の避難所生活の中で、役だったものや困ったこと、その理由をもとに、「災害への備え」のヒントとなるようリスト化したものです。
孤立し、支援物資が充分に届かない中でなにが必要か、なにを備えておくべきか。まずは「最初の3日間」を生き延びるために必要なもののヒントにお役立てください。
避難所生活の長期化、また今回の私の家族のように集落が孤立した場合、最終的にはこれだけのものが必要になりました。自治体の方、災害支援ボランティアの方などにおかれましては、支援物資や備蓄をいまいちど見直していただくきっかけになりますことを願っております。
▶最初に用意すべきアイテムは…言うまでもなくコレ
◆非常用防災袋に入れておくもの
《衛生関係》
○防災トイレ用品、トイレ掃除道具
水洗トイレ車がくるまではダンボールトイレで、精神的にも辛かった。掃除は被災者数名でボランティアでやってくれていた。汚物が見えないよう大きな黒いゴミ袋があるとよかった。
○歯ブラシ&歯磨き粉&マウスウォッシュ
物資が届いたのはかなりあとだった。
○最低1週間分の下着、生理用品やおりものシート、マスク、アルコールウェットティッシュ、消毒液などの衛生用品
○常備薬の他に目薬や鼻スプレー、アレルギー用の薬
ちりやほこりが多い。避難所では、時間の経過と共に風邪をひく人が多かった。
○プラお椀、プラコップ、プラ箸、プラスプーン、食品用ビニール袋、アルミホイル、サランラップ
食器にかけたり、おにぎりの温め直しに◎。割り箸は汁などが染み込むので衛生的には微妙に感じた。
○手袋型のドライシャンプー
指が頭皮まで届くので、スプレータイプよりも洗ってる感覚があり気持ちよかった
○爪切りやはさみ
避難所生活が長くなると必須
《通信関係》
○家族などの連絡先メモ&小銭
公衆電話や買い物に使用。発災時に災害ダイヤルはこちらからは使えなかった。
○モバイルバッテリー
停電&車がなくなったので充電ができなかった。
○腕時計
スマホが電池切れで時間がわからなかった。日付もわかるとなおよい。 LINEや電話は全く使えなかった。SMSは届くことがあった。SMSは、通信回線への負担が少ないこと、送達確認が取れるため有用。
《食事など》
○いつも食べている好きな物(コーヒー、チョコ、おやつなど)
○水がなくても食べられるレトルトのお粥など
《安全・片付け》
○懐中電灯とヘッドライト
ヘッドライトは手が空くので便利。予備の電池も忘れずに。
○油性マジック
持ち物に名前を書く時など、何かと使う。
○防刃手袋
家の中を片づける時に必須だった。あれば安全靴なども。
○ビニール手袋
生ゴミを捨てる時などに便利。
○ゴミ袋
冷蔵庫の物を優先的に処分。冷凍品は冬の場合、慌てて捨てなくてもよかった。
▶続いて、とっさに持ち出せなくても「準備しておくべき」もの
《備え》
○スニーカー、長靴等の履物、サンダル
玄関が潰れて靴が出せなかった。サンダルは避難所内の移動に便利。
○タンパク質、果物、調理無しで食べられる野菜
震災直後の物資はおにぎりなど炭水化物ばかりなので常温で食べられる肉や魚、ゆで卵や新鮮な野菜や果物が食べたくなったが、水がなく難しかった。味噌汁、コーンスープは飲むとホッとした。
○ガスコンロ&ボンベ
自宅避難や車中泊、避難所に入れない場合の煮炊に使えた。
《その他》
○イヤホン(音楽は心の安定と騒音対策になった)
避難所では夜中でも誰かが起きていたり、いびきが気になった。
《注意》
紛失や盗難防止のため、全ての持ち物に名前を書いておくこと。
次ページ▶被災してみてわかった、絶対的に「足りないもの」
◆備蓄・備え
○大量のペットボトルの水、給水バックやポリタンク
水がなく、本当に困った。道路が寸断され、給水車はすぐにはこられなかった。
○毛布や布団
非常用毛布は学校や公民館にあったが、数が全然足りなかった。
○灯油ストーブと灯油
電気が無くても暖をとれたが、避難所でも限りがあったので節約しながら使った。
○ポット(魔法瓶)
沸かしたお湯をキープできてめちゃくちゃ役にたった。
○やかん
灯油ストーブの上にのせてお湯を沸かして、めちゃくちゃ役にたった。
次ページ▶こういうことに「困る」ことを予期しておいて
◆避難生活で良かったこと・困ったこと
《食事編》
○りんごやみかんなど日持ちする新鮮な物が美味しかった。
○いつも食べている好きな物(コーヒー、チョコ、おやつなど)は、いつもの味でとても美味しかった。
○アルファ米やパックご飯は避難所炊き出し提供の場合、大量のお湯と手間がかかり、面倒だった。量も多く食べ切れない人もいた。高齢者が多かったので、レトルトおかゆなどがあればよかった。
○カップ麺&カップ焼きそばは、避難所炊き出し提供の場合、大量のお湯が必要&かやく、スープをいれるのが手間、すぐにのびてしまう。特に高齢者には量が多く食べ残しが多い、残り汁の処理にも困った。処理用にザルとバケツを用意しなければならなかった。
《生活編》
○着替え時、睡眠時等、プライバシーがほしかった。パーテーションやテントは、物資として届かなかった。
○水がなく、本当に困った。道路が寸断され、給水車はすぐにはこられなかった。大量のペットボトルの水、給水バックやポリタンクが備蓄に必要だった。
○非常用毛布は学校や公民館にあったが、数が全然足りなかった。毛布以外にも布団や寝袋、床用の断熱シートなどが必要だった。
○灯油ストーブと灯油は、避難所でも限りがあったので安定供給されるまでは非常に寒かった。
○停電が長く、日が暮れると真っ暗だった。災害用ランタンなどの明かりが必要だったが、備えがなかった。
藤本さんご家族の被災体験は前編記事をご覧ください。>>>「家族が体験した能登半島地震を書き残そうと思いました」シナリオライターに聞く「そのとき」のこと
≪OTONA SALONE編集長 井一美穂さんの他の記事をチェック!≫
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